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守りたいもの(後編)

このお話はフィクションワールドブルー物語です

ちょうど社内はお昼休みの時間のようだ。ロビーやオフィスを繋ぐ廊下をリラックスした表情で行き来する社員。

ふと背後に気配を感じて振り返ると、爽やかな笑顔の若者が立っていた。
「蒼木部長…ですね。今からランチミーティングいいでしょうか?」

こいつが蒼林か。念の為、首から下げている社員証をチラッと一瞥し名前を確認する。
「わかった」
とりあえず彼と話をしなければ何も始まらないようだし、素直に誘いに乗ることにした。
「あ、あそこにいるのが社長とゆにさんですよ」と蒼林が俺に耳打ちする。

若干着崩れたスーツに、疲れの浮かぶ表情…
あれがワールドブルー社の社長だって?と思わず見つめると、
社長の蒼広樹は、視線に気づいたのかこっちを向き足を止めた。

声の届く距離ではないので、とりあえず軽く頭を下げて会釈する。
蒼社長はニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべたが、立ち止まったせいで「急いでください社長!」と秘書のゆにに注意され、すぐに向こうへ立ち去っていった。

あれが社長…。見た目とは裏腹になにやら只者ではないものを感じた。
後になって、俺はひたすらこの社長からの無茶振りとも言える仕事の指示に振り回され、しかも驚くべき速さで会社が発展していくのを目の当たりにする。
彼は違う意味でも本当に只者ではなかったのだが、それはまた別のお話。



蒼林とのランチミーティングを終え、俺は自分の置かれた状況を理解することができた。
愛殺文の投下を阻止する…か。
俺にできるかは別として、やれることをやるしかないようだ。
慣れない部長業務をなんとか終わらせ、会社を後にする。

もう一つの守りたいもの…
すぬ婆に言われた言葉が脳裏から離れない。

35年前の世界は、どこも懐かしすぎてひたすら歩き回った。
そうだ、あそこにも行ってみよう。
会社の通りから一本路地裏に入ると、目の前に昔懐かしい雰囲気の喫茶店が見えてくる。
『喫茶 花』
店の外から中の様子を伺うと、ちょうど女性が客に向かって微笑みかけている。
「小花ちゃん…」
その笑顔を見た瞬間、俺の記憶がフラッシュバックする。

そうだ!俺は彼女を守らなければならない!


今日はいつだっけ…あと数ヶ月後のあの瞬間。
今度こそ俺は彼女を助けるんだ。

あの時俺は彼女小花を助けることができなかった。
これは神様…いやダン…すぬ婆?…とにかく誰かが俺にチャンスをくれたんだ。


そして数ヶ月後の運命の日…


「危ない!!!!」

ドンッ!!


「小花ちゃん!?おい!…大丈夫か!?」

気を失っている小花を腕に抱えながら、声をかける。


そう。
この日、「喫茶 花」のマスター小花はいつものようにワールドブルー社にコーヒー豆を納品するため会社の前の大通りに差し掛かった。
確か35年前の記憶だと、横断歩道を渡ろうとする小花は交通事故に巻き込まれてしまい、その人生を終えてしまうのだ。


この世界に来てから数ヶ月。
彼女を守るために、今日という日がいつだったのかを必死で思い出そうとする日々。
ようやく今朝になってテレビのニュースをみながら、それが今日だと思い出したのだ。
あわてて鍵もかけずに家を飛び出す。
この日は前日に社内のコーヒー豆を使い切ってしまったために、会社の始業時間より前に納品に来ていたはずだ。
記憶の糸を辿りながら会社へと走る。
視界に小花の姿を見つけた瞬間、大きなトラックが俺の後方から迫ってきた。

あぁ…あのトラックだ!!
(頼む!!間に合ってくれ!!)


「危ない!!!!」

ドンッ!!


「小花ちゃん!?おい!…大丈夫か!?」

小花を腕に抱えながら、声をかける。

何とか間に合ったが、小花を思い切り突き飛ばすような形でトラックを避けたので、衝撃で少し気を失ってしまったらしい。
脇見運転でもしていたのだろうか、信号無視をして横断歩道に突っ込んできたトラックは慌ててハンドルを切ったもののそのまま走り去っていった。


「あれ……わたし…」

「小花ちゃん!?大丈夫か??」
よかった…すぐに気がついてくれて。
そして彼女を守ることができたことに、安心感や喜びや何とも言えない感情が胸の中に渦巻いていた。

ふと腕の中の小花を見つめる。
小花は目が合うなり頬を赤らめて俺からふいっと視線を外すと、慌てて起き上がろうとするが、その瞬間苦しそうに表情が歪む。

「どこか痛む?それにしても気がついてよかった…。」


くぅ〜泣きそうだ!
こうなったら俺は小花を一生守り続けるんだ!
愛殺文?そんなことは二の次だ。俺は俺の人生をここでやり直すんだ。
思わず理性が吹っ飛ぶ。

だけど…
「け…結婚してくれ」
と言いたいのをグッと堪えて、俺は自分の運命を噛み締めていた。



ここはワールドブルー社の最上階、社長室。

いつものように窓の外を眺める男『蒼 広樹』


彼の目は、眼下に見える会社の目の前にある横断歩道、そこに座り込む二人の男女の姿を捉えていた。




<あとがき>
何とか後編でまとまりました?まとめました?(泣
うぅ〜自分の文章が拙くて、もう少し上手に表現したり書けるようになりたいなと痛感した次第です。
二人の出会い、いかがだったでしょうか( ;∀;)
ちょっといつもの感じとは違ってストーリーに切り込んだスタイルになったので、最後もそんな感じで締めてみました。
社長、ミステリアスに締めてくださってありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)))) (笑
慣れないことはするものじゃないかもしれませんが、なかなかいつもとテイストを変えるのも楽しかったです✨

さて、ここから二人はどうやって距離を縮めて
夫婦になるんでしょうね(*´꒳`*)

【今回のお話の関連記事】
✅このお話の前編はこちら

✅この世界に初めてきた時のことを思い出すシーンはこちらにも。自前の記事で申し訳ないのですが…

✅社長は朝だけでなく、時々窓の外をぼーっと眺めているようです。(多分)

#ワールドブルー物語
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#みんなで楽しむ
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ワールドブルー物語って何??って方はぜひ
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