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【小説】隣の気になるお姉さんに乱〇パーティーに誘われた話【後編】
こちらの作品は後編です。
まだ読んでいない方は、前編から!
【小説】隣の気になるお姉さんに乱〇パーティーに誘われた話【前編】
最後に1階の大部屋に通されると、そこには既に10人程の男女がいた。簡単なケータリングにクーラーボックスまであり、飲食物が用意されている。
「あとは自由です。気になった人とお話ししたり遊んでもらって大丈夫ですが、トラブル防止のためにここで知り合った人と連絡先の交換は禁止です。それと、相手が拒んでいるのに付きまとったりはやめてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
目線を動かして丸山さんを探すと、部屋の奥にあるローテーブルの端にちょんと座って、両脇にいる2人の男性と話をしていた。頭の混乱を収めるためにも話しに行きたいが、少し入っていきにくい雰囲気だ。どうしようかなぁと部屋の入口あたりで尻込みしていると、後ろから肩をポンと叩かれた。
「や! さっきぶり!」
シャワールームで会ったショートカットの女性だった。シャワーから戻ってきたのだろうか。華やかな赤の下着に、ワイシャツを羽織っただけのラフすぎる格好だ。
「どうも……」
「誰か待ってるの?良かったら少し飲んで話そうよ」
「いや、特に待ってないです。そうしましょうか」
部屋の奥にいる丸山さんを目で追ったが、相変わらず目は合わなかった。案内してくれた人の「付きまとったりはやめてくださいね」という言葉が思い出される。ここのマナーはよくわからないが、丸山さんが僕を待っていなかったということは、僕も丸山さん以外と話した方がいいのだろうか。そう思うと少し寂しくなった。
「私はミカ。宜しく~」
「シュンです。宜しくお願いします」
僕たちは入口側のテーブルに隣り合って、用意してあったビールで乾杯した。
「こういう所、はじめて?」
「はい。まr…カオリさんに誘われまして。何もわかってないので緊張してます」
「へー、カオリさんが。私はハタチの頃からだから、もう5年位になるよ」
花巻に残った友人たちよ。東京の若者は進んでいるぞ。
僕とミカさんは、用意されたケータリングをつまみながらお互いについての雑談をした。ミカさんはお酒のペースが早く、もう2本目に手を付けている。
「ここがどういう所かは聞いてる?」
「乱交パーティーって聞きました」
「そ。でも、絶対セックスしなくちゃいけないわけでもないのよー。お話して気が合えばしてもいいよっていうだけ。その方が安心でしょ?」
「それはそうですね」
「女の子も色々だからね。すごく相手を選びたい人も、複数がやりたいって人もいるし」
「複数……」
先ほどの薄暗い部屋が脳裏に浮かぶ。背中にうっすらと汗をかいてきた。
「私は気が合いそうなら誰でもウェルカムなほう。シュンくんはどう?」
「正直、わからないです。考えたことなくて……。そういうことしたのも当時の彼女とだけで、高校卒業以来ないので」
「へぇ~」
ミカさんは意外そうに目を丸くしたあと、無言で少し考えてからニヤリと笑った。
「ねーね、それじゃあまず一丁、私としてみない?」
「え?そんな」
「嫌?」
「嫌とかじゃないですけど……」
丸山さんの顔が脳裏に浮かぶ。彼女は僕のことをどう思っていて、どうして僕をここに連れてきたのだろう。彼女に操を立てるわけではないが、引っかかるものはある。
一方で、僕にとって何もかもがアウェイなこの場で積極的に話しかけてくれる彼女に、有難さや親密さを感じ始めてもいた。きっとこの場では、彼女と「仲良くなって、そういうことをする」のは、誰にとっても何も問題ないことなのだろう。
「やっぱり違うなと思ったら、言ってくれればすぐにやめるからさ」
「なんかミカさんのが男らしいですね……。わかりました」
「よっしゃ! いこー!」
ヤケが半分、ミカさんならいいかが半分で、誘いを受けることにした。彼女は残った缶チューハイを飲み干すと、僕の手を取って2階へと上がっていった。
手を引いて連れてこられたのは、先ほど覗いた部屋の隣にある部屋で、こちらも2つあるダブルベッドにはまだ誰もいなかった。ミカさんがベッドに乗るなり、ポイポイとワイシャツや下着を脱ぎ捨てていくので面食らったが、僕もそれに合わせて服を脱いだ(パンツは悩んだが、少し恥ずかしかったので脱がなかった)
「じゃあ、よろしくね」
ミカさんがそういって、裸でベッドに女の子座りをしたまま両手を広げた。
「は、はい。お願いします。」
彼女のハグは、先ほどまでの調子からは意外なほどに優しかった。ミカさんの体は僕より暖かく、手を回した背中は少ししっとりとしていて、大きめの胸が当たる感触がある。心拍数は僕の方が早いようだ。
まだ頭が現実に追いつかないなか、首が細いなぁとか知らないシャンプーの香りがするなぁとか、五感からバラバラに入ってくる性的なイメージが僕の体を少しづつ熱くしていた。
縦長の猫目で僕の目を覗き込んでいたミカさんが、目を閉じて「ん」と言わんばかりに口を突き出してくる。さすがに僕でもこの意味はわかる。5年ぶりのキスは柔らかくて、かすかにビールの味がした。
舌や唇で僕の唇をついばんでいる間も、彼女の手は太腿を撫でている。硬くなっているものをみつけると「ふふん……♪」とご機嫌そうに鼻を鳴らした。猫のような人だ。広間に居たときは獲物を狩る猫。今は気を許した人間に甘える猫。僕も彼女の腰から内腿に手を降ろした。
その時、部屋のドアがそっと空いた。薄暗い部屋に差した光のほうへ反射的に顔を向けると、丸山さんと目が合った。彼女の一瞬開かれた目は「あっ、お取込み中ごめんね」と言っているように見えた。丸山さんが、先ほど話していた男性の1人と一緒に、隣のベッドへと入ってくる。
「(どうしたの?)」ミカさんが耳元に話しかけてくる。
「(いや、人が入ってきたのでびっくりしちゃって)」
「(カオリさんに誘われたって言ってたもんね。彼女とはしたことあるの?)」
「(いや、まさかそんな。隣に住んでるだけで)」
その隣人は、青色の下着姿で知らない男性とキスをしている。きっとミカさんに失礼なことはわかるが、どうしてもチラチラと見てしまう。いやでもこの状況を客観的に見て、僕が意識したりまして嫉妬するのは変じゃないか?考えがまとまらない。
「(……はーん。そっか。シュンくんはカオリさんに好かれてるんだね)」
「(そうなんですか!?)」
「(そうだよ。だって……あっ)」
この状況はキャパオーバーだったのだろう。先ほどまで目一杯硬くなっていた僕のものは、すっかり小さくなっていた。
「シュンってしちゃった。シュンくんのシュンくんがシュンって……プッ……あはは!!」
ミカさんがお腹を抱えて笑い転げだした。
僕はもう限界だ。誰か助けてくれ。
「あの……」
「あーおかしかった。ごめんね。一回戻って飲み直そうか」
「あ、はい……そうですね。なんかごめんなさい」
「そんな気にすることないよー。ありがとうっ」
裸のミカさんがバンバンと僕の肩を叩いた後、たっぷり二呼吸ぶんほどの優しいハグをしてくれた。きっとこのハグがミカさんにとって、親密な時間の始まりと終わりを区切る合図なのだろう。ミカさんのこともまだ全然わからないが、彼女は決して単なる放埓ではなく、彼女なりの確固としたルールがあるように思えてきた。
「おっ。おかえりー」
広間に戻ると、先ほど二人で座っていたテーブルにコウジさんがいた
「シュンくん早速だね。楽しめてる? ミカちゃんも楽しめた?」
「うん、楽しかったですよー」
「あっはい、ありがとうございます。色々驚いてますが楽しいです」
ミカさんは二階での出来事には触れず、ニコニコと次のお酒をあけている。気を遣ってくれているのかもしれないし、本心かもしれない。この人の思惑を読もうとしても無駄なことは、非常に短いが密度の高い付き合いの中でわかってきた。少し吹っ切れてきた僕は、聞きたかったことを聞くことにした。
「あの、カオリさんって、どうやってここに来たんですか?」
「あー、去年カオリちゃんの彼氏が連れてきたんだけどね。そいつがひでーやつだったんだよ。何回もトラブルを起こしたんで出禁にしてさ。カオリちゃんともすぐ別れたんだけど、カオリちゃんに聞いたらここには来続けたいっていうから、声かけてるんだ」
「そうだったんですね……」
「やっぱりカオリさんのことが気になるのー?」
「ここ的にはそういうのNGなのかもしれないですけど、正直気になります。カオリさんに誘われて何もわからず来たんですけど、カオリさんは他の人と過ごしているし、なんで誘ってくれたのかもよくわからなくて」
「あー……。多分だけどね、シュン君は結構カオリちゃんに好かれてるよ?」
「それミカさんにも言われたんですけど、どうしてそう思うんですか?」
「カオリちゃん、男嫌いって訳じゃないんだけど、彼氏といる頃から自分で何か主張したり誘ってるの見たことないんだよね。誘われて嫌じゃなかったらいいよって感じで」
「初めて見る特別扱いだよ。で、多分なんだけど、『シュン君男の子だし、こういうの好きかなぁ』っていう善意で誘ったんじゃないかな」
(「違うの、乱交パーティー。興味あるかなって」)
言ってた……。
「じゃあ、僕と話しに来ないのは」
「『楽しむのを私が邪魔したら悪いかな』って思ってるんじゃない?あの子私達にも遠慮しぃだから」
不器用かよ…………。
「ちょっと色々パンクしそうなので、少し待ってもらっていいですか」
「いいよいいよ。切っ掛けはどうあれ、俺はこれからもシュン君に来て欲しいかな」
「そうですか?」
「うん。こんなイベントやってると色んな人を見るんだけどね。ヤりたいだけの奴もいれば、誰かに入れ込みすぎて迷惑かける奴もいる。自分しか見えてないんだね。シュン君は人が何を考えてるのかもよく見てるし、理解できなくても否定したりしない。そういう子とは仲良くやりたいよ」
「いっぱいいっぱいなのにね。偉いぞ」
ミカさんが股間を撫でまわしてくる。
先刻はいっぱいいっぱいですみませんでした。
そうこうしているうちに、先ほど丸山さんと部屋に入ってきた男性が、裸にバスタオルを巻いた姿で広間に戻ってきた。
「お、あいつ戻ってきたから、カオリちゃんももう来るんじゃん?」
「じゃあ、僕から話してみます。なんだか色々楽になりました。ありがとうございます」
「大丈夫そうだったら私ともリベンジしてね。夜までいるから」
隣の丸山さんは、ちょっと変だけど魅力的な人だ。僕は彼女のことが気になっていた。そして今日の3時間ほどで、すごく変ですごく気になる人に格上げされた。
彼女は自分から多くを語らないが、僕からもっと話しかければきっと、もっと変な所や魅力的な所が出てくるのだろう。今日会った人達も、短い裸の付き合いで色々なことを伝えてくれた。
視界の片隅に、見慣れた癖っ毛としゃんとした背中が見えた。
お父さんお母さん。そして地元の友人達へ。
まだまだそちらには帰れそうにありません。
ライター:かねどー【寄稿作品】
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