[続.洋服物語] ルールがない時代だからこそ覚えておくべきこと
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。
自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。
これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。
読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。
:Episode.22
「フランクリーダー ブラウンミックスウールカットアウェイジャケット」
今回はドイツのフランクリーダーよりお気に入りのジャケットを紹介する。2年ほど前にリリースされたもので独特デザインが目を引く一着である。
前裾を大きく切り落とした(カッタウェイ)スタイルと呼ばれるシルエット。モーニングコートなどが代表的で、アメリカでモーニングコートをカッタウェイと呼ぶすることが多いのは、もともとフロック・コートの前裾を斜めに大きくカッタウェイしていることに由来している。
背面はブラックとブルーを掛け合わせたような色で切り替えられたパネル仕様。一般的には「遊び心が効いたデザイン」ということになるのだろうが、デザイナーの特徴を考えたら、至って真面目にいつも通りフランクリーダーらしい洋服を作ったという言い方がしっくりくる。
ミックスウールと呼ばれる様々な色のウール糸を編み込んだジャケットは軽いうえに薄手に仕上げられている。裏地もついていないため防寒性はあまりないが、春、秋などの暑くもなく寒くもない季節には非常に重宝している。
「生地の魔術師」などと呼ばれたりすることもあるフランクリーダーらしい生地使いは見れば見るほど引き込まれる。
ラペルはついているのだが下襟がかなり小さく裏地もない。
生地の風合いも相まって普段使いで "ジャケットっぽい上着" としてラフにガシガシ使えながらもどこか品格をもたらしてくれるのがこのジャケットの最大の魅力である。
ついつい手に取ってしまう良い洋服というのは、着心地、見た目に加えて、着た人を今よりカッコよく見せてくれる懐の深さを必ず兼ね備えていることをこのジャケットを眺めながら改めて考えさせられる。
時代とともに普段着における洋服のルールがなく、もはやなんでもあり現代。既製品の普段着を販売している私ですら違和感を感じることも度々ある。
先日、徳島の知事選挙があり、新知事が当選の喜びを伝える映像が徳島のローカルテレビで流れていた。カジュアルなジャケットにパンツ、白のTシャツでこれからの徳島について話をしているその姿を見て、個人的には正直ものすごくがっかりした。
県民に寄り添った、等身大の姿を見せるという意図があったのだろうか?
洋服におけるルールがなくなり自由な表現ができるのはある意味では好ましいことだが、洋服それぞれが長年培ってきた人に与える印象というのは確実に存在している。
選挙活動でたくさんの人が動いたその結果を県民に伝えるテレビの撮影にラフすぎる装いというのは、頑張って動いてくれた人や、投票した有権者たちに違和感を与えるのではないだろうか…(あくまで個人的な感想です)
新知事にビシッとスーツを着てほしかったと言っているのではなく、もう少し洋服が人に与えるチカラを理解してほしい。そんなことを思いながらあの映像を見た人間は極めて少数かもしれない。下手したら私だけかもしれないが、そこら辺をうまくコントロールできる人とそうじゃない人で必ず差は生まれる。
洋服というのは自分をステージアップしてくれる素晴らしい道具でもあるが、逆に下げてしまう場合も多々あることぐらいは、現代、未来においても頭の隅に入れておくべきだと思う。
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