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相撲基礎練習法 第9回 すり足3
前回:相撲基礎練習法 第8回 すり足2
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1. はじめに
今回は、速いすり足を対象として、よく見られる問題点をいくつか紹介した上で、それらを改善していくための方法論について整理していきたいと思います。
2. 速いすり足のチェックポイント
本節では、速いすり足においてよく見られる問題のある動きについて動画を交えて確認し、さらにその原因についても考察したいと思います。
速いすり足においてよく見られる問題の一つとして、一歩一歩のストライドが大きくなりすぎてしまうということがあります。ストライドが大きすぎると、運び足を接地した時の足の位置が膝よりも前に出てしまいやすくなります。遅いすり足についても同様の問題を指摘しましたが、こうなってしまうと後ろ足で地面を蹴ることで前進する必要が生じてしまいます。そして、結果としてますますストライドが大きくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
また、左右の足幅が狭くなりすぎてしまうというものよく見られる問題です。足幅が狭くなってしまうと、腰高で地面を滑るような足の運び方になってしまい、実際の相撲におけるステップワークとは全く違ったものになってしまいます。
さらに、上半身が固まってしまうということも問題となります。上半身の動きがなくなってしまうと、下半身との協調的な連動が失われ、全身の一体性が失われてしまいます。
ここまで挙げた三つの問題には、共通の根本的な原因があると私は考えています。それは、「前に速く進むこと」にこだわりすぎているということです。前進速度が速すぎると、転倒を防ぐためにストライドを大きくするか、足幅を狭くした上で脚の回転を速める必要があります。また、スピードが速くなりすぎてしまうと、上半身と下半身を協調的に動かすのが難しくなり、結果として上半身を固めたまま動くということになってしまいやすいです。
そこで、速いすり足を行う際の目的意識を、「前に速く進むこと」から「動きの質を維持したまま可能な限りテンポアップすること」へと転換すると良いです。具体的には、前方向に単調に進むのではなく、重心を少しだけジグザグに移動させる意識を持つようにすると良いです。そうすることで、ストライドが大きくなりすぎたり足の左右幅が狭くなりすぎたりしてしまうことを防ぐだけでなく、上半身と下半身を協調的に連動させやすくもなります。
ただし、この場合、絶対的な前進速度は遅くなります。前に速く進むことが速いすり足の目標だという考えにとらわれてしまうと、このような取り組み方にたどり着くことができなくなってしまいます。だからこそ、前に速く進むことへのこだわりを捨てる必要があります。
もう一つ、速いすり足において難しいこととして、仕切りから動き出す際に姿勢が崩れてしまいやすいということが挙げられます。具体的には、肩が上がるなどの上半身中心の崩れ方と、膝が伸びて身体が前後に間延びしてしまうなどの下半身中心の崩れ方があります。
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