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積み荷のない船の指す意味は…(There is a Song)

『積み荷のない船』:井上陽水「TEENAGER」c/w(1998)


 積み荷もなく行くあの船は
 海に沈む途中
 港に住む人々に
 深い夜を想わせて

 井上陽水さんの書く詞は、独特のリリシズムがあって、解釈がちょっと難しいのです。

 ただ、この曲の中で描かれている”積み荷のない船”というのは、特に目的もなく旅をするイメージなのかなと思っています...


 そう感じるのは、この曲が主題歌となっていた『深夜特急』のイメージが強いんでしょうね。



 沢木耕太郎さんの紀行小説である『深夜特急』自体は、全く目的地がないわけではなく、漠然とロンドンを目指す旅の様子を描いたものです。
 ただ、漠然とした旅は、積み荷のない船の旅のように、港に何かをもたらすものではなく、そこには人との想いが重なるだけなのです。



キャプチャ

 冒頭、”深夜特急”は監獄からの脱走を意味すると掲げられているけれど、この物語の主人公が何から抜け出したかったものが、これまた漠然としたテーマだと思うんですよね。

 世界のこの現状は、監獄とまでは言えなくとも、何か、抜け出したい気持ちが強くある今、やっぱりこの曲が心に染みるのです。