シャネルが嫉妬したデザイナー、エルザ・スキャパレリ/S&S OPEN TALK #64
四国にあるセレクトショップ SLOW&STEADY ではオープン直後から、お客様からの相談窓口として、LINE@を利用しています。
その内容は、商品在庫の確認から始まり、商品ご購入後のアフターケアに至るまで多種多様です。しかしそんな中「これは多くの方も同じお悩みをお持ちのはず」と感じるご質問も少なくありません。さらにそういったものほど短文では返しづらいのが正直なところ。
そこでこのnoteにて「マガジン」という形で回答させていただくことで、そんな魅力的なご質問の数々をピックアップさせていただければと思います。
名付けて『OPEN TALK』今回はこんなメッセージです。
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いつもありがとうございます。
誰しもが一度は必ず耳にしたことがあるであろうハイブランドの代表格「シャネル」その創設者ココ・シャネルは、1920〜30年代のファッション業界で確固たる地位を築いていましたが、当時そのポジションを大きく揺さぶるライバルの存在があったことはあまり知られていません。
エルザ・スキャパレリ
それが、エルザ・スキャパレリ。日本でこそあまり知られていませんが、彼女もまた、唯我独尊、自分のスタイルを貫くココシャネルと、ファッション業界の女帝の座を争ったデザイナーで、一時的にはシャネルよりも高く評価された伝説的存在です。
シャネルが修道院育ちで、底辺のような生活から成り上がったのに対し、スキャパレリはローマの貴族出身。裕福な家庭に育ちます。
またシャネルが「そぎ落としたデザインとモノトーンを基調とするカラーリング」を主体にしたのに対し、スキャパレリは前衛アートのような感覚で洋服を生み出します。
有名なところでは「ショッキングピンク」を生み出し、今や当たり前のように使われている「ジッパー」を初めて洋服に採用したのもスキャパレリです。この当時、工業製品であるジッパーを洋服に採用するのはかなりトリッキーなことでした。
そんな生い立ちからファッションに対するアプローチ、作品に至るまで見事に対照的なふたり。当然、両者はあらゆる場面で頻繁に衝突を繰り返しますが、この2人のデッドヒートがなければ、現代のファッションのあり方は大きく変わっていたことでしょう。
そして時代は1930年代後半。第二次世界大戦が始まる直前まで続いたふたりのライバル関係にも、変化が起きます。
戦争開始とともに引退を宣言したシャネルに対し、ブランドを続行したスキャパレリは、もともと米国の裕福層に支持を得ていたことから、NYに渡りました。
その後、1945年にパリに戻りメゾンを再開しますが、スキャパレリのスタイルが時代に合わなくなっていたこと、その独創的な発想を受け継ぐ後継者がいなかったことなどから徐々に衰退し、1954年メゾンを閉鎖します。
奇しくもその年は、ココ・シャネルが15年のブランクを経て業界に復活した年であったことも、ふたりの奇妙な因縁を感じずにいられません。
※その後2013年、エルザ・スキャパレリは、ゲストデザイナーにクリスチャン・ラクロワを迎え、ブランドとして再デビューします。
これまでとまったく異なる新たなアプローチで、ミニマルなデザインを武器に女性のリアルクローズを目指したシャネル。
貴族として生まれ、20年代に主流だった女性らしさや煌びやかな女性像を、時代の流れに合わせて高みへ導こうとしたスキャパレリ。
ふたりに共通したことは、女性にとっての自由と解放をもたらした人物であったということでした。
そして同時期に生まれたのが不運、いや奇跡としか言いようがないほど、両者とも歴史上稀に見るファッションデザイナーであったということです。
まとめ
洋服業界に限らず、歴史を読み解くことで今を知ることができます。
ハイブランドと呼ばれる大手メゾンが、どのような経緯を辿って大きくなっていったのか、あるいは衰退していったのか。
どれだけの巨大ブランドも、すべての始まりはたったひとりのデザイナーの存在から始まり、たったひとりの指先からでも、世界は大きく変えることができることを、思い出させてくれます。
そんな連綿と続く洋服に思いを馳せながら、今日も袖を通す日々です。
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今週は、以上です。
ここでは、あくまで僕の答えられる範囲内にはなりますが、このマガジンを使って、皆様からお寄せいただく「洋服に関するご質問やお悩み」を、ざっくばらんにご紹介しております。
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