グランド”イカ天”キングの振り返り...(平成名物TV)
深夜TV番組『平成名物TV』の第1部として放送された、三宅裕司さん司会の2つの番組『いかすバンド天国』と『えびぞり巨匠天国』
放送期間は”イカ天”が2年、”エビ天”が9ヶ月なんで、ほんと短命といえば短命だったのですが、次々と出てくるアマチュアの方々の、あの頃(平成初期)の熱量みたいなものが記録されてる番組だと思うのです。
そんな番組を振り返ってみようとおもうのですが、今回は”イカ天”について”note”していきます。
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『いかすバンド天国』は、毎回10組のアマチュア・バンドが競い合って、イカ天キング(チャンピオンバンド)への挑戦権を得て、最後にキングと対決するって構成でした。
5週連続でイカ天キングの座についたバンドは、”グランドイカ天キング”となり、(途中から)メジャーデビューできるという仕組みになっていきました。
2年という短い期間でしたが、7組のバンドが ”グランドイカ天キング” に選ばれたので、その7組を紹介していきます。
◇◆ 初代グランドイカ天キング ◆◇
FLYING KIDS
自分が見始めたのは、実は「FLYING KIDS」がグランドキングになった後からなんです。
が、その時点で「FLYING KIDS」はけっこう伝説になってたように思います。
ボーカルの浜崎さんが、いつも不機嫌そうに歌っていたのが印象的で、メジャーデビュー後も追いかけていたバンドです。
1998年に解散しますが、2007年に再結成し、現在も活動中です。
ビッグヒットはなかったものの、「風の吹き抜ける場所へ」や「とまどいの時をこえて」、「ディスカバリー」等々、けっこうヒット曲はあって、初代グランドイカ天キングとして活躍してました。
個人的にはデビューシングルの『幸せであるように』がインパクト大なのですが、ちょっとポップス寄りになっていってからの曲も好きでした。
まあ、あと1曲をあげるならば、シングルにはならなかったけどダークなファンクチューンの『セクシーフレンド・シックスティーナイン』って曲が好きだったかも.. です。
そして、「FLYING KIDS」といえば「KUSU KUSU」も思い出してしまいます。私は直で見てないのですが、グランドキングをかけた対決の相手が「KUSU KUSU」で、自分が見ていた頃は、この「KUSU KUSU」の方が人気があって、視聴者からの人気投票ナンバーワンだったりしてました。
名前通り、南国チックなバンドで、メジャーデビューもしてたんですが、いつも不機嫌そうに歌う浜崎さんとは対照的な感じでした。
自分は断然「FLYING KIDS」派だったのですが、なんとなくセットで思い出しちゃうのです。
◇◆ 2代目グランドイカ天キング ◆◇
BEGIN
けっこう騒がしかったり、コミカルなバンドも多かった『いかすバンド天国』の中で、ブルージーな「BEGIN」の登場は、とても異色な感じだったんですよね。
初登場で演奏したのが『恋しくて』だったのですが、TVの前で、つい黙り込んで聴き入ってしまったのを憶えています。
一度、聴いただけで、素人の私でも名曲に思えたのは、多分、ボーカルの比嘉さんの声なんでしょうね。
審査員の一人だった伊藤銀次さんが、背筋に痺れが走ったって言うぐらい印象的な歌声だったのです。
今でも変わらぬスタンスで活動を続けている「BEGIN」はステキですよね。
聴いてる自分の方も年齢を重ねて、なんか「BEGIN」の歌を味わえるようになった気がするのですが、それも変わらない歌声のおかげなのです。
こういうバンドも出てくるのが、「イカ天」の奥深さですよね。
この「BEGIN」に、グランドキングを阻止されたバンドが「NORMA JEAN」というガールズバンドで、けっこう人気があったのですが、『恋しくて』に圧倒されちゃったんですよね。
プリンセス・プリンセス系統の元気のいいポップロックバンドで、活動期間は短かったけど、メジャーデビューもしてましたね。
◇◆ 3代目グランドイカ天キング ◆◇
たま
一応、フォークグループらしいのですが、かなり不思議な感じだった「たま」が三代目のグランドキングになります。
まあ、正直コミックバンドっぽかったのですが、独特な出で立ちと演奏で、かなり評価が高かったのです。
”山下清”感の強いパーカッションの石川さんや、”鬼太郎”感の強い知久さんの印象も強烈でしたが、アコーディオン、足踏みオルガン、リコーダー、桶や鍋などを駆使して、かなり奇異な音楽性でした。
そんなに前のめりにはなれなかった自分なのですが、ケラの”ナゴムレコード”所属と聞いて納得したのを憶えてます。
「たま」はそういうジャンルのグループなのです。
メジャーデビュー後も、すごく売れたんですよね。
社会現象とよばれるぐらいの人気でした。
メンバーの脱退等もありましたが、現象が沈静化した後もマイペースに活動を続けていて、2003年に解散しています。
そして、この「たま」のグランドキングをかけた対決で敗北したものの、審査員の推薦で暫定キングとなり、その後、圧倒的な実力で、4代目グランドイカ天キングとなったのが「マルコシアス・バンプ」なのです。
◇◆ 4代目グランドイカ天キング ◆◇
マルコシアス・バンプ
グラムロックと言われても、イメージできませんが、デヴィッド・ボウイあたりの、濃いメイク、派手なファッションみたいな時代の音を思い浮かべていただければと思います。
「たま」との対決では、えらい落差があったのですが、惜しくも敗北しちゃうんですよね。
ただ、その実力が認められて、暫定キングの座が与えられるのですが、演奏はなかなか凄かったんですよね。(自分の趣味ではなかったのですが..)
人気はあったのですが、グラムロックというメジャーになりにくいジャンルを邁進していたので、実力は認められつつも、今ひとつ、ヒットはなかったのです。
1996年に解散するのですが、 常に「たま」の影にいたイメージのバンドなのです。
ここで、正直に言うと、この「たま」と「マルコシアス・バンプ」の対決辺りが、「イカ天」の絶頂期だったような気がします。
自分自身、惰性で見ていたのですが、「たま」や「マルコシアス・バンプ」の音楽性には、今ひとつ乗り切れていない自分がいたのは事実なのです。
◇◆ 5代目グランドイカ天キング ◆◇
LITTLE CREATURES
ちょっと「イカ天」に冷め始めていた時に現れたのが、トーキング・ヘッズのアルバムと同じ名前を持つ「LITTLE CREATURES」だったのです。
最初に出てきた時からプロっぽいバンドだったんですよね。
音楽性もクールで、アダルティで、他のバンドとは違った感じだったのです。アマチュアっぽさに食傷気味な自分にとっては、安心して聴けるバンドだったのです。
自分の中ではジャズっぽいイメージだったのですが、テクノ、ロック、民族音楽など、様々な音楽性を持った大人のバンドって感じでした。
その後もマイペースに活動を続けていて、クールな音楽を聴かせてくれています。
◇◆ 6代目グランドイカ天キング ◆◇
BLANKEY JET CITY
番組自体も低迷し始めた頃、スっと現れて、一気にキングの座に駆け上がったのが「BLANKEY JET CITY」でした。
このバンドを生んだのも「イカ天」の功績のひとつですね。
ブランキーは、ジャパニーズ・ロック史においても重要なバンドだと思ってるのですが、アクの強いこの3人組は、今でも特別な気がします。
サブスクの解禁、お待ちしています。
◇◆ 7代目グランドイカ天キング ◆◇
PANIC IN THE ZU:(パニック・イン・ザ・ズゥ)
最後のグランドキングだった、「PANIC IN THE ZU:」。
この頃は、あんまり番組自体を観てなかったので、印象があまりにも薄かったりします。
もしかしたらメジャーデビューとかはしてないバンドかもしれません。
あまり音源はないのですが、さすが唯一のガールズグランドキングって感じの演奏ですよね。
今回、初めて聴いたのですが、もっと聴いてみたくなりました。
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と、つらつらと歴代グランドキングを追いかけてきましたが、短期間に、これだけのグループを世に送り出したのだから、やっぱ、すごい番組だったと思うのです。
審査員の皆さんも個性的な面々で
審査員長の萩原健太さんに
コンビのトークが楽しかった吉田健さんと伊藤銀次さん
審査講評が、また、面白かったのですが、ホントにいろんなバンドがいたので、講評も自分の音楽性を耕してくれたような気がしますね。
また、グランドキングにならなくても、「JITTERIN'JINN」や「カブキロックス」「PINK SAPPHIRE」「THE KIDS」などなど、メジャーデビューしたグループはたくさんいて、その中には、あの「GLAY」もいたというのだから、ほんと驚きなのです。
空前のバンドブームを生んだこの「イカ天」は、90年代の音楽シーンのすそ野を広げたという点で、功績は大きいと思うのです。
今では「You tube」などのプラットフォームがその役を果たしているので、こういう番組って二度と生まれてこないような気がします。
そう思うと、あの頃、あの番組の熱量が、無性に懐かしかったりするのです。
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