洋楽コンピの名盤:『波の数だけ抱きしめて』 のサウンドトラック
Kiwi FM ORIGINAL SOUNDTRACK
CD時代にリリースされた洋楽コンピレーション盤って、いろんな事情から、サブスクの配信サービスでは流れてこないものが多いのです。
そんなコンピ盤について、個人的名盤を記事にしていこうと思うのですが、今回は映画『波の数だけ抱きしめて』のサントラ盤についてです。
『波の数だけ抱きしめて』は、ホイチョイ・プロダクションのトレンディー映画、『私をスキーに連れてって』『彼女が水着にきがえたら』に続く第3作目として制作された1991年の映画です。
時は1982年、湘南を舞台に、ミニFM局の設立をめざす若者たちのひと夏の夢と恋を描いた青春映画なんです。
ホイチョイ三部作の中では、個人的に一番好きな作品です。
その理由は、主役の中山美穂さんの魅力もさることながら、ユーミンの曲とともに、ミニFM局から流される当時のヒット曲の数々、このAORナンバーが、とっても魅力的だったからなんですよね~。
劇中のFM局「Kiwi FM」で使われたこれらの楽曲をまとめて、サントラ盤がリリースされてるんですが、これがサントラというよりも、なかなかの洋楽コンピ盤に仕上がっていたのです。
いろんな曲の許諾が関わるんで、映画の方は、2010年にようやくDVD化されるんですが、その際、サントラ盤の方も未収録曲を加えてコンプリート盤として再リリースされています。
自分が所有してるのが、そのコンプリート盤なんですが、今回は、その内容について "note" していきたいと思います。
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『波の数だけ抱きしめて』 Kiwi FM ORIGINAL SOUNDTRACK (コンプリート版)
コンプリート版については、1991年版では未収録だった、ジョン・オバニオンの「僕のラヴ・ソング 」、カラパナの「ワイキキの熱い砂 」と「虹を追う男」が追加され、最初と最後に、Kiwi FM のジングルが流れるDJ風味が付加されています。
また、曲順も変更されて、以下の順になっています。
既に廃盤となっているようですが、#1 と #15 のジングル以外の収録曲は、すべて配信されているので、曲順を合わせて ”プレイリスト” を作成してみましたので、原題の方はこちらで確認してもらえればと思います。
AORの名曲たちと言っても、パッと聴いて、誰の曲かはなかなか分からないんですよね。
自分なんか、1991年の映画公開当時、流れてた曲ですぐに分かったアーティストは TOTO ぐらいでした。
もちろん、聴いたことのある曲はいくつかあるのですが、歌ってるアーティストさんについては、このサントラ盤を通じて知っていくわけなのです。
そんな風に知っていったアーティストの方々を紹介していきます。
■ バーティ・ヒギンズ ■
バーティ・ヒギンズは、フロリダ出身のシンガー・ソングライターで、『波の数~』のサントラ盤では、2曲が使用されています。
「キー・ラーゴ」
ちょっとマフィアっぽい風貌ですが、いい声してますよね~。
「キー・ラーゴ」はヒギンズの代表曲でもあるんですが、日本では、「カサブランカ」の方が圧倒的に有名だったりします。
「カサブランカ」
映画で流れた時も、おお~、ひろみGO!みたいに思いましたが、これ、郷ひろみさんの「哀愁のカサブランカ」の原曲なんですよね。
その原曲を歌ってるのが、このバーティ・ヒギンズということを、このサントラ盤で知ったのです。
■ ネッド・ドヒニー ■
ネッド・ドヒニーは、アメリカのカリフォルニア出身のシンガー・ソングライターで、『波の数~』のサントラ盤では「愛を求めて(Each Time You Pray)」が使用されています。
爽やかですよね~、木陰で聴きたくなるような感じです。
ドヒニーの代表曲としては「恋は幻(Get It Up For Love)」って曲があるんですが、映画ではあえてこちらをチョイスしてるとこがいいですよね。
ネッド・ドヒニーが気になった方は、AOR を調べていくと、必ず名盤としてあげられるアルバム『ハード・キャンディ』(1976)がお薦めです。(「恋は幻」と「愛を求めて」も収録されています。)
■ ジョン・オバニオン ■
ジョン・オバニオンというと、自分と同じ世代なら、薬師丸ひろ子さん主演の「里見八犬伝」のテーマの人だと思い出すのではないでしょうか。
『波の数~』のサントラ盤では、デビューシングル「僕のラヴ・ソング(Love You Like I Never Loved Before)」が使用されています。
「僕のラヴ・ソング」
オバニオンもメロウでいい声してます。
今回紹介してる人の中では数少ない80年代デビュー組なのですが、俳優業にシフトしていったので、曲は多くはありません。
多分、もうひとつの代表曲「君だけのバラード(I Don't Want To Lose Your Love)」も聞き覚えがあるんじゃないかと思うので紹介しておきます。
「君だけのバラード」
■ ラリー・リー ■
ラリー・リーは、そもそもカントリーロックの方みたいなんですが、唯一ソロで発表した作品がAORの名盤になってるシンガーです。
『波の数~』のサントラ盤では、「ロンリー・フリーウェイ(Don't Talk)」が使用されています。
その唯一のアルバムが『Marooned』(邦題は『ロンリー・フリーウェイ』)ってアルバムだったのですが、これもまた、名盤なんですよね~。
ほんと聴き心地抜群でお薦めなのです。
このアルバム、日本盤でのジャケットは、鈴木英仁さんのイラストだったんですよね。
今回、配信サービスで探してみると、アルバムタイトルもジャケットデザインも違うので、探すときはご注意ください!
■ J.D.サウザー ■
ジョン・デヴィッド・サウザーは、デトロイト出身のシンガーソングライターですが、グレン・フライやジャクソン・ブラウンと親交があって、70年代、ウェストコースト・ロックのムーブメントの中で活躍した人です。
『波の数~』のサントラ盤では、代表曲「ユア・オンリー・ロンリー」とジェームズ・テイラーとのコラボ曲「憶い出の町(Her Town Too)」が使われています。
”サウザー”と聞くと、なんか帝王の血を感じてしまう世代なんですが、J.D.サウザーは、どちらかと言うとソングライティングなど、裏方的な役割を好む人みたいで、あまり自身のヒット曲とかはないんですよね。
ただ、イーグルスを始めとして、あの時代のウェストコースト・ロックのアルバムにはよくクレジットされてる人なのです。
その時代の風を感じたい方は、代表曲と同じタイトルを冠したアルバム『ユア・オンリー・ロンリー』から始めるのが良いと思います。
■ ジョージ・デューク ■
ジョージ・デュークは、カリフォルニア出身のミュージシャンで、『波の数~』のサントラ盤では「シャイン・オン」が使用されています。
このラインナップの中では、少し異色なディスコ・ファンクチューンなんです。
ただ、あの時代を映した選曲ってことで、サントラ盤を聴いてても違和感はないです。
80年代前半にディスコへ行ってた方なら、多分、体で憶えてる曲じゃないですかね。
■ TOTO ■
そして、サントラ盤の最後に収録されているのは TOTO の「ロザーナ」です。
そのうち TOTO については別の記事にしていきたいので、紹介は軽めなんですが、最後を飾るに相応しいですよね。
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サントラ盤の中に登場する11アーティストのうち、7アーティストを紹介したのですが、これだけでも、『波の数だけ抱きしめて』 のサウンドトラックが、いかに名盤だったかが伝わると思うんですよね。
自分みたいに、80年代の音楽シーンから遡って70年代の音楽を聴いた人間にとって、扉みたいなサントラ盤なんですよね。
残念ながら、2010年のコンプリート版も廃盤になってるみたいですが、”プレイリスト” とともに、暑い夏のお伴にしていただければと思います。
(洋楽コンピ盤紹介 note )
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