実在の人物が登場する歌
(かなり渋めのラインナップですがご了承ください!)
松任谷由実さんが1981年にリリースしたアルバム『昨晩お会いしましょう』の8曲目に、「グレイス・スリックの肖像」という曲が収録されています。
タイトルに登場する グレイス・スリック はアメリカのシンガーで、ソロはもちろん、'65年に結成されたサイケデリック・ロックの雄:ジェファーソン・エアプレインに '67年から参加し、以降、→ジェファーソン・スターシップ → スターシップとバンドが変遷する中でも、ヴォーカルの一人して活躍した人です。
このグレイス・スリックが、松任谷由実さんの歌の中で、どのように描かれているのかというと、冒頭部分に写真で登場します。
部屋の片隅に忘れられていたグレイスの写真をきっかけに、昔の自分を追想するような歌なんですよね。
そうすると、ここで描かれているグレイスは、きっと、この歌が発表された '81年よりずっと前のグレイス・スリックなんでしょうね。
おそらくユーミンが10代の頃、'70年前後のジェファーソン・エアプレーン時代なのかなって思います。
きっと、10代のユーミンは、こんな曲を聴いてたんですよね。
「あなただけを "Somebody to Love"」1967
ジェファーソン・エアプレーン
実在の人物が登場する歌には、作者にとってのストーリーが込められてる感じがして、想像すると、とっても楽しいんです。
今回は、そんな実在の人物が登場する歌について "note" していきたいと思います。
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■ タイトルに実在のシンガーが登場する歌 ■
まずは、「グレイス・スリックの肖像」と同様に、タイトルに実在のシンガーが登場する歌から紹介していきます。
タイトルに使われるぐらいですから、歌のテーマ自体にも深く関わってるんです。
歌の中の登場人物が、そのシンガーのどんな曲を聴いていたのかを想像しながら紹介していきます。
「オリビアを聴きながら」1978.11
歌:杏里
作詞・曲:尾崎亜美/編曲:瀬尾一三
実在のシンガーがタイトルに付けられてるといえば、やっぱ一番に思い浮かぶのは杏里さんのデビュー曲でもある「オリビアを聴きながら」ですね~
これは外せないです!
作者はシンガーソングライターの尾崎亜美さんです。
タイトルに出てくるオリビアとは、そのクリスタル・ボイスで70年代から80年代にかけて活躍したオリビア・ニュートン=ジョンですよね。
自分が洋楽を聴き始めた80年代では「ザナドゥ」や「フィジカル」のイメージが強いんですが、70年代にも、映画『耳をすませば』に使われた「カントリー・ロード」や、「愛の告白」、「そよ風の誘惑」、「愛のデュエット」など、数々のヒット曲があるのです。
さて、尾崎亜美さんが描く「オリビアを聴きながら」では、冒頭の歌詞で、傷心の女性がお気に入りのオリビアの曲を聴くことから始まります。
では、この女性はどの曲を聴いてるんでしょうね…
と、実はこの問いは難しくなくて、後の歌詞に出てくる "Making A Good Thing Better" という英詞部分、これ、そのままオリビア・ニュートン=ジョンが '77年にリリースしたアルバム及び表題曲のタイトルなんです。
「きらめく光のように "Making A Good Thing Better"」1977
歌詞で出てくるのは "お気に入りの曲" なんで、表題曲のみを指しているんでしょうが、このアルバムは他にも「Sad Songs」や 「You Won't See Me Cry」、「So Easy To Begin」、「I Think I'll Say Goodbye」、「If Love Is Real」等々、失恋の曲なんだけど、優しさを感じさせる歌ばかりなんです。
多分、歌詞の彼女は、このアルバムをプレーヤーにかけてるんだと思うんですよね。
けっしてオリヴィア最高のアルバムではないかもしれませんが、優しい歌声が溢れているので、今は亡きオリヴィアを偲びながら聴いていただければと思います。
「ミック・ジャガーに微笑みを」1986.12
歌:中森明菜
作詞・曲:竹内まりや/編曲:椎名和夫
「ミック・ジャガーに微笑みを」は、明菜さんが '86年にリリースしたアルバム『CRIMSON』に収録されたー曲です。
このアルバムに収録された「駅」や「OH NO, OH YES!」と同じく、竹内まりやさんが提供した曲です。
登場するのは、ミック・ジャガー、言わずと知れたローリング・ストーンズのヴォーカルです!
歌詞のシチュエーションとしては、彼のバイクにタンデムしながら、ストーンズの昔のナンバーを聴いているのです。
真夜中を走り抜けていく時は、やっぱストーンズが似合いますね。
ちなみに、その古いストーンズの曲は、後半の歌詞の中に出てきます。
「Time Is on My Side」1964
あんま知らない曲なんですが、初期のナンバーなんですよね。
何となく、「ミック・ジャガーに微笑みを」のシチュエーション的には、「サティスファクション」や「夜をぶっとばせ」あたりのイメージなんですが、竹内まりやさんがチョイスしたのはこの曲なのです。
「星空のビリー・ホリデイ」
歌:サザンオールスターズ
作詞:桑田佳祐/作曲:桑田佳祐・八木正生
編曲:サザンオールスターズ&八木正生
「星空のビリー・ホリデイ」は、サザンオールスターズの活動休止前、'85年にリリースした2枚組の大作『KAMAKURA』に収録されている名曲です。
タイトルに登場するビリー・ホリデイは "レディ・デイ" の呼称で知られる偉大なジャズシンガーです。
トップシンガーに昇りつめながら、薬物やアルコール依存症などと闘い、壮絶な人生を送ったビリー・ホリデイ…
「星空のビリー・ホリデイ」は、桑田佳祐さんがビリー・ホリデイに捧げるラブレターみたいな曲なんですよね。
この曲はビリー・ホリディに捧げられていて、特定の曲が出てくるわけではないですが、この曲は外せない曲だと思います。
「Strange Fruit (奇妙な果実)」
■ タイトルに実在の俳優が登場する歌 ■
さて、次はシンガーではなく、映画俳優の名前がタイトルに付けられた歌を紹介していきます。
もちろん、映画俳優さんたちなんで、背景にある映画を想像してもらえればと思います。
「ジェームス・ディーンのように」1981.11
歌:Johnny
作詞・曲:Johnny/編曲:横浜銀蝿
私が中学生時代に大人気だった横浜銀蝿、その中でも特に人気だったギタリストJohnnyのソロシングルです。
なんか懐かし過ぎですね😆
いわゆる不良系(その時代は”ツッパリ”)のお兄さん方が聴いてたイメージですが、テーマとなってるのはジェームス・ディーン…
ジェームス・ディーンって、普通の映画スターとはまた違ったスターだったと思うんですよね。
デビューして半年後に自動車事故でこの世を去っていった伝説的な映画スターなのです。
特に日本で主演作等が公開されたのは死後ということもあって、より悲劇的なストーリーを伴って伝説化されていった気がします。
その伝説の中心的作品が1955年の『理由なき反抗』でした。
『理由なき反抗』1955
作中でディーンが身に着けている”赤のブルゾン”…
何となく不良系のお兄さんたちが、学ランの中に赤を着ていたのは、ここら辺が起源のような気がしますね。
この映画も青春映画の傑作ですが、「理由なき反抗」というタイトル自体がイメージを作っていった感じもします。
このタイトルでなければ、そこまで伝説にならなかったのではないでしょうか…
ジェームス・ディーンはその時代の曲に時々登場してた記憶があります。
甲斐バンドの「HERO」なんかの歌詞にも出てましたよね。
「HERO ヒーローになる時、それは今」1978.12
歌:甲斐バンド
作詞・曲・編曲:甲斐よしひろ
「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」1976.6
歌:大塚博堂
作詞:藤公之介/作曲:大塚博堂/編曲:惣領泰則
渋い選曲が続きます!w
大塚博堂さんは一度デビューするもヒットにはつながらず、32歳でこの「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」で再デビューした遅咲きのシンガーなんですが、37歳で急逝しちゃうんです。
実は、うちの県の別府市の出身シンガーという事もあって、今回の記事テーマでは、真っ先に思い出した歌のひとつです。
タイトル、なんかすごくないですか?
歌詞の中ではダスティン・ホフマンの主演映画「ジョンとメリー」と「卒業」が登場します。
昔の彼女のことを思い出す歌なんですが、出会いは「ジョンとメリー」みたいだったけど、結婚していく彼女を「卒業」みたいには奪えなかったって歌なんです。
ダスティン・ホフマンにはなれなかったって、そういうことなんです。
映画を観てる事ありきの歌なんですが、それぐらい、みんな知ってる映画だったんですよね。
『ジョンとメリー』1969
『卒業』1967
「アル・パシーノ+アラン・ドロン<あなた」1977.10
歌:榊原郁恵
作詞・曲:森雪之丞/編曲:小六禮次郎
このパートの最後に紹介するのは、榊原郁恵さんのアイドル時代の4枚目のシングルです。
アル・パシーノやアラン・ドロンよりもあなたが好き!って歌なんですが、当時、小学生だった自分としては、アラン・ドロンって名前はすでに二枚目を表す言葉ってのは知ってたんですが、アル・パシーノってのもかなりの二枚目なんだろうな~って刷り込まれちゃったのです。
その後、「ゴッドファーザー」や「スケアクロウ」、「狼たちの午後」を観ていくことになるんですが、「スカーフェイス」になると、郁恵さんが歌ってた頃のイメージはどこいった? みたいになっちゃうんですけどね。
「狼たちの午後」1975
「太陽がいっぱい」1960
■ 歌詞に実在のシンガーが登場する歌 ■
さて、最後はタイトルにまではなってないけど、歌詞に実在のシンガーが登場する曲を紹介しようと思います。
5曲紹介するのですが、クイズ形式とさせてもらいます。
前後の歌詞を記載しておきますので、それぞれの歌に登場するシンガーを思い出してみてください!
「学生街の喫茶店」1972.6
歌:GARO(ガロ)
作詞: 山上路夫/作曲: すぎやまこういち/編曲:大野克夫
「あの頃のまま」1979.7
歌:ブレッド&バター
作詞・曲:呉田軽穂/編曲:細野晴臣・松任谷正隆
※作者のユーミンは、ブレバタの二人をイメージして作詞してると思います。
「私はピアノ」1980.7
歌:高田みづえ
作詞・作曲: 桑田佳祐/編曲:松井忠重
※この歌には二人の実名が登場しますが、1人はシンガーでなくギタリストなので注意願います。
「プレゼント」1990.2
歌:JITTERIN'JINN
作詞・作曲・編曲:破矢ジンタ
※様々な実名が登場する歌なんですが、2番の歌詞の上記の箇所に1人だけシンガーが出てきます。
「ここでキスして。」1999.1
歌:椎名林檎
作詞・曲:椎名林檎/編曲:亀田誠治
※ある意味、当時の椎名林檎さんぽいチョイスで歌詞の流れの中でも想像できます。
+ + + + + +
実在の人物が登場する歌って、けっこうあると思ったんですが、意外と最近の歌には少ないと感じました。
権利の関係なんですかね… そのため、昭和が中心のかなり渋い選曲になっています。(まあ、いつも通りといえばその通り😆)
本来、シンガーパートだけの方がスッキリすると思ったのですが、どうしても「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」を入れたいがため、俳優パートを無理に挿入してます。(すみません!w)
※実在の人物が登場する歌には、他にも「行け!行け!川口浩」や「みのもんたの逆襲」、「YAZAWA」、「元祖高木ブー伝説」などもありますが、コメディ系のものは外してますのでご了承ください!
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