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相撲基礎練習法 第12回 上半身の動き作り3
前回:相撲基礎練習法 第11回 上半身の動き作り2
相撲基礎練習法 記事一覧
1. はじめに
前々回、相撲における押しが一層難しくなる要素として、相手が下がった場合にはそれを追い、下がらなかった場合にはその場でバランスを崩さずに圧力をかけ続けるという切り替えの難しさについて触れました。このような課題に対応するためには、前回取り上げたような上半身各部位の細かな操作だけでなく、上半身と下半身を全体として協調的に連動させることが求められます。今回は、具体的にどのような連動が必要で、それを効率的に習得するためにどのような練習を行うべきかを整理したいと思います。
取り上げる練習方法は、壁押し、腕立て伏せ、鉄砲の3つです。壁押しは、私が最も重要だと考える練習方法であり、相撲で相手を押す際に必要となる身体操作技術を満遍なく訓練することができます。一方、腕立て伏せや鉄砲にも、それぞれ独自の技術改善効果があります。したがって、これらを組み合わせることで、より効果的なトレーニングが可能となります。
腕立て伏せや鉄砲については、おおよそどういうものであるか理解している方が多いと思います。一方、「壁押し」という用語は私が独自に使っているものです。鉄砲も壁を押す動作と言えるため、両者の違いが良く分からなくなってしまいそうです。そこで、壁押しと鉄砲を区別する私なりの基準をお伝えしたいと思います。
私は、壁や柱などを後ろに身体を戻さずに押す動作を目的とした練習を「壁押し」と呼び、これを鉄砲とは区別しています。一方で、身体を後ろに戻しながら、上半身と下半身を連動させて壁や柱を押す動作を含むものを「鉄砲」と呼んでいます。
なお、腕立て伏せについては、地面を腕で支える形態の運動全般を指すものとします。このような定義をしているのは、体幹の筋肉を鍛えるプランクという種目に近い動きをする練習も、腕立て伏せについてまとめた動画の中で、変則的な実施方法として紹介しているためです。
2. バランスを崩さずに脚の踏み換えを行うために必要なこと
両脚が地面についている状態と片脚立ちでの押しには大きな違いがあります。片脚立ちでは、両手で押す力を左右均等にしてしまうと、バランスを崩しやすくなります。
両手両足で押している状態から片足を地面から離すと、腰が回転するように、あるいは浮かせた足側に腰が流れるようにしてバランスが崩れてしまいます。一方で、右手と左足のように対角線上の手足を一緒に離すと、腰のぶれが抑えられ、バランスが安定します。そして、この状態から離していた手を壁に戻して押そうとすると、再び腰が不安定になりバランスが崩れてしまいます。
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