見出し画像

10月/3 の純情な感情

がっつり残業し、終電近い地下鉄のシートにぐったりと沈みこむ俺。途中駅でガタイのいい男性が隣に座り、その右腕が私の左腕を小刻みに揺らしてくる。ちらっと見ると何やらスマホのディスプレイを高速で下から上へフリックしている。以前流行ったなめこ栽培ゲームへでなめこを刈っているのか他のゲームなのかは知らないが、隣のサラリーマンの汗の匂いとスマホを凝視し、高速フリックする右腕の振動を長時間感じながら、ああ、人生とは所詮かようなものなのかと嘆き、東京だョおっ母さんと胸の中で呟く。電車は次の駅で止まって、また走り出した。〈今日〉は途中駅に過ぎない。

東証のシステム障害の会見に痺れる。完全にプロの仕事。ずっとスガシカオのプロフェッショナルのテーマ曲のイントロが繰り返し再生されているレベルで凄い。それぞれのパートの責任範囲の回答も上手く棲み分け、分かりやすくブレイクダウンしていて素晴らしいし、個人の能力や責任感、チームの強さ、どれを取っても凄すぎる。サラリーマンの鏡である(ここの「サラリーマン」にはネガティブな意味は全く含まれない)。一個人が一線で社会を相手に対峙することの凄さ。それに引き換え記者はアマチュアばかり。同じ質問を何度もしまくるし、相手に対する敬意がないし、不愉快極まりなく、これではコントのレベル。対峙する人間に対して敬意の払えない仕事など、一体、誰に価値が提供出来るというのか。

ヨラテンゴの「fade」(2013)というアルバムが大好きである。ヨラテンゴ通算13作目となるフルアルバム。完全に横綱相撲。ほんとに好き。個人的にはビートルズ以降、マスにアプローチ出来るレベルの曲のポピュラリティ、曲のバリエーション、デファクトスタンダードになり得るポピュラリティーを兼ね備えたエポックメイキングなバンドはヨラテンゴ1択と考えております。はい、カタカナ沢山使い過ぎましたね。それくらい大好き(どんなだ)。

〈己の変わることのない主張〉の栄養になる情報ソースを集めて自己承認を調達する手段にうんざりしつつも、そういう人も居るししょうがないじゃないか、と自己の説得に明け暮れるSNSという沼。他者理解がおざなりに話が展開されていくことが、ただ悲しいのだ。イデオロギーなんて私にとってはどうだってよく、イデオロギーを軸に生活の態度を決めていく方法を私は取らないことにしている。元来、私は自分の外側にある何かが変わることにずっと期待していない。即ち他人や社会に対する期待は基本的にはないので、その分、自分に期待を振り向けることにしている。然しながら、このような私の態度が良いとは全く思っていない。

合間を見つけてAmazonPrime「沈まぬ太陽」を観る。国際航空キャリアの労組の代表として奮闘した為に、あからさまに出世街道から外され、それでも会社のサービスの品質を担保するためには従業員の待遇改善が必要と信じ奮闘する無骨なサラリーマン、恩地。家族と仕事に引き裂かれながら、それでも本来的な仕事を全うしようとする、恩地。日本からカラチへ飛ばされ、その後テヘランへ飛ばされる恩地。遂には便が就航してないナイロビに飛ばされる恩地。遂にはナイロビでハンティングを趣味にし剥製を部屋に飾り、デカイ亀を飼い始める恩地。どうする?どうなる恩地!恩地ーー!!(夢中)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?