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抗がん剤を受けに行く際に、看護師さんに付き添いをお願いする ~とあるOLの乳がん日記【79】
79.
いよいよ抗がん剤の日になった。
当日はやっぱり緊張して、出かける前に家族に行ってきます、と言おうとしたら母親はちょうど出かけてしまっていたので、そうか、と思った。
でも、徒歩で駅に向かっていたら、ちょうど帰ってくる母親と会えたので、なんとなくラッキーだと思って、何か見えないものの存在に、サービスしてもらっている気がして、ありがたいなと思った。
抗がん剤の前には内科の診察があって、相変わらず混雑していたので、ひたすら待合室で待った。
やっと呼ばれると、いつもの内科の看護師さんもいて嬉しかった。
今日の流れと、抗がん剤の副作用の説明を色々受けたけれど、抗がん剤を受けるまでには、まず1階の調剤部屋で吐き気止めをもらったら、その場で飲んで、それから3階の通院センターに向かって、受付をして、抗がん剤を受けるということだったので、意外と色々やることがあるなと思った。
内科の診察を終えて部屋を出ると、看護師さんが一緒に出てきてくれて、もう一度私の反応を見ながら、薬を飲んだらすぐに3階に向かってくださいね、と念を押してくれた。
でも、ふと一緒についていきましょうか?と言ってくれて、普通は、いや別に大丈夫ですと言うのだろうけれど、たぶん心細くて、何より私が土壇場で逃げ出さないように、見張っていてほしいと思ったので、お願いしますと言った。
抗がん剤をすることは、「いつか子供を持つ」という、私が思い描いていた「普通」の「幸せ」を壊す可能性があって、とても辛い気持ちだったけれど、抗がん剤をしても子供を持ったという人の記述に、そこに賭けてみようと勇気づけられたことも思い出したし、抗がん剤は人によっては、耐えられないほどしんどいもので、最初から受けないことを決めたり、途中でやめてしまうことも珍しくないということを思い出したりした。
何度も本当にいいのかと思ったけれど、もし、自分が再発してしまったとき、やらなかったことで自分は後悔したくないと思ったから、やろうと決めたことも振り返って、そんなふうに色々なことを考えながら、1階の自動販売機で水を買いつつ、調剤室の前にたどり着いて、吐き気止めの薬を受け取った。
薬を渡してくれた人が、渡した時間を記録していたので、ほんとに厳密に時間が大事なんだなと思った。
そうして看護師さんに見守られながら薬を飲むと、看護師さんはいってらっしゃい、と私に言った。
私は行ってきます、と言って、私は、たくさんの人に甘えて、甘えることができて、やっぱりありがたいなと思った。
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