【第22話】心の故郷ニコン!最終的に選んだ機種は?私のカメラ遍歴と写真④最終回
「私のカメラ遍歴」も最終回となった。
他人はどんな考えで、どんなカメラを選んだのか、とても興味のある人が多いらしく、このシリーズはアクセス数がすこぶる多い。多くの「スキ」もいただいた。本当に感謝に堪えない。
さて、最終回は、心のふるさと・ニコンである。1980年代にNikon F3で仕事を始めた私にとって、ニコンは撮影の楽しさと難しさを学ばせてもらった、いわば、学び舎(まなびや)である。
それゆえ数年前に趣味カメラを再開した当初からとても気になるメーカーだった。
ただ、総合的に判断してミラーレスで先行していたソニーや富士フイルムを選択した。以来、ニコンはもう縁のないカメラ生活になるかもしれないと思っていた。
しかし、最近、ニコンの経営難が再三、伝えられている。
将来、いつ生産がストップするかもしれないという不安からか、販売ランキングではトップ10にすらランクされないことも珍しくなくなった。
最近、「ニコン頑張れ!」という思いも込めて現行機種を購入した。どの機種を選んだのか?
というわけで、私のニコン遍歴を始めたい。
Nikon F3の素晴らしさを再認識
私は30年前、現場を離れる際、当時のニコン機やレンズを処分していた。
手元に残ったのは、大先輩から頂いた大昔のプロ機・Nikon SP Black paintと、仕事に使用していたNikon F3の2台だけ。数年前に双方ともオーバーホールしたが、F3は完全に復旧せず、新たに中古を手に入れていた。
Nikon SPのブラックは、いまではプレミアがついて30〜50万円で販売されているが、その写りについては過去に当「寫眞機余話」でご紹介しているので、今回は割愛したい。
それで、F3である。フィルムは私には信じらない価格となった。さらに撮影後は現像に出す手間もある。そのため、私の趣味カメラはもっぱらミラーレスで、F3は完全にオブジェ状態だった。
ただ、最近はミラーレスの画像にも飽きてきた。気分転換に30年ぶりにF3にフィルムを通し、モータードライブもつけて、シャッター音を楽しみながら撮影した。
(写真は、Nikon F3 + モータードライブMD-4 + Ai NIKKOR 50㎜ f1.4・フジカラー SUPERIA PREMIUM ISO400で撮影)
かつての愛機F3に、私の大好きなレンズ「Ai NIKKOR 50㎜ f1.4」で撮影したが、そのカラー写真は想像以上に表現力豊かだった。
正直、デジタルデータを見て「こんなによく描写するカメラシステムだったっけ」と思ったほどである。同時にF3のファインダーの広さと見易さも改めて実感した。
他メーカーの機材ばかりを購入することに、どこか後ろめたさも感じていた。しかし、撮影を終えた日、私はニコンの現行機種を買うことに決めていた。
ただ、私はメーカー応援のためにカメラを買う行為は好きではない。むしろ、嫌いである。自発的に買いたくなる製品を作ることこそ、メーカーの責任だと考えているからである。
だから、現行機種選びは相当、厳しい目で選んだつもりだ。
初のニコン製デジタル一眼レフはCCDセンサーのD60
そうはいっても、ニコンのデジタルカメラを全く購入していなかったわけではない。
手元には2007年発売の入門機D60があった。いまはなきCCDセンサー搭載である。
もともと、Leica M9-PのCCDセンサーが描く個性的表現が好きだったため、今年初め、600万画素のCCDセンサー搭載「PENTAX K100D Super」(2006年発売)を入手した。
その表現力に大満足し、もっと画素数の多いNikon D60(1000万画素)を購入していた。
使用感の少ない個体だったが、レンズ3本付きで1万円。気軽に買うことができた。
その描写であるが、作例をご覧いただきたい。
これがキットレンズで撮影したニコン入門機の表現力である。
カメラにしろ、レンズにしろ、安い機材にこそ、そのメーカーの良心を感じることがある。D60はまさにニコンの良心を感じる機種だった。
入門機の次は、ニコンが本気で作った勝負機である。
ニコンの勝負機といえば、プロ機のD5やD6があるが、趣味カメラとしては大袈裟すぎる。
ニコンは「ミラーレスに全集中する」と宣言したので、Zマウントも検討した。しかし、デザインがどうもしっくりこない。斜体のNikonロゴが今にも倒れそうで好きになれなかった。(あくまで私の主観)
ニコンはフィルムカメラ時代のロゴが素敵だ。
さらに、Zマウントはレンズのラインナップも不十分だった。小型軽量なミラーレスの長所を台無しにするような大きく重く、そして高額なものが多い。
ZマウントはFマウントに比べて周辺解像や諸収差の修正など向上しているのは確かだ。ただ、私は広告写真を撮影したいわけでもない。
たとえ描写力が劣っていても、諸収差が主体を引き立たせ、表現力としては上ということもある。
残念ながらZマウントに購買意欲を掻き立てるモデルはなかった。今後に期待したい。
いろいろ検討した結果、以前から男前だと思っていた有効4575万画素の一眼レフD850を選んだ。構えが良い。
2017年、ニコンが勝負をかけて発売した現行機種。ボディ重量1kgと決して軽くはないが、私のF3システム(単焦点つきで1.7kg)よりは軽い。グリップの良さがボディの重みを軽減している。
ペンタックスのフルサイズK-1 MarkⅡもグリップが握りやすい機種だが、それに勝るとも劣らない。
描写力だが、「撒き餌レンズ」と言われる安価なレンズやフィルム時代の古いDレンズなどで撮影し、カメラの素性を確かめてみた。
悪いはずがない。
(D850 + AF-P NIKKOR 70-300mm f4.5-5.6E ED VR)
(D850 + Ai AF NIKKOR 35mm f2 D)
(D850 + AF-S NIKKOR 50mm f1.8 G)
(D850 + AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR)
(D850 + AF-S NIKKOR 50mm f1.8 G)
撮影データを見て、私にとってD850が最後のレフ機になるだろうと思った。
高精細かつ豊かな階調、色の表現も自然で上品だ。これ以上、望みようがない。
現在、単焦点レンズを揃えている最中だが、D850は高感度性能も優れているそうなので、いずれ夜撮影に持ち出したいと考えている。
カメラやレンズ選びは、一緒に生活しないと相性が分からない伴侶選びと同じだと思うことがある。万人に共通の正解はないし、世間の評判も決して当てにはならない。
私自身、これまで相性が悪くて売却した機材も少なくない。逆に「売らなきゃよかった」と後悔した機材もある。
けれども、機材選びで成功や失敗を繰り返しながら、自分の理想に近づく過程にこそ、趣味カメラの醍醐味がある。
4回にわたってお伝えした「私のカメラ遍歴」。少しでもお役に立てれば幸いである。
不条理なことばかりで、不安の尽きない時代。機材選びを楽しみ、撮影を楽しむ。
趣味カメラがみなさんの心の癒しや人生の潤滑油になることを願って「私のカメラ遍歴」を終わりたい。
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