母と娘の希望
前回のお話。
「ちょっと!!おじさん!いい加減にしてよ!」
橙井美星はバイクの後ろに座っていた蒼里運天の頭をグーでどつく。
数時間もの間、砂漠を走り続けてようやくアジトに帰り着いたのだが…この蒼里という男は、美星にしがみついたまま爆睡していた。
危うくずり落ちそうになるので、仕方なく腕を腰にまわして両手を紐で縛り付けていたのだが、到着しても一向に起きない蒼里にはさすがの美星も呆れてしまった。
「Citrus」
ワールドブルー社に対抗するレジスタンス組織。
そのアジトは、元々スットン共和国が存在していた場所にある。
カモフラージュなのかもしれないが、廃墟と化した雑居ビルを改装したもので、側から見ればこの一帯は誰も住んでいないようにも思えるほどだ。
地球上の3/4が砂漠化されてしまい、残されたわずかな土地は全てワールドブルー社が支配しているのが現状だ。
しかし、この場所はワールドブルー社に存在した秘密チームによってその支配を免れたらしい。
水や食料にいたるまで、生活に必要なものは全てワールドブルー社が握っており、生き残った人々は彼らの恩恵を受けながらでないと生活していくことができない。
しかし、我々はこの場所のおかげでなんとか自給自足で最低限の生活をまかなうことができていた。
運良く水源が見つかったのが幸いだと言えるだろう。この水源がなければ、我々はこの場所で生きていくことは困難に等しい。
長時間の砂漠のツーリングで全身砂まみれになった体を水で洗い流すと、美星は蒼樹の元へ向かう。
「ただいま、樹。蒼里運天っておじさんのこと、何かわかった?」
相変わらず暗い部屋で右手の親指の爪を噛みながらモニターに見入っていた樹は、蒼いヘッドホンを少しずらしながら美星の方を軽く振り返る。
「調べるもなにも…知っていたよ。彼は元ワールドブルー株式会社の社員で蒼広樹社長の元運転手だ。
しかし、クビになったことを根に持ってたはずだから…まぁ信用するかは別として、今慌てて消す理由はない。」
「知ってたってどういうこと?…まさか!?」
すでに美星に背を向けてしまった樹の背中に向かって質問するが、樹は
「あとは橙井香子に聞くんだな。彼女の方が詳しい。」
モニターを眺めながらそう答えると、ヘッドホンを戻して再びなにやらモニターに向かってぶつぶつ呟きはじめた。
橙井香子は、会議室で何やら険しい表情でパソコンのモニターを眺めている。さっきまで話し声が聞こえていたので、誰かと通話していたようなのだがあまり良くない知らせがあったのかもしれない。
こんな時の香子に話しかけるのは、出来れば避けたい。
しかし美星は深呼吸を一つすると、意を決してドアのない入り口の壁をノックした。
「ただいま戻りました。早速ですが蒼里の話が聞きたい、あと彼の処遇も」
香子は、まるで捨て犬を拾ってきてしまった子供を見るかのように眉間にシワを寄せながらため息をつくと、近くにいた男を呼び止め蒼里をひとまず軟禁するよう指示を出した。
「彼のことはおいおい話すわ。それよりも…南野教授は見つかった?これはあんたにしか頼めないの。実はエジプトにもレジスタンスグループが見つかったわ。知らないところでたくさんの反乱分子が勢力をつけているかもしれない。万が一その紛争に南野教授が巻き込まれでもしたら…」
香子の表情は言葉を吐き出すにつれて不安が溢れ出たようにみるみる青ざめ、今までに見たことがないくらい取り乱していた。
きっと他のメンバーにそんな姿は見せられないと、今まで必死で耐えていたのだろう。
「母さん!落ち着いて。大丈夫、私がなんとしてでも探し出すわ。」
娘の言葉を聞いて、取り乱してしまった自分に気付き、冷静さを取り戻す香子。
その切り替えの速さはさすがとしか言えない。
「美星、頼んだわよ…。そうだ最近、蒼衣という人物が動いているという噂を聞いたの。くれぐれも気をつけて」
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✅アルロンさんのこの話と並行して進んでおります。
✅シトラスとは別のレジスタンス?
✅蒼衣って誰?
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