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御蔵島での陸揚用トンネルが貫通しました!

 こんにちは皆さん!島しょ通信担当です。
 今回は、御蔵島で実施中の海底光ファイバーケーブル(以下、「海底光ケーブル」という。)の強靭化対策工事についてお伝えします。この工事については、令和6年6月19日のnoteで、陸揚用トンネル管路建設工事に着手したことをお伝えいたしました。
 そのトンネル工事ですが、10月末日、様々な困難を乗り越えて、ついに貫通することができました!!!( 表紙写真は、貫通直後の掘削機の先端部になります。このパイプが陸上まで約650mにわたって続いています。)
 今回は、このトンネル貫通までの取組についてお伝えいたします。

令和6年6月19日のnoteは以下のバナーから!

事業概要は以下のバナーから!




⛵ トンネル掘削で生じた困難

 6月上旬に開始したトンネル掘削工事ですが、工事を進めていく中でいくつかの困難が発生しました。そのうち、代表的なものをお伝えいたします。
① 掘削進捗の低下
② 掘削機の故障

その1 掘削進捗の低下(ドリルビット交換)

 今回の掘削で用いたHDD工法は、先端となるドリルビット等の掘削機(図1)の後ろに、1本約10mのドリルパイプをつぎ足しながら掘り進み、最終的に、このドリルパイプを地中に残すことでトンネルを形成する工法となります。
 計画延長約710mのトンネル掘削は、6月上旬に掘削を開始したあと、一日当たり約30~40m(ドリルパイプ3~4本)の速さで順調に掘り進み、1か月後の7月上旬には400mを超える位置に到達しました。ところが、420mを過ぎた辺りから、掘削に時間がかかるようになり、最終的には一日当たり10m程度という状況となりました。
 掘削が進まない理由として考えられる一番の原因は、地質の影響によるものとなります。この頃に掘削していた玄武岩の層は、計画段階から硬質であると想定していましたが、実際には想定を上回る硬さであるとの判断に至りました。
 掘り進めるには、掘削機の先端にあるドリルビット(写真1)をより硬質なビットに交換することで対応が可能となりますが、トンネルの先端部であるため、これまでに挿入した約450mのドリルパイプを全て引き抜くことが必要となりました。この作業では、4日間かけて引き抜きを行い、ドリルビットを交換したうえで掘削を再開し、元に位置まで6日間(一日当たりの平均掘削延長約80m)をかけて到達することができ、先へ掘り進むことができるようになりました。

図1 掘削機


写真1 ドリルビット


その2 掘削機の故障

 HDD工法は、アメリカにおいて石油掘削における技術を応用して開発された工法であり、本工事で使用された掘削機はアメリカ製のものとなります。操作オペレーターは、熟練の技術や経験等が必要になるため、メーカー専属の作業員が機械とともに世界各地に配置されます。
 前述のビット交換作業が完了し、トンネル掘削を再開したところ、今度は掘削機本体(写真2)にエラーが発生しました。機器の点検をしたところ、電気系統の基盤が故障したことが判明したため、急ぎ、メーカーに修理対応を求めました。ところが、修理担当者によれば、「部品の交換が必要となるが、交換部品は日本国内にないため、アメリカから取り寄せる必要がある。」とのことで、このままではトンネル掘削の工程が大幅に遅れる見込みとなりました。
 そこで、国内でこの工法を実施している工事現場を調査したころ、幸いにも沖縄県の離島で実施していることが判明し、協議の結果、なんとか部品を譲って頂けることとなりました。部品交換後は、ソフトウエアの書き換えをアメリカから遠隔で行い事なきを得ました。

写真2 掘削機


⛵ トンネルの完成

 御蔵島の陸揚げ部(海底光ケーブルが海底から陸上にあがる部分)は、外洋に面しており、波浪の影響を直接受けやすいとともに、水深が浅いところには無数の大きな石があることから、海底光ケーブルが損傷しやすい状況にありました。
 この課題を解決するため、陸揚げ地から水深が深く損傷リスクが少ないところまで海底下にトンネルを掘り、その中にケーブルを通すことで、通信の強靭化を図るための工事を実施しました。
 今回、数々の困難を乗り越えて完成したトンネルには、海況が落ち着く来年春頃からケーブルの引き込み工事を行う予定です。

写真3 貫通した海底部 (掘削機を取り外しドリルパイプに蓋をした状態)


⛵ おわりに

 今回の陸揚用トンネルの施工に当たっては、関係者の皆様の多大な御協力をいただき、無事に終えることができました。このあとは、陸上部の管路の整備、海底光ケーブルのトンネル管路内への移設、古いケーブルの撤去等の作業を進めて参ります。引き続き、安全第一に工事を進めて参りますので、皆様のご理解ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 今回は、御蔵島の海底光ケーブル強靭化工事のなかでも、最も困難であった陸揚用トンネル管路を紹介させていただきました。引き続き、島しょの高速ブロードバンドサービスを支える海底光ケーブルの更なる安定化に向けて取り組んで参ります。
 
 ここで紹介した島しょ地域の情報通信基盤整備及び保守、運用管理に関する情報は、デジタルサービス局ホームページでも公開をしていますので、ぜひご覧ください。