すべては珈琲の香りに包まれる
カランコロン♪
ランチタイムが終わる頃、
1人の女性が喫茶花の扉を開ける。
いつもならお気に入りのソファ席に行く彼女だが、今日はまっすぐカウンター席へと向かう。
「こんにちは。今からで良かったですか?」
そう聞く彼女に満面の笑顔で来てくれてありがとう、と答えるのは喫茶花のマスター小花だ。
腰まであるキレイなストレートの髪を一つにまとめると、蒼糸裏夜は小花から受け取ったエプロンをつけた。
カウンター席に側のテーブルには、挽きたてのコーヒー豆とドリップパック。
そう
今日の彼女は、喫茶花に臨時のバイトで雇われていた。
「急にたくさんの注文が入っちゃって困ってたの。裏夜さんが引き受けてくれて助かったわ」
小花が簡単に手順を説明すると、裏夜は意外と慣れた手つきで作業を進めていく。
コーヒーの香りがいつもよりも強く漂う空間に、2人は特に多くを語ることなく静かに淡々とその作業を進めた。
数日前。
蒼糸裏夜がいつものように喫茶花のソファ席でオムライスを堪能していた時、彼女は短期バイトの募集を眺めていた。
実は本業の任務のために、潜入方法の一つとして眺めていただけなのだが、ついその姿を見かけた小花から声をかけられた。
「もし、短期バイト探してるなら…うちで働いてみる気はないですか?」
ちょうどコーヒーのドリップパックの大量注文が入ったが、お店の営業をしながら作業するには手が足りず困っていたという。
裏夜はバイトが目的ではなかったので一瞬戸惑ったが、報酬に賄いのオムライスをつける!と言う小花の一言で思わず頷いてしまっていた。
手際よく作業を進める裏夜を見つめる小花は満足そうに微笑む。
その時だった。
カランコロン♪
「いらっしゃいませー」
スタッフの波が元気に声をかける。
2人組の男性が店にやってきた。
1人はとても疲れた顔をして、覇気のない目をしている。
「あの感じだと影橋さん寝てないわねぇ…」
心配そうに呟く小花の独り言を裏夜は聞き逃さなかった。
波は別のお客を案内していたため、小花は仕方なく裏夜に案内を頼む。
「ごめんなさい、案内だけお願いできない?」
「…ソファ席に案内しても?」
もちろん!と疲れている影橋さんへの差し入れに甘いものを用意しながら小花は頷く。
彼らは窓辺のソファ席に座ると何やら神妙な面持ちで話をはじめた。
思わずソファ席の2人組に目線を送る。
あの席なら大丈夫だ。
そんな裏夜の裏の顔など、小花は全く知らない。
小花はただただ丁寧に作業を進める彼女を見ながら、おしゃべりしたい気持ちを抑えていた。
ふと気付くとさっきの2人組は早々に店を後にしていた。
若干、裏夜の表情が曇ったのは気のせいだろうか…
「あ!」
ちょうどお客がいなくなったタイミングで思いつく。
「波さん!裏夜さん!休憩しましょ〜。今日は御八堂さんのきんつば買ってきてたのよ!」
甘いものを食べればきっと裏夜さんの表情も戻るだろう。
「あのソファ席で食べてもいいですか?」
裏夜はやはりあの席がお気に入りなのだろうか、今は客もいないから何の問題もない。
3人分のコーヒーときんつばを用意してソファ席に座る。
「さぁゆっくり食べましょう!実はこの時間が1番楽しみだったの!」
【今回のお話の関連記事】
✅アサシンをバイトに誘ったきっかけはこちら
✅ようこそ喫茶花へ
✅アサシンこと蒼糸裏夜さんが盗聴器を仕掛けた話
✅美味しいおやつはもちろん御八堂
ワールドブルー物語って何??って方はぜひ
▽ ▽ ▽
有能秘書ゆにさんのサイトマップ(神✨)
▽ ▽ ▽
マイトンさんの最新版ウィークリーレター
こちらには今までにみんなで作り上げた世界観や登場実物がわかりやすくまとめられてます!ワールドブルーを見たことがなく時系列で読みたい方にぴったり♪
▽ ▽ ▽
あとはこれ!とってもわかりやすく世界観がまとめられているのでぜひ最初期読んでいただきたい✨
キャラクターイメージはこちらから
▽ ▽ ▽
新しい方の参入もお待ちしております♪