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横断歩道と歩行者
横断歩道のことを、ブラジルでは
「faixa de pedestres【ファイシャ・ジ・ペデーストリス】 」
といいます。
一方、
ブラジル以外のポルトガル語、つまり欧州葡語では、
passadeira【パサデイラ】
といいます。
ブラジル葡語の「faixa de pedestres」の
「faixa」は「帯」、「pedestres」は「歩行者」
という意味です。
これであれば、ポルトガル人が聞いても、
「あ、ブラジル人か」
「ブラジル人は横断歩道のことを『歩行者帯』っていうのか」
と思う程度で済みます。
ところが、逆にブラジル人が
passadeira【パサデイラ】
という単語を聞くと、
「なんで、そこに『アイロンがけ専門のメイドさん』が出てくるの?」
「それとも、『ルームランナー』?!」
「いやいや、『キッチンマット』のことかも・・・?!」
と、わけがわからなくなってしまいます。>爆!
というのも、
「passadeira」は「PASSAR 動詞(=通る)」から派生したものなのですが、
この動詞は汎用性が高いこともあり、
いろいろな意味の単語に転用されているのです。
ちょっと昔だと、大半のブラジル人が
「passadeira」と聞くと、
「大きなお屋敷にいる大勢の使用人の中の
アイロンがけを専門としているメイドさん」
をイメージしたものです。
(私のような高齢者はとくにそうです。)
そして、その後
「ルームランナー」のことを
「passadeira de corrida 【パサデイラ・ジ・コヒーダ】」
(略して【パサデイラ】)、
「キッチンマット」のことを
「tapete passadeira【タペーチ・パサデイラ】」
(略して「パサデイラ」)
と呼ぶようになったのですが、
(※ ちなみに欧州葡語でもルームランナーやキッチンマットを
「パサデイラ」と言うことがあります。)
横断歩道については、もっと昔から
「faixa de pedestres【ファイシャ・ジ・ペデーストリス】 」
と呼んでいましたから、
それを変える理由もありませんし、
変えたりしたら、却って意味の異なる「パサデイラ」が
更に増えてしまうだけなので、
ブラジル人は、よもやポルトガルでは
横断歩道のことを「パサデイラ」と呼ぶなどとは
想像すらせず育つわけです。
そこへ突然
「あそこの『パサデイラ』を渡って…」
などと言われた日には、
それはそれは
「そんなの意味ブー!」と、
「脳内パニック」になってしまうのです。>爆!
*****
ところで、
ついでに「歩行者」も言い方が違います。
ブラジルで話される伯葡語では、「歩行者」のことは
「pedestre【ペデーストリ】」
という言い方しかありませんが、
ブラジル以外では
「pedestre【ペデーストリ】」 も通じはしますが、
より多く用いられるのは
「peão【ぺアゥン】」
(※ 複数:「peões【ぺオンィス】」)
という単語です。
というのも、
「pedestre」という言葉は、
欧州葡語では「立ち姿の像」などを描写する際の「立っている~」
という意味の形容詞として用いられることもあるためか、
「歩行者」という場合は圧倒的に
「peão」という単語を用いるのです。
(※ ちなみに伯葡語では「pedestre」という単語を
形容詞として用いることは滅多にありません)。
そして、この
「peão【ぺアゥン】/【ぺオンィス】」
という単語はブラジルでは…、
「工事現場などで働く肉体労働者」を意味します…。
つまり、
ポルトガル人や、アフリカポルトガル語圏の人が
「横断歩道上の歩行者」の話をしていると、
ブラジル人は、
「ルームランナーで肉体強化する労働者」
を想像してしてしまったりするわけです…。>爆!
ハァ~…、
なんたってブラジル葡語と欧州葡語は
こういうトンチンカンな話ばかりなんでしょうねぇ~…。
ネタにはなるけど、なんだかなぁ~…と思ってしまいます。>笑
というわけで、
本日もお読み頂き、誠にありがとうございました!
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※ 「どうしても同じ道は進めない伯葡語話者と欧州葡語話者」、否、
「分かれ道 ネコ」はこたつぶとんさんの作品です。