文化事業助成金申請をしてみた話
なぜ助成金申請したのか?
初めて個人で舞台を作ろうとしたとき、ある人から企画書を書いてご覧と言われた。
企画の意味さえわからない。後援申請をするといいというアドバイスももらった。後援も初めて聞く言葉だ。後援申請はとても簡単だった。フォーマットが用意されているので書き込めば申請が通る。それで気づいた。これは企画書作りの練習にうってつけだ!
後援申請に慣れてくるともっと厳しく審査して欲しくなった。適当に書いてあっても後援申請は通ってしまう。自分が書いたものが説得力があるのか試してみたくなった。
そこで市の文化助成金申請を思いついた。企業の文化助成金も考えたが浜松市の文化財団に自分の存在を知ってもらうことも目的の一つとして考えてやってみることにした。
目的は企画書作りのノウハウを学ぶこと、わたしという存在とその考えていることを地域の文化事業に関わる人に知ってもらうことだった。
助成金申請でわかったこと
驚いたことに助成金申請は通ってしまった。2回目には少し金額の大きいものにも挑戦してみたが、これも通ったので、試しに地元の信用金庫の文化助成金にも挑戦したがこれも通った。
ひと通りやってみてやめることにした。得たものが多かったので書いておく事にする。
まず助成金申請は企画書作りの練習になる。学んでいるくらいなら実地で体験した方が早い。自分の場合は企画書作りが楽しんで書けた。妄想家は夢を膨らませて、未来を語るのが得意だ。だから申請が通りやすいのだと思う。
ここからはデメリット。助成金はあてにしやすい。助成金ありきで企画も書くから毎年継続してどこかからもらおうとすると首を絞めていく。自転車操業みたいになって何のための公演なのかわからない。
さらに対外的な見栄えや意義を優先するからどうしても教育的で品行方正なものになっていく。常識を越えて思い切ったことをすることは出来なくなっていくのだ。
実務的なことでいうと助成金はほとんどが後払いである。つまり、わたしのようにプール資金のない駆け出しは赤字に一端ならないといけない。裕福ならそもそも助成金申請する必要はない。実行しなかったら返金をさせることにして、まずは前払いがスタートアップ支援は基本ではないかと思っている。
わたしが助成金申請をやめた大きな理由は、主催者には一銭も入らないことだ。わたしは文字通り一人で創ったので、企画,演出、会計、広報,事務,出演,全てが自前だった。共演者の送迎も、楽器の運搬もやったのだが、それは経費に入らない。出演料も企画料も出ない。
この解決策を実は知っている。後援会や実行委員会を作り、信頼できる人を会長に据えればいいのだ。そこを主催にすれば自分は出演料や企画料を受け取ることができる。
わかっていてなぜしないかと言えば、制度がおかしいと思うからだ。制度に合わせるのではなくて制度が変わっていくべきだと思う。もちろんそのことは財団の方に伝えたし、現時点での変更は難しいことも伝えて下さった。
文句を言いながら助成金をあてにして舞台を作り続ける事がいかにシンドイかは見てきているので、わたしは潔く後進に道を譲ろうと思う。助成金が決まると舞台を作らざるを得ないし、ある程度成果を上げる責任が生まれたという意味で非常に有意義な経験だったし、文化財団との交流も生まれたしで感謝している。
実務的な面で言うと、あらゆるフォーマットが整い、手順が決まっているのはありがたかった。ただ記入していくだけで決算書が出来上がるプログラムをタダで使えるのだ。
一度は経験する価値がある。縋りついて生きない方がクリエイティブは保たれる。そう感じている。