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相撲基礎練習法 第6回 四股3

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相撲基礎練習法 第5回 四股2


1. 挙上

 挙上局面においてよく見られる問題としては、以下の2つがあります。

①脚が挙がるのよりも先に支え脚側に胴体(上半身)が傾いてしまう
②挙げ脚の膝が前を向いてしまう

 まずは、①の問題について考えてみましょう。私は、挙げ脚を引き上げていく時には、胴体と太ももの位置関係が全動作局面を通じてほとんど変わらないまま維持されるのが良いと考えています。脚を引き上げていく時に胴体が先に傾いてしまうということは、胴体と太ももの位置関係が離地前から変化してしまっていることを意味するため、こうした動作は修正されるべきだと考えています。

脚が挙がるよりも早く胴体が傾いていってしまうという現象は、挙げ脚側の体幹部の筋肉を上手く使えていないことによって起こると考えられます。そして、挙げ脚側の体幹部の筋肉をうまく使えないということは、実際の相撲においては、後ろ脚を素早く前方に引きつけてくることができないということと関係しています。後ろ脚の引きつけが遅れるということは、次に出す一歩が遅れてしまうということであり、攻めを継続できなくなってしまったり、引き技によって前に落ちてしまったりするという問題を生じさせます。

 ②の挙げ脚の膝が前を向いてしまうというのは、言い換えれば、挙げ脚の股関節が閉じて(内旋して)しまっているということを意味します。これは、股関節を開いた(外旋した)ままに保っておくためのお尻の(主に横側の)筋肉の収縮が緩んでしまっていることによって生じる現象です。特に、挙げ足を地面から離す瞬間に、お尻の筋肉の力が抜けてしまいやすいです。

挙げ脚の股関節が離地中に閉じてしまうと、着地時にも股関節の閉じた、腰が引けた状態になってしまいやすいです。そうすると、着地後に股関節をしっかりと開いた静止姿勢をとり直すという余計な動作が必要になるか、股関節が閉じた良くない姿勢のまま次の四股踏みに移行するかのどちらかになってしまいます。

そして、こうした問題は、実際の相撲との関係では、後ろ脚を前に引きつけてきて接地するときに、安定したバランスで地面を捉えることができなくなってしまうということにつながります。接地した瞬間のバランスが安定していなければ、地面を強く踏みしめることができず、押し合いの攻防で不利になってしまう可能性が高くなります。

 前回、離地局面について考察した際に、離地前に挙げ足を支え脚の方に引きつけるような動作を加えることによって、挙げ脚を引き上げるために動員されるべき体幹部の筋肉を意識しやすくなるということをお話ししました。挙上局面の動きを修正する際に私が有効だと考えているのは、この性質を利用して、体幹部の筋肉を収縮させていく感覚を習得した上で、徐々にこの動作による補助を小さくしていくというものです。

また、挙げ足を支え脚側に引き寄せることによって、離地瞬間にも挙げ脚側のお尻の筋肉の収縮を維持し股関節を開いた状態を保つということも行いやすくなります。そのため、同じ訓練方法を用いて、挙げ脚の膝が前を向かないように意識しながら四股を踏むことによって、②の問題も徐々に改善していくことが期待できます。

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