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Apelidoって?
今日ご紹介するのは「apelido」という単語です。
私がアフリカ葡語圏に行くようになって、
一番最初に出遭ったブラジルとの単語の違いによる
カルチャーショックだったかと思われます。
というのも、入国手続き用記入シートの一番上に
「nome (name)」、「apelido(surname)」って
書いてあったんです。
そう、「apelido (アプリ―ドゥ)」って、
「姓」、つまり「苗字」という意味なんです、
欧州葡語では。
ところが、ブラジルで育った私は、
何十年ものあいだ、
「apelido (アペリード)」とは
「あだ名」、つまり「ニックネーム」と言う意味だと
信じて生きてきたんです!
ブラジル以外のポルトガル語圏では
「ニックネーム」のことを
「alcunha (アウクーニャ)」
といいます。
「alcunha (アウクーニャ)」という単語は
ブラジルにも存在し、同じ「ニックネーム」という
意味なのですが、
見掛けるのは
せいぜい文学作品の中だけです。
一方の「苗字」はというと、
「sobrenome (ソブリノーミ)」
といいます。
「sobrenome (ソブルノーム)」を
ポルトガルの国語辞典で見ても、
これまた「苗字。apelidoに同じ」
と書いてあります。
でも、どこの欧州葡語圏へ行っても、
入国シートには
「nome (name)」、「apelido(surname)」って
書いてあるんです。
しかも、散々分かっているのに、
未だに入国シートを書く度に、
念のため
「『nome, sobrenome』、
『nome, apelido』の順だから
こっちが苗字ね」
と、
一瞬確認してから
記入している私がいます。
ちなみにブラジルには
「○○ é apelido」
という表現があります。
直訳すると、
「○○はあだ名だ」
ですが、
訳すときは、
「○○なんてものじゃない」
とします。
例文を示すと、
”Rico é apelido. Ele é milionário."
「Rico」は「rich」、つまり「金持ち」
「é」は「である」を意味する「ser動詞」の3人称単数現在形
「milionário」は「millionaire」、つまり「大金持ち」
つまり、
「彼は金持ちなんてもんじゃない、大金持ちだ」
という意味になります、
ブラジルでは。
恐らく、ブラジル以外のポルトガル語圏の人には
通じない文です。
*****
又、お気づきになった方もいらっしゃるかと思いますが、
単語の意味だけでなく、
読み方も違います。
「Apelido」は、
欧州葡語では「 アプリ―ドゥ」、
伯葡語では「アペリードゥ」
「Sobrenome」は
欧州葡語では「ソブルノーム」、
伯葡語では「ソブリノーミ」
です。
最近は、「ブラジル・ポルトガル語」
とか
「欧州ポルトガル語」
といった表現を使った本のタイトルが増えてきていますが、
昔は
一つの言語扱いで本が出されており、
ブラジルのポルトガル語しか知らなかった私は、
「えっ、この本、変なことが書いてある。
この著者、本当にポルトガル語が
分かるのかしら」
と、思ったこともありました。
ネットを見ていると、今でも
ブラジルの発音をカタカナにして
ポルトガルで見たものを紹介しているような
ケースも見掛けます。
*****
とーっても執拗に伯葡語と欧州葡語の違いを説いている
私ですが、
これが今私にできることだし、
やるべきことだと思っているので、
今後ともお付き合い頂ければ、幸いです。
本日もお読み頂き、ありがとうございました。
※「落語家の猫」はこたつぶとんさんの作品です。
Rico é apelido, ele é milionário