洋服を好きになるのもほどほどに/S&S OPEN TALK #23
SLOW&STEADY ではオープン直後から、お客様からの相談窓口として、LINE@を利用しています。 その内容は、商品の在庫状況の確認から始まり、商品ご購入後のアフターケアに至るまで多種多様ですが、そんな中「これは多くの方も同じようなお悩みをお持ちのはず」と感じるようなご質問も少なくありません。さらに、そういったご質問ほど短文では返しづらいのが正直なところで、そこでこの度、そんな魅力的なご質問の数々をピックアップさせていただき、ここnoteにてマガジンという形で回答させていただく、という試みを開始いたします。
名付けて『OPEN TALK』今回はこんなメッセージからです。
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「洋服を好きになるのもほどほどに」
slow&steadyお客さんが皆さんおしゃれなのですが、自分も他の方と差を付けたい!と服を着ると、毎回変な感じに奇抜になってしまいますw なにがいけないのか全くわからず、質問させていただきました。(福井県/男性/Iwata)
上手にコーディネートを組む上で全体のバランスを考えるということは大切なことだと思っています。しかし、単に全体のバランスと言えども、色の組み合わせ、シルエット、さらには生地のバランス、上下で同じ生地感だとベタッとした印象になる、など様々な要素があると思います。どれに重きを置くかは人それぞれだとは思うのですが、コーディネート組む上で最も重要視すべき点をご教授ください。
(埼玉県/男性/坂東)
いつもありがとうございます。今回は、いただいた2つのご質問について、僕なりにお答えできればと思います。結論から言うと、僕が洋服をうまく着こなす上で、何より大切にしていることは、「今日は、どんなイメージで洋服を着たいのか?」それを頭に思い描くことです。
毎日が同じ気分で、同じ体調の人などいません。けれど、その日の気分・体調を考慮しながら洋服を選ぶ、という人は意外と少ないんです。
外の気温は気にするのに、自身の気分はあまり考慮しない。これって思えばとても不自然ですよね。
洋服の組み合わせばかりに目がいってしまいがちな「コーディネート」ですが、それを着ている人の内面から醸し出されるものが、じつは全体の装いに大きな差を生みます。
結婚式の花嫁を例に挙げます。どんな花嫁も、結婚式当日のテーマは「その日、誰よりも美しいヒロイン」、だからこそ結婚式の花嫁は、身につけた純白のドレス以上に、どなたも美しく輝いて見えるのです。
日常でのテーマも同じです。大好きな俳優や、映画・小説の主人公でもいいでしょう。その日自分は洋服でどんな自分になりたいのか?それを決めてから、クローゼットに足を運ぶと、洋服選びはとてもスムーズになります。
と、こうやって文章にすると非常に面倒くさい作業のように感じますが、僕は、これを運動を始める前のストレッチや深呼吸のようなものだと考えています。よければぜひ、お試しください。
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…と、いつものように僕なりの回答を書き進めたところで、ここらで「いやいや、もう少し洋服屋らしい、具体的なテクニックを教えてくれ」という声が聞こえてきそうです(笑)
そこで、とても基本的なことばかりにはなってしまいますが、洋服屋らしい(笑)いくつかの助言も3つほど、一緒にご紹介させていただきます。
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1. 全体のシルエットをつくる
一にも二にもバランスを整えることが最優先です。まず洋服の素材・色・生地といったディテールは置いて、全体のシルエットを一番に決めると、洋服選びが楽になります。
例えば、主にトップスで最近よく聞く「オーバーサイズ」と呼ばれるアイテム。ご察しの通り、オーバーサイズに合わせるボトムスは、細身あるいはレングスの短いものを選びます。間違って、フルレングスのダボついたパンツを選べば、ただただサイズを間違ってしまった鈍臭いコーディネートになってしまいます。
一方で、ショートブルゾンを着る場合には、ややワイドなボトムスを選ぶなど、洋服のシルエットには、いくつかの基本が必ず存在します。
ここで、上下を繋ぐインナーのサイズ感や、そのほか言い出すとキリがないほどに重要なことはありますが、話がややこしくなるので、それらはまたの機会としますが、要は、上に着るものの「長さ(縦)」と「身幅(横)」に合わせて、下に履くものをまず選びましょう。いまいち分からない、という方は、8:2を意識しながら、横より縦を、重視するのがコツです。
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2. 色、柄の組み合わせを考える
奇抜な色や柄を選ぶ上級者やチャレンジャーも稀におりますが、20年以上、洋服を販売してきて「この方、色の組み合わせが変だな」と思ったことは、100人いて1人か2人。いや、もっと少ないかもしれません。
それほどに、僕含め、ほとんどの方が「無難な色」の「無地」を選びますし、巷にある洋服のほとんどもそうです(当店のラインナップにも、難解な色や柄物はあまりありません)ので、ここでは大きなミスはない気がします。
が、アドバイスがあるとすれば、色で迷った時には「原色」「中間色」「無彩色」を意識して配色するのがコツです。ここで食卓をイメージします。
原色とは「スパイス」であり、効果的に使うと料理はより際立ちますが、使いすぎると、食べれたモノではありません。
中間色とは「野菜」でしょうか。どれだけ摂取してもそこまで問題ありませんが、ただそればかりだと、どこか物足りないですよね。
無彩色とは「水」のようなもの。以前書いた「黒を着る理由」にも通じますが、所詮は水、食事(コーディネート)をあくまでリセットするものだとお考えください。
これを色味ではなくて配色に重きを置くと「ベース・アソート・アクセント」と言い換えられます。それぞれ「70%・25%・5%」が理想とされますが、スーツ姿がまさにそうです。「スーツ上下・シャツ・ネクタイ(他)」と、多くの場合この配分のため、どんな方でもサマに見えるのです。
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3. 生地の相性
そして最後に、生地について。ここまで考えが及ぶようになれば、それは中級〜上級者の証。コットン、リネン、ウール、シルク、ナイロン、ポリエステルと、コーディネートをさらに浅く深くもするのが、生地であり素材です。素材次第で、同じバランス・色だとしても、素材の組み合わせで、上品にもカジュアルにも、全体のイメージは大きく変わります。
例えばコットン。
起源を紐解くと、意外にもその歴史は浅く、人類が使い始めて1万年以上と言われるリネンやウールなどに比べ、コットンはまだ4000年ほど。にも関わらず、出回る洋服のほぼ6~7割のシェアを占めるほどに最もポピュラーな素材です。
その理由は、やはり扱いやすさ。洗いにも強くシワになりづらく、加工がしやすい。臨機応変な素材のため、様々な洋服に広く用いられています。
一方のリネンやウールは、高級スーツなどにも使われる素材。シワや縮みなどもあり、ややデリケートな素材ですが、クラシカルなヨーロッパの洋服などは、リネンやウールを多様しますし、着用した際のイメージも、コットンに比べ、どことなく上品なイメージが漂います。
と、素材の特性を知るだけでも、コーディネートを組むヒントになりますし、メリハリの効いた素材の組み合わせを考えることこそ、洋服好きの醍醐味と言えます。
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以上が、洋服屋として、基本的にお伝えする3原則です。
これらのどの言葉からでも派生して、これの何倍も語れるほどには、洋服とは奥深く、また、コーディネートを思案することは本当に楽しい作業です。が、ひとたび迷い込むと(特に3つ目)2度とは帰ってはこれない洋服の深淵へと足を引きづりこまれます(笑)
洋服を好きになるのもほどほどに…。これが、洋服の深淵を彷徨って20年になる、僕からの本当の助言です(いや、本当に)。
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今週は、以上です。
ここでは、あくまで僕の答えられる範囲内にはなりますが、このマガジンを使って、皆様からお寄せいただく「洋服に関するご質問やお悩み」を、ざっくばらんにご紹介しております。
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