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ジノ・ヴァネリと夜を歩く(私的名盤『ナイトウォーカー』)

Nightwalk with "Gino Vannelli"


 まずはじめに

 はっきり言って、私は ”夜” が好きです!

 中学校から深夜ラジオ等のために夜更かしを始め、朝の3時・4時頃まで、平気で起きていたのです。
 あの家族が寝静まった後の、なんとも言えない静けさの中、一人起きてるのが好きなんですよね。
 多分、他にもそういう趣向の人はいるはずで、私的にはそんな人を ”夜一族” と呼んでいます。

 エドワード・ホッパーが夜の街を描いた絵画作品にシンパシーを感じちゃう人なんかは、夜一族に違いないと思います。

『Nighthawks』1942, Art Institute of Chicago


 絵画は直接的な描写に近いのですが、映画や小説、そして音楽にも「夜」を感じさせるものがあって、そんな作品に目が無いのです。


 そんな私が、夜一族のシンパシーを感じたアルバムが3枚あってですね。

 1枚目がシャカタクの『ナイトバーズ

『Night Birds』Shakatak, 1982

2枚目がドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ

『The Nightfly』Donald Fagen, 1982

 

 そして、最後の3枚目が

 ジノ・ヴァネリの『ナイトウォーカー』 なんです。

『Nightwalker』Gino Vannelli, 1981


 
 ジノ・ヴァネリって、あまりヒット曲がないので、けっこうマイナーな存在かもしれませんが、カナダ出身のイタリア系シンガーソングライターです。

 このカーリーヘアが時代を感じさせますね。
 自分が聴いた80年前後のアルバムでは ”ソフトロック” や ”AOR” カテゴリーとされていましたが、ボサノヴァからフュージョン、プログレ、ジャズなど、カテゴリー分けの難しいシンガーです。


 『ナイトウォーカー』は、ジノ・ヴァネリの7作目のアルバムで、前作だった6作目のアルバム『ブラザー・トゥ・ブラザー』に収録されている「I Just Wanna Stop」のスマッシュヒットを受けて、1981年にリリースされたものです。

「I Just Wanna Stop」

 全米4位にランキングされたジノ・ヴァネリの代表曲です。


 ジノ・ヴァネリの名盤というと、この曲の入った『ブラザー・トゥ・ブラザー』が挙げられることが多いんですが、夜一族としては、やっぱ『ナイトウォーカー』が好きなんです。


『ナイトウォーカー』


 1981年なんで、『ナイトバーズ』や『ナイトフライ』の前年にリリースされているのですが、実は、自分が聴いたのは、もっと後なので、この順番に紹介しています。

 正直に言うと、当時、ジノ・ヴァネリってアーティストのことは、全く知らなかったんです。
 レンタルレコード店で違うアーティストのレコードを探してるうちに見つけて、『ナイトウォーカー』というタイトル、そして、ジャケットデザインに魅かれて借りて帰ったという…

 分かってもらえると思うんですが、なんか、夜一族の匂いがぷんぷんしてたんですよね~


 アルバムの一曲目が、タイトル曲の「Nightwalker」なんですが、レコードに針を落としてからも曲が始まる気配がないんですよね。
 じっと聴いてると、何やら遠くに雑踏らしき音が聴こえてきて、静かに曲が始まっていくという..

「Nightwalker」

 この出だしにすっかり引き込まれちゃったんです!
 この曲だけで、私の勘は間違ってなかったと思いました。

 そして、続いての2曲目が

「Seek And You Will Find」

 2曲目も濃密な夜の気配で溢れてるんですよね~
 う~ん、たまらない!!
 もしや、このアルバムはかなりの当たりかもしれない!と予感させるものでした。

 また、独特のセクシーな歌声が特徴ですから、やっぱりバラードが似合うんですよね~。
 この『ナイトウォーカー』からは、バラード「Living Inside Myself」が全米6位にランキングされています。


「Living Inside Myself」


 今、聴いても夜のお伴にピッタリなアルバムだと思います。
  ↑
 なんだよ夜のお伴って!


+  +  +  +  +  +


 実は、『ナイトウォーカー』の後、新曲?のPVは見た事あるんですが、あまり魅かれなかった記憶があって、そうこうしてるうちに、ジノ・ヴァネリって名前は聞かなくなっていくんですよね。
 社会がレコードからCDへ移行していく中で、見なくなってしまったアーティストの一人です。

 今回、その後の様子を調べてみると、まだまだ現役さんのようです。
 もう70歳ぐらいだと思いますが、夜に沁み込んでいくような歌声はご健在のようで、アダルティな雰囲気は相変わらずでした!


「Gimme Back My Life」2019





(私的”夜の名盤”)