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相撲基礎練習法 第8回 すり足2

前回:相撲基礎練習法 第7回 すり足1
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1. はじめに

 前回、すり足の稽古を通じて習得すべき重要な技術として、前脚の股関節を主体とした前進メカニズムと左右方向への重心移動を利用した接地位置のコントロールという二つを取り上げました。

今回は、遅いすり足を対象に、これらの技術が身についている場合と身についていない場合を見分けるためのポイントを整理した上で、習得・改善のための練習方法について整理していきます。

2. 遅いすり足のチェックポイント

 まずは、遅いすり足の動きを評価する際のポイントについて動画を交えながら整理していきます。なおこの点については、突きつめていくとかなり細かい話になってしまうので、今回は、遅いすり足の良し悪しを評価する際に押さえておきたい大まかなポイントのみを取り上げたいと思います。

 最初に、前回一つ目のポイントとして挙げた、前脚の股関節を開くことで骨盤を回転させ、それによって後ろ脚を前方に引き寄せるという動きができている場合とできていない場合を動画で比較してみましょう。

前脚の股関節を開くのではなく閉じるような動きになってしまう理由としては、そもそもこのような身体操作の仕方を知らないということが一つにはあります。ただ、もう少し込み入った事情から前脚股関節を閉じながら使う動きが染みついてしまっている場合もあると私は考えています。

典型的なパターンとしては、運び足が接地する瞬間に、足が膝よりも前に出てしまうというものがあります。接地の瞬間には足が膝の真下あたりに位置していることが望ましいのですが、足が膝よりも前に出てしまうと、その脚で地面を踏みしめても前方への推進力を発生させることができません。その結果、後ろ脚で地面を蹴らざるを得なくなり、前脚の股関節は閉じる方向に動いてしまいます。

 次に、二つ目のポイントとして挙げた、接地位置をコントロールするための左右方向の重心移動ができている場合とできていない場合を見分け方について紹介します。

左右方向の重心移動ができているかどうかを判断するためには、後ろから見たときの腰の動きに注目するのが分かりやすいです。左右方向への重心移動が不十分な場合には、腰の位置がほとんど動きません。一方で、左右方向への重心移動が適切に行われている場合、腰の位置が左右に滑らかに移動するのが観察されます。

前回、左右方向への重心移動を起こすための手段の一つとして、背骨を左右にわずかに傾ける(側屈させる)ということを紹介しました。この動きができているかどうかをチェックするには、肩の上下動の有無を見るのが良いです。

背骨を上手く動かせていない場合は、前後方向から見たときに両肩の高さが常に同じままになります。一方で、背骨を上手に使って左右方向の重心移動を行えている場合は、左右の肩が交互に少し下がるような動きが観察されます。

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