お葬式で泣けなかったこと

数年前に祖父が亡くなった。90を超えてほぼ老衰のような状態で大往生だった。
亡くなる数年前、当時大学2年生の私は大学祭でサークルの発表の本番を迎えようとしていたその時に祖父危篤の連絡が入った。
なんとか行かなくてはと事情を説明し、順番を繰り上げてもらい、急いで駆けつけた。
祖父は回復し、その後何度か危篤を繰り返した。その度に駆けつけた。
亡くなる直前に危篤の連絡があった。私は久々に会う友人と遊ぶ予定を入れていた。それをキャンセルし、駆けつけた。その日に亡くなった。

その時の正直な感想はこうだった。「今!?大事な本番あるのに。久々の友達との予定だったのに。何回も危篤なってるし大丈夫でしょ。」

行ってよかったとホッとした。
ホッの正体は「予定をキャンセルしておじいちゃんの危篤に駆けつける良い孫」を演じられたことだったと思う。
だからお葬式では全然泣けなかった。
「妻と子どもをお金以外の面で苦労させた」と散々幼い私に吹聴しておいて、こういう時は泣くんだへぇーくらいに思ってた。
帰宅して、なんで泣かないんだと母に叱られた。
じゃあなんで小さな頃から祖父の不倫話を叩き込んで、私を可愛がってくれていた祖父への思いを冷めさせたのかと問い詰めたかった。

祖母の時は頑張ってお葬式で泣いた。泣けたことの達成感が凄かった。
祖母のわがままに振り回されなくなって、母らようやく楽になるなぁと思ってしまった。(祖母にもめちゃくちゃ可愛がってもらっていたが、母との折り合いが悪く、幼い自分には愛情をまるごと受け止めきれなかった。)

亡くなる直前までいがみ合ったり、揉め事を起こしている我が家。
私は人が亡くなることへの悲しみの気持ちが非常に薄いと思う。
このテンションでうっかり世間話してドン引きされたことがあり、今後はこの気持ちはしまっておこうと思い、ここに綴る。