【architecture】House SH|中村拓志
そもそもデザインとは、コーヒーカップそのものではなくコーヒーを淹れて飲むことの幸せや、車そのものではなくドライビングの喜びを対象とする仕事だ。経験をデザインするということ
柳宗理
プロダクトデザイナーの柳宗理氏の言葉である
柳宗理氏は暮らしをデザインすることを具現化した作品を数多く残したことで知られる
建築の設計においても、東日本大地震以降、特に求められるものが変わってきた
よく言われるのが『モノとしての建築』をデザインすることから、『コトをデザインする建築』にシフトしてきたと…
震災を通じて暮らしをいかに大切にするか、家族との繋がりなど、建築はカッコよければそれで良いというモノではなくなった
さらにコロナにより生活は一変した
これからの建築に求められるコトも変わってくるはずだ
『コト(=出来事)』をデザインすると言われて久しい
もう既に時代遅れの言葉かもしれないが、暮らしをデザインすることは建築にとって大切であると私は思う
安易に言葉だけが一人歩きしているような住宅メーカーの規格商品もあるが、一方で建築家からの優れた提案も見られる
私がずっと注目している建築家は中村拓志氏である
新国立競技場の設計で有名な隈研吾氏の元で修行をし独立した建築家である
以前私のnoteでも広島尾道のリボンチャペルという建築を紹介させてもらった
最近では『ZOZO TOWN』の本社の設計をしたことでも有名である
非常に丁寧な仕事とアイデア、精度の高い設計は師匠を凌ぐと言っても私は過言ではないと思っている
さてここでは中村拓志氏の実質的に独立後のデビュー作となった『House SH』という住宅を紹介したい
この住宅外から見ると妊婦さんのお腹のようにふくれている
住宅街にありながら、一見不思議な形をしているがそこまでのドヤ感は感じないところがイイ
そしてこの中はと言うとこうなっているのだ
ここではお子さんが寝そべったり、机のように使ったり、もちろんソファにもなる
家族の誰かといるのもイイ
ここにいるとなんだか楽しそうなことが起きそうである
そんな人の体に寄り添うような形を具現化している
そしてここでの暮らしを表すような形がそのまま外観にまで表現されているのだ
外から見るとボコッとした膨らみはなんだろう?というギモンがわく
それが中に入ってみると、『そういうことか!』という気づきに変わる
これは外からこの建築についての『伏線』をはっていると言える
ドラマやアニメではよく『伏線』をはっておいて、ここぞという時に『伏線』に立ち返る
するとスッキリ感というか、なるほどね!となることがある
まさしくこの『ボコっ』も伏線なのである
はじめの柳宗理氏の言葉に戻って考えてみると、建築は建築そのものではなくそこでの暮らしを楽しむコトにあると言えるだろう
建築で起こる『コト(=出来事)』をデザインしてみると面白い建築になりそうだと言うこと知ってもらえたらありがたいし、そういう視点で建築を体感してもらいたい!
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