#12 心を満タンにしてくれる大切な仲間 高知のミョウガ農家「ひさし」
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した、洋服をはじめとした道具にまつわるアレコレを中心に "モノ" にまつわる物語を書き綴る日記『僕の洋服物語』のスピンオフマガジン。
これまで20年以上、洋服というフィルターを通して、多くの人から数えきれない学びをもらっている。私は "人" が大好きだ。
これは、私の人生において忘れられない "ヒト" との記憶...読んだあなたが、人生の素晴らしさを再確認し、自分の周りにいる人のことが今よりもっと好きになれる。
そんなきっかけになってくれたら嬉しい。
【高知のミョウガ農家 ひさし】
彼、ひさしは私が高校時代に働かせてもらっていた地元のガソリンスタンドで出会った。私より一つ年上でほぼ毎日出勤していた社員さんである。
その頃から洋服バカだった私とは正反対で堅実でしっかりものだが堅物でもない。とにかく優しい。人の価値観を否定するようなことはせず、新人バイトの私に手取り足取り色々と教えてくれるうちに年も近かったこともあり徐々に仲良くなった。
いつしか先輩、後輩というより古くからの友人のような関係に。
毎日のように私の家にきて夜中までよくわからない話を延々と繰り返していたように思う。
その頃の私も相当な馬鹿者だったと自覚はしているが、ひさしは時に兄のように私を叱ってくれたり一緒になってはしゃいだりして、2年ほど経った頃だろうか、ひさしが地元の高知へ帰ることになった。
ここまで短期間で密度の濃い日々を送っていた私にとっては、かなり寂しいことだったが仕方ない…私はひさしが高知へ行く前日、お気に入りのリバーシブルのスカジャンを彼にプレゼントした。
そのスカジャンは私がバイト代を貯めて購入した東洋エンタープライズのもので表は戦艦、裏は龍が刺繍されたものだった。そこまで洋服に興味がなかったひさしが唯一欲しがっていたジャケットでもある。
そこから数年は連絡を取り合ってはいたのだが、お互い忙しくなり25歳から30歳ごろは全く連絡をとっていなかった。
私が31歳になり店を始めてしばらくたった頃、今でもはっきり覚えているが、ホームページからの注文が入り詳細を見て驚いた。
ひさしからの注文だったのだ。驚いてすぐに電話したのを覚えている。
「久しぶり!!注文くれたのひさしよね?」
「ずっと見てたよ。30歳を越えたら昌弘の店で服を買おうって決めてたから。」
ずっと見てくれていたことを知るだけで泣きそうになった。高校生の頃から
「自分は洋服屋になって将来自分でお店を作る」というのはひさしにも耳がタコになるぐらい話していた。
よく考えればひさしの実家のことは聞いたことがなかったが、あなたも、
高知くろしおの「ミョウガ」といえば知っている人も多いだろう。
高知くろしお地方は日本のミョウガの8割〜9割を生産する産地である。ひさしの実家は代々高知でミョウガを作る大農家さんだった。自分が代表となりミョウガ農家として一人前になるまで必死に頑張ってきたのだろう。
いわば、私が洋服屋に勤めて下積みをしている間、彼もまた下積みを続けていたのかもしれない。私からセールスの連絡などしないが、数年前から始めたオリジナルブランドも全商品を購入してくれている。
その度に「絶対に裏切らない」という信念のようなものが心の底から湧き上がってくる。農家の家に育った自分だからこそわかる。資材や肥料費が年々高騰しているなかでひさしだってきっと必死に頑張っているのだから…
彼は今も昔も私の心を満タンにしてくれる。
だからこそ私ができることは一つだけ。心を満たせる洋服をお返ししなければいけない。
ガソリン臭いユニフォームを着て夜中に熱く語っていたあの頃のように「洋服バカ」を貫き通すこと。それは支えてくれる仲間に私ができるせめてもの誓いである。
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