洋服屋の未来について/S&S OPEN TALK #31
SLOW&STEADY ではオープン直後から、お客様からの相談窓口として、LINE@を利用しています。 その内容は、商品の在庫状況の確認から始まり、商品ご購入後のアフターケアに至るまで多種多様ですが、そんな中「これは多くの方も同じようなお悩みをお持ちのはず」と感じるようなご質問も少なくありません。さらに、そういったご質問ほど短文では返しづらいのが正直なところで、そこでこの度、そんな魅力的なご質問の数々をピックアップさせていただき、ここnoteにてマガジンという形で回答させていただく、という試みを開始いたします。
名付けて『OPEN TALK』今週はこんなメッセージから。
「洋服屋の未来について」
たまたまインスタグラムのストーリーで拝見し、これならバレないと書かせていただきます(そちらは店名も公表している以上もちろん言える範囲で構いません)自分もオーナーさんと全く同じ立場でセレクトショップ経営しています。開業し7年。苦しい業態というのはわかったうえで続けてきましたが、コロナに直面、そろそろ心が折れそうです。大きな売り上げを目指せば仕入れはかさむ。小さな売り上げに落ち着かせようと思えばお客さんはそれ以上に減る。この辺り同業としていかがでしょうか?(匿名)
正直、このご質問をいただいてからしばらく、どうお答えしようか自問自答していました。
世間では洋服屋は昔から「やっても儲からない」「お金持ちしかできない」「趣味の延長でやるべき」そう言われ続けてきました。
悲しいかな「ハイリスクローリターン」の典型職とまで...
実際僕がお店を始める前は事実、たくさんの諸先輩方から同様のご指導いただいたものです。
昔に比べ、今はお客さん自身がネットを駆使して物を選ぶことができます。そういった意味でホームページやsnsはやって当たり前。通信販売やネット販売が当たり前。最近ではブランド側がホームページ上で商品を販売するのも珍しくありませんよね。
店頭での販売もさることながら、ネットを通して自分のお店をどう表現し、お客様を確保するのかという、20年前では考えなくてもよかったことまで必須条件となっています。
ただでさえ苦しい業種に加えて、このコロナ。確かに、未来がなさそうに思いがちです。コロナ関係なく、僕も未来が明るいと思ったことは一度もありません。
僕がずっと考え続けている地方洋服店のあり方のひとつに「超独自型」というのがありまして、当店はまさにその「超独自型」店舗を目指しています。
それは接客スタイルや、お客様との関係構築はもちろん「店舗としてのスタイル」が重要で、スタイルを見るだけで、店を連想いただくことを理想とします。
それは、たとえ並ぶものすべてが唯一無二でなくとも、店舗としてセレクトするアイテムの調和や共鳴で、そこにしかない存在感を放つお店です。
セレクトショップは性質上、飲食店のように提供価格を自由にコントロールすることができません。またインターネットを開けば、同じ商品は他の店でも購入することが可能です。その中で売り上げを確保するには「あの店で買いたい」と思わせる独自性をどこまでも突き詰める必要があります。それが「超独自性」なのです。
ご質問主さまがどのようなラインナップで洋服屋を営んでおられるか、いただいたご質問だけでは分かりませんが、未来に絶望されるのは、実店舗はもちろんインターネット上でも、商品説明の工夫やオリジナリティ、写真の撮影方法や場所、などできる範囲すべてに「超独自性」を追求し尽くした先でも遅くはありません。
・・・
と、かくいう僕も毎日毎日、悩みが尽きることはないわけですが、苦しい時いつも言い聞かせるように思うことがあります。それが「裸で外を歩いている人なんていない」ということ。
そんな当たり前のこと…と思うかもしれませんが、それが成熟した社会であり、僕ら洋服店の存在価値です。多くの方が「素敵な服を着て外に出たい」と思っていることを信じて疑わないし、そればかりはこの新型ウィルスの「渦中」において、高まったとさえ実感します。
日本は世界的に見ても貯蓄大国。贅沢せずにお金を貯めて先の安心を得る文化。
しかし裏を返せば、高額な洋服を「買えない」のではなく「買わない」人が多いのです。
YouTubeは滅多に見ませんが「〇〇買ってみた」動画が多く散見するのは、誰かが欲望を満たす様を見て、自分の欲求を満たす人が多い表れであり、つまり買えない(買わない)人が多いことを意味します。
そしてこれをチャンスと思うかどうかが、商売人としての分かれ目です。
当店でも、それまで洋服に興味がなかった方が、ほんの些細なきっかけで、こちらが驚くほどに洋服を好きになるケースが少なくありません。
それは、1にも2にも現場(店頭)での一言や、SNSでの発信を受け取ってくれるところから始まります。そんな時、身も蓋もないですが、結局のところ近道はなく、信じ続けることなんだと痛感します。
・・・
文面から、今までも今も、走り続けてきたことが伝わります。
私のような者からの言葉が、どこまで助言となるか分かりませんし、コロナ禍が追い討ちをかけて、無責任なことも言えない時代ですが、最後に一言だけ。
洋服業界などと大きなことを考えれば、不安は肥大する一方です。ぜひ共に、洋服屋を志した頃の気持ちをもう一度胸に、自分のお店を信じてみませんか?
この先どんな世界になっても、多くの方が「素敵な服を着て外に出たい」という欲求は、きっと消えることはありません。
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今週は、以上です。
ここでは、あくまで僕の答えられる範囲内にはなりますが、このマガジンを使って、皆様からお寄せいただく「洋服に関するご質問やお悩み」を、ざっくばらんにご紹介しております。
個別の商品に関するご質問ももちろん歓迎です。下記メッセージフォームより随時受けつけております。どうぞお気軽にご連絡ください。
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