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煮物になりたかったにんじん
寒い時期に温かい土のお布団でぬくぬくしすぎたせいで私の体は大きく大きく成長してしまった。
眠っている間に気づいたら土のお布団がどこかに行ってしまって、よく見たら私の周りには私にそっくりの子たちがたくさんいて、みんなそれぞれどこかにお出かけしていくみたい。
私にもお迎えが来て、優しそうな女の人がそっと私を袋に入れたの。
いい匂いのするお部屋で、私はこの女の人に
「大きなにんじんだねぇ」
って言われたの。
どうやら私はにんじんっていう名前みたい。
そばに小さな男の子がいたんだけど、私のことじっとみて
「ほんとだね!」
って笑って言ったわ。
確かにちょっと太りすぎたかもしれないけど、そんなふうに笑わなくてもいいじゃない。
「今日は豚汁にするからね」
って言いながら、女の人は私にナイフを向けたわ。
怖かったけど不思議とそれは自然なことに思えたし、実際にナイフが私に触れても痛くはなかったの。
それよりも男の子が喜んでいる声を聞いて嬉しくなったくらいよ。
だけど事件が起こったの。
私の体の半分が、違う大きさに切られるとお鍋じゃなくて別の容器に入れられてたの。
半分は小さく切られて、お鍋に入れられようとしていたわ。
だけど私、別々になるのは嫌なのよ…
一緒にみんなに食べられたいの。
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「あれ?にんじんがない!?」
出来上がった豚汁を器によそっていたら、入れたはずのにんじんが行方不明…
確かにお鍋に入れたつもりだったんだけど不思議に思いながら食卓に運ぶ私。
子供たちはにんじんが大好物。特に豚汁に入っているにんじんは大好きでなくてはならないのに。
「溶けて無くなったのかな?」
っていう次男に、そんなわけあるかいと思いながらもごめんねと謝る私。
にんじんが失踪した豚汁はちょっと彩りにかけたけれど寒い冬には美味しい一品になりました。
そして今日。
煮物を作ろうと、豚汁の時に一緒に刻んでおいた野菜をタッパーから鍋に移そうとした時でした。
「…あれ??」
そこには切り方も大きさも違うにんじんが…
どうやら私、切ったにんじんを間違えて全部タッパーに突っ込んでいたらしい。
にんじん出てきたよ〜(笑)と子供たちに報告すると、煮物ににんじんいっぱいで喜んでくれました。
きっと、豚汁じゃなくって煮物になりたかったのねって話にしてみましたが、完全に私がやらかしたっていう話でした。
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