上條淳士の " TO-Y BOX "
TO-Y BOX
ただ、好きというだけでなく、少なからず影響を受けたマンガ家さんを"note"していきます。
今回は、高校の頃、夢中になっていた上條淳士さん。好きだったんですよね~、ほんと。
上條淳士さんの描く細い線の画が、お洒落でカッコよかったんですよね。
代表作は、なんといっても『TO-Y』ですね。
主人公のトーイが、自分の音楽を求めて、短くも熱く芸能界を駆け上がっていく様子を描いたマンガです。
当時、音楽バンドとかを描いた作品って珍しかったんですよね。
パンクなんかのインディーズシーンから、芸能界でのメジャーシーン、歌番組やプロダクションの裏側など、決して一筋縄でいかない世界の中でも、自分らしさを貫くトーイに憧れましたね~。
そもそも、上條淳士さんはコメディマンガの方も得意だったので、ギャグも随所に散りばめられてたりして、カッコよさと面白さを兼ね備えた作品だったと思います。
トーイを囲む脇役の方々も個性的で、当時の音楽シーンや芸能界での実在の人物をモデルにした人もいたんですよね。
アイドルとアーティストが同居している頃の吉川晃司さんや、サンプラザ中野くん、シーナ&ロケッツの鮎川誠さんなんかは、もうほとんどそのままでした。
『TO-Y』では、当然、ライブシーンも多く描かれてたんですが、そのシーンが独特でカッコよかったのです。
歌ってる場面に、効果音や吹き出しがないんです!
上條淳士さん独自の描き方なんですが、無音のようでいて、なんだか歌が聴こえてくるような気がしませんか?
あえて歌を描かないところに、上條さんの歌のシーンへのこだわりが見えますよね。
ライブシーンは、ほんとにカッコ良かったです!
連載の早い段階から、トーイをつけ狙う人物が、カミュの「幸福な死」を読んでたり、天才型ミュージシャンたちの早逝をイメージさせていたので、読者間では、トーイは最後死んじゃうんじゃないか?と噂されたりしてたのですが、さて、結末はどうだったのか?(後は単行本でお楽しみください!)
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作者の上條淳士さんは、『TO-Y』の連載が終わった後、少年誌ではなくて「ROCKIN'ON JAPAN」や「ホットドック PRESS」とかに作品が掲載されたりしてたんですよね。
だから、普通のマンガ家さんとは違うというか、サブカルチャー系統の、独特なポジションに居たような気がします。
その後は、青年誌にフィールドを移して、『SEX』や『赤×黒』、『8』などを発表しています。
画がますます洗練されて、凝ったものになり、ストーリーも抗争や格闘が描かれたシリアス中心のものになりました。
ただ、途中に連載休止をはさんだりして、掲載のスピードが遅かったんですよね、忘れた頃に再開みたいな感じで、自分自身、あんまり連載を楽しめなかったりしました。
そう考えると、コメディの部分も含めて、当時の上條先生の好きなものを詰め込んだ感のある『TO-Y』は、やっぱりバランスのとれた貴重な作品だったと思うのです。
『TO-Y』の中で、主人公トーイのことを”時代の寵児”と評する場面があるのですが、ある意味、上條淳士先生にも同じことが言えたのかもしれませんね。
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