闘う者の目

文章を書く事がめっきり減ったので
推しやそのファンの皆様を見習ってたまには書いてみようと思う

アレはまだ僕が20歳くらいの頃だった。
当時は大学生。仲良くしてくれている後輩が僕にもいた。
いつものように無為な時間を過ごしていると、後輩が口を開いた。
「自分、遊戯王カード欲しいんすけど。買いに行きませんか?」
念のため、遊戯王カードを知らない人に説明すると。
所謂、TCG(トレーディングカードゲーム)である。
様々なカードの種類があって、カードにはイラストとステータスや特殊な効果などが記してあり。それを駆使して対人で闘う戦略的ゲームだ。

僕はTCG系統は、小学生の頃から現在に至るまであまり詳しくない。なぜならシンプルにアホだから戦略が練られないのだ。そんな僕は、カードゲームにおいて何の頼りにもならない存在である。
つまり、後輩の言葉をザックリ要約すると
「カードゲーム買いに行きたいから車出してください」である。
最初はめんどくさかったので「やだ」「行かない」「うんち」など幼稚園児ばりの語彙力で断っていたが、どうせ暇なので行くことにした。

店に着くと、普通のカードパック(数枚のカードがランダムに入っているもの)から希少性の高いカードが単品で売ってあるもの等、多種多様なカードが並んでいた。
もちろん後輩はある程度お目手当のカードがあって、それを探していた。
カードゲームを知らない方は驚くかもしれないが、レアカードや需要の高いカードは、かなり高額な物も多い。
後輩の欲しいカードはなかなかのお値段であった。
しかし、そこはやはり大学生。出費には繊細になる懐事情でもある。
すると店員さんが話しかけてきた。
いつまでも悩んでいる僕達に見兼ねての事だと思った。

思ったのだったが、違った。

「デュエリストですか?」

なんだそれは。そんな言葉を現実に言うやつがあるか。
返答に困っていると、店員さんは続けた。
向こう側にある対戦用テーブルを指しながら(カードショップには実際に対戦するためのテーブルがあったりする)

「あの方がデュエルしませんかと誘ってらっしゃいます」

なんやねんそれ。
フィクションでよく見る、カウンターのBARで「あちらのお客様からです」言うてお酒出してくれるヤツ。アレみたいなノリ。
ほんでデュエリスト。
お前も自分で誘えや。知らんけどそれがここのルールなんか?
ますます困惑する僕達。

恐る恐るテーブルの方に目をやると、
「や り ま す か?」
のリズムでカードをシャッフルしながら、ニヒルな笑顔を見せる1人の男性。しかし、鋭い眼光を忍ばせたデュエリストが、そこには確かに居た。
呆気に取られる我々。
デュエリストが醸しだすオーラに圧倒され、何も言えない僕ら。
後輩が沈黙を破った
「せっかくなんですけど…今日デッキ持ってないんです…」
こうしてデュエリストとの邂逅を果たした僕たちは、別次元の世界を垣間見て
「俺たちはまだまだだな…」
と反省しながら帰路についたのだった。

かしこいごりら

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