ストックホルムのFinTech事情
ストックホルムは世界のFinTech拠点
意外かも(でないかも)しれませんが、ストックホルムは世界的なFinTech拠点の一つです。北欧スウェーデンの首都ストックホルムのイメージといえば、北欧デザイン、北欧家具、ノーベル賞などが真っ先に出てきて、ストックホルム症候群なども思い浮かぶかもしれません。でも、金融はなかなか想起されないのではないかと思います。
なぜストックホルム?
2017年から2019年にかけてのストックホルムFinTechへの投資額は、EU圏内でロンドン・ベルリンに次いで3番目でした。なぜストックホルムはFinTech最先端の都市となったのでしょうか?理由は、経済・社会制度や文化面など色々考えられるので、それらにもおいおい触れていきたいと思いますが、今回はFinTechと直接的に関係が強い、キャッシュレス社会化がいかに進んでいるかを見てみましょう。
まず、個人的にはこちらにきて9ヶ月、(良くも悪くも)ただの一度もキャッシュを使っていません。スウェーデン国立銀行の調査によれば、商業取引のうち現金取引は全体の1%に過ぎず、商店の5軒に1軒以上が支払手段として現金受入れをやめたそうです。国民の40%は1ヶ月以内に現金を使ったことがありません。その代わり、電子決済は年々増加し、2019年の統計で、対象ユーザーの7割がSwishを持っており、年間平均40回Swish決済を利用してます。スウェーデンは近い将来キャッシュの廃止を見込んでおり、電子通貨の発行を計画しています。キャッシュレスの基盤ができていることは、FinTech企業を呼び寄せることにもつながります。欧州のFinTech企業や優秀な技術者がストックホルムに移ってくることも少なくありません。スウェーデン金融監督庁(Finansinspektionen)によれば、国内で金融サービス提供の許可を得ている企業は約2000社、スウェーデンのFinTech企業381社、うち80%はストックホルムにあります。
FinTech企業の数々
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