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ポーカーはテーブルの上だけで終わらない 〜アングラポーカーで本当に負けたもの〜
序章:アングラポーカーへの入り口
「リアルマネーでポーカーをやりたい。」
そう思い始めたのは、アミューズメントポーカーの店を回り尽くした頃だった。
どの店も、ゲームのルールは同じ。店内ポイントを稼ぐだけの、ある種のメダルゲームのような感覚。
でも、そこには「スリル」がなかった。
勝っても失うものがないからこそ、プレイヤーのアクションも軽い。
レイズ、オールイン。チップをぶち込んでも、それはただの「ゲームの点数」だった。
「本物のポーカーをやりたい。」
そう考えていた時、Twitterであるアカウントを見つけた。
「会員制のポーカールームに興味はありませんか?」
ポーカープレイヤーを多くフォローしていた俺に届いた、一通のDM。
詳細を聞くと、場所は特定の駅の近く。
「近くに着いたら迎えに行きます」とのことだった。
「……まぁ、一回くらいは試してみるか。」
正直、最初は半信半疑だった。
でも、それ以上に「リアルマネーでのポーカー」ができるという期待が勝った。
こうして、俺はアングラポーカーの世界へ足を踏み入れることになった。
怪しい誘いと不安な車内
指定された駅に到着すると、俺は周囲を見渡した。
時間は午後9時。すでに駅周辺は静まり返っている。
飲み屋帰りのサラリーマン、駅前でたむろする若者たち。
でも、迎えに来るという車らしきものは見当たらない。
「……本当に大丈夫なのか?」
不安になりながらDMを送ると、すぐに返事が来た。
「黒いワンボックスカーが向かいます。」
少しして、駅前にゆっくりと車が停まる。
運転席には30代後半くらいの小太りの男。
黒縁のメガネをかけ、柔和な笑顔を浮かべている。
「こんばんは、お待ちしていました。」
物腰がやけに低い。
俺は少し警戒しながら車に乗り込んだ。
車内は妙に静かで、エアコンの風が無機質な音を立てている。
「……初めてですか?」
「ええ。」
「そうですか。安心してくださいね、みんな楽しんでますから。」
静かに微笑む男の顔を見ながら、俺はなんとも言えない違和感を覚えた。
アングラの世界:初めてのホームゲーム
しばらく走った後、車は雑居ビルの前で止まった。
狭い階段を上がると、目の前には重厚な鉄の扉。
ノックすると、中から鍵が外され、少しだけ扉が開く。
タバコの煙が流れ出る。
中に入ると、6人ほどの男たちがポーカーテーブルを囲んでいた。
静かにゲームを進める者、笑いながらチップを弾く者。
そして、その中央に、さっきの男——オーナーが座っていた。
「レートは2-5。最初に10万円分のチップを買う形になります。」
俺は財布から10万円を取り出し、オーナーに渡した。
すぐにディーラーがチップを用意し、俺の前に置いた。
これが、俺のアングラポーカーデビューだった。
ポーカーはテーブルの上だけで終わらない 〜アングラポーカーで本当に負けたもの〜
序章:アングラポーカーへの入り口
「リアルマネーでポーカーをやりたい。」
そう思い始めたのは、アミューズメントポーカーの店を回り尽くした頃だった。
どの店も、ゲームのルールは同じ。店内ポイントを稼ぐだけの、ある種のメダルゲームのような感覚。
でも、そこには「スリル」がなかった。
勝っても失うものがないからこそ、プレイヤーのアクションも軽い。
レイズ、オールイン。チップをぶち込んでも、それはただの「ゲームの点数」だった。
「本物のポーカーをやりたい。」
そう考えていた時、Twitterであるアカウントを見つけた。
「会員制のポーカールームに興味はありませんか?」
ポーカープレイヤーを多くフォローしていた俺に届いた、一通のDM。
詳細を聞くと、場所は特定の駅の近く。
「近くに着いたら迎えに行きます」とのことだった。
「……まぁ、一回くらいは試してみるか。」
正直、最初は半信半疑だった。
でも、それ以上に「リアルマネーでのポーカー」ができるという期待が勝った。
こうして、俺はアングラポーカーの世界へ足を踏み入れることになった。
怪しい誘いと不安な車内
指定された駅に到着すると、俺は周囲を見渡した。
時間は午後9時。すでに駅周辺は静まり返っている。
飲み屋帰りのサラリーマン、駅前でたむろする若者たち。
でも、迎えに来るという車らしきものは見当たらない。
「……本当に大丈夫なのか?」
不安になりながらDMを送ると、すぐに返事が来た。
「黒いワンボックスカーが向かいます。」
少しして、駅前にゆっくりと車が停まる。
運転席には30代後半くらいの小太りの男。
黒縁のメガネをかけ、柔和な笑顔を浮かべている。
「こんばんは、お待ちしていました。」
物腰がやけに低い。
俺は少し警戒しながら車に乗り込んだ。
車内は妙に静かで、エアコンの風が無機質な音を立てている。
「……初めてですか?」
「ええ。」
「そうですか。安心してくださいね、みんな楽しんでますから。」
静かに微笑む男の顔を見ながら、俺はなんとも言えない違和感を覚えた。
アングラの世界:初めてのホームゲーム
しばらく走った後、車は雑居ビルの前で止まった。
狭い階段を上がると、目の前には重厚な鉄の扉。
ノックすると、中から鍵が外され、少しだけ扉が開く。
タバコの煙が流れ出る。
中に入ると、6人ほどの男たちがポーカーテーブルを囲んでいた。
静かにゲームを進める者、笑いながらチップを弾く者。
そして、その中央に、さっきの男——オーナーが座っていた。
「レートは2-5。最初に10万円分のチップを買う形になります。」
俺は財布から10万円を取り出し、オーナーに渡した。
すぐにディーラーがチップを用意し、俺の前に置いた。
これが、俺のアングラポーカーデビューだった。
序盤戦:ファーストハンドの緊張感
席に座ると、急に背中に汗が滲んできた。
「これがアングラポーカーか……」
手元に積まれた10万円分のチップ。
これはゲームの点数ではない。リアルな金 だ。
「ディール!」
ディーラーがカードを配る。
最初に手元にきたカード——
K♣ 10♠
まずまずのハンドだ。
俺の心臓がバクバクと鳴る。
「レイズ」と言うべきか、それとも……
「1500。」
俺は小さく呟いた。
隣の男がコール。
COのオーナーが 「7000」 と言いながらチップを投げた。
「……いきなり3BETか。」
ここで降りるのは簡単だった。
だが、俺は……
「コール。」
そう言って、ポットにチップを入れた。
フロップ:J♦ 9♠ 5♣
ガットショットストレートドロー。
俺がチェックすると、オーナーは間髪入れずに 10,000 を投げた。
「強いのか、それとも……」
悩んだ末、俺はダウンした。
オーナーは笑いながら 「ワンペアっすよ。」 と言って、
A9oを見せた。
俺はこの時、まだ知らなかった。
このゲームには、テーブルの上だけじゃない戦いがある ことを——。
クライマックス:KK vs A5s(究極の心理戦と絶望)
時間が経つにつれ、俺のスタックは回復しつつあった。
長時間プレーしたことで、最初に感じていたアングラポーカーの緊張感は、少しずつ薄れてきていた。
「まぁ、意外と普通のポーカーだな……」
そう思い始めた矢先——
俺の手元に、K♠ K♦ が配られた。
「……来た。」
最高のタイミングで、最高のハンド。
この手は、絶対に大きなポットを狙うべきハンドだ。
CO(カットオフ)がオープンレイズ(2500)。
ここは迷わず、俺は 3BET 8000 を投げる。
すると、UTG(アーリーポジション)のプレイヤーが 4BET 25000 を仕掛けてきた。
「……は?」
ここでの4BETは、明らかに強いハンドの証拠。
AKs、QQ+(QQ、KK、AA)あたりが濃厚。
だが、俺は持っているのが KK だ。
唯一、怖いのは AA のみ。
「……AAか? いや、AKの可能性もある……。」
UTGは強気なプレイヤーではあるが、無謀なオールインプレイヤーではない。
慎重なスタイルだからこそ、ブラフの可能性はほぼゼロ。
ここでコールするだけでもいいが、4BETにコールするだけでは勝てるポットを逃す可能性がある。
相手がAKなら、プリフロップのうちに決着をつけるべき。
俺は、深く息を吸って、決断した。
「オールイン。」
静寂が訪れる。
相手のスタックは約6万。
これを受けるかどうか——
「……コール。」
相手の口から、重々しくその言葉が出る。
テーブルの周囲がざわついた。
ここでのオールインポットは、約14万を超えている。
この勝負に勝てば、俺は一気にプラスへと浮上する。
お互いのカードが開かれる。
俺 「K♠ K♦」
相手 「A♠ 5♠」
「……は?」
何を考えているんだ? と思った。
普通、A5sでここまで突っ込むか?
だが、相手はニヤリと笑いながら言った。
「ギャンブルだよ。」
……こいつ。
テーブルがさらにざわつく。
一人が苦笑しながら「さすがにKK強すぎるでしょ」と呟いた。
「頼む……このまま。」
ディーラーが、ゆっくりとフロップをめくる。
フロップ:10♦ 8♠ 3♣
よし、セーフ。
「あと2枚……」
ターン:6♦
問題なし。
このままリバーを乗り切れば、俺の勝ちだ。
「このまま……頼む……!」
リバー:A♥
時間が止まった。
……。
テーブルが一瞬静まり、そしてすぐにどよめきが起こる。
「うわぁ……」
「マジか……」
リバーのA。
俺の視界がぼやける。
耳の奥で、心臓の音が響く。
「……マジかよ。」
相手はニヤリと笑いながら、チップを自分の方へとかき集めた。
「うわぁ、これはキツいねぇ。」
隣のプレイヤーが苦笑いしながら言った。
KK vs A5sのオールイン——
リバー1枚で、地獄へ突き落とされた。
俺は、ただ呆然と、テーブルのチップがなくなるのを見ていた。
「どうする?」
考えがまとまらないまま、俺は次の行動を決める。
財布の中から、最後の15万円 を取り出す。
「追加で。」
ディーラーが頷き、新たなチップが積み上げられる。
今の負けを取り返さなければ——
ここで降りるわけにはいかない。
だが、この時の俺は気づいていなかった。
このポーカーゲームで負けたのは、テーブルの上だけの話ではなかった。
本当の負けは、この後に待っていた——。
結末:オーナーの消失とポーカーの本質
時間が経ち、テーブルの人数も減っていった。
俺は順調にチップを戻し、14万円分のスタックに回復した。
ほぼトントンだ。
そして、俺の 精算の番が来た。
「すみません、お兄さん……記録にはついてるんですが、お金がないですね。」
「は?」
オーナーは振込対応をすると言ったが、後日、振込はされなかった。
さらに、彼は県外に逃げた という噂を耳にする。
「アイツ、数百万単位で借金してたらしい。」
ポーカーは、テーブルの上だけのゲームではない。
テーブルの上でどれだけ勝っても、
ゲームの外で負けることもある。
「二度とアングラでは打たない。」
俺は決意を固め、夜の街を歩いていった——。
(END)