物語をつくる(4)ストーリーの構成
「物語をつくる(1)テーマと設定」
「物語をつくる(2)テーマの背後にあるもの」
「物語をつくる(3)主人公のキャラクター」
と、物語のテーマやキャラクターについて考えてきましたが、今回はその物語をどう構成していくか、ということについて考えていくことにします。
■ 物語を構成する(抜粋動画を見る)
小説にしても映画にしても、最近の作品は、時間軸を複雑に交錯させたり、意表を突くヒネリの効いた展開などで見る者、読む者を楽しませてくれてます。
しかし、かなり複雑な構成の作品でも、物語の基本的構造は、古来から語り継がれている「三幕構成」を基本にしている場合が多いのも事実です。
もちろん、あえて「三幕構成」を使わない作品もありますが、使わないにしても、「三幕構成」がまずどういうものであるか知っておく必要はあるかと思います。
■ 三幕構成(スリーアクト・ストラクチャー)
物語の構成は、古典劇であるギリシャ悲劇やシェークスピアをはじめ、数多くの映画やテレビの2時間ドラマまで、その多くが「三幕構成」の構造を持っています。例えば、2時間の映画の場合、
○第一幕(アクト1) セットアップ /設定 (30分)
○第二幕(アクト2) ディベロプメント/展開 (60分)
○第三幕(アクト3) レゾリューション/解決 (30分)
と3分割され、第一幕と第二幕の終わりには、必ず「ターニングポイント」と呼ばれる、物語を大きく展開させていく出来事が挿入されています。
そして、第三幕の終盤近くに「クライマックス」と呼ばれる、物語を解決に導く最後の出来事が配置されています。
時間的には各アクトが、ほぼ1:2:1の比になっており、2時間の映画なら、大体、第一幕が30分、第二幕が60分、第三幕が30分という長さになっています。
■ 各アクトの役割
各アクトは、それぞれ異なった役割を持っています。
第一幕、セットアップの役割は、観客が物語を理解するのに必要な情報を提供することです。
どこを舞台にした話なのか、主人公は誰なのか、主な登場人物と主人公との関係などを簡潔に紹介していきながら、物語の展開の準備をしていきます。
第二幕、ディベロプメントは、物語の核心とも言える、物語が大きく展開していく部分です。
2時間の映画の場合、第二幕が60分あるので、第二幕の真ん中あたりに、もうひとつ「ターニングポイント」を追加する場合もあります。第二幕で重要になってくるのは、物語の「勢い」のようなもので、物語の勢いを持続させながら、観客を第三幕まで引っ張っていく役割もあります。
第三幕、レゾリューションは、物語が解決していく部分であり、物語の中で謎になっていたり、未解決な部分にある種の答えを提示する役割があります。
物語の中でも、最後のクライマックスの部分であり、観客はこの物語が一体どういう結末を迎えるのか、期待しながら見守ります。
期待どうりの結末で観客にある種のカタルシスを与える終わり方もあれば、観客の予想を裏切る結末で驚きと余韻を与える終わり方など、いろいろありますが、作者がこの物語を通して何をどう伝えたかったのかによって、結末の表現方法は変わってくるかと思います。
ハリウッドの娯楽作品などの場合、観客をいかに楽しませるかが最優先されるため、シナリオの結末をプロデューサー側で変更したりすることもあるそうです。
「危険な情事」が公開前の観客の反応を見た上で結末を変更した、という話が以前テレビで紹介されていました。バスルームから生き返った愛人を正妻が撃つシーンは、最初はなかったらしいですが、このラストのほうが、観客はより納得するであろう、ということで変更されたとのことです。
■ 自分なりのストーリー構成法
「三幕構成」を使うにしても使わないにしても、観客や読者を最後まで物語からひきつけてはなさないようにするためには、「ストーリーの構成」がとても重要な役割果たしている、ということが想像できます。
どう構成すれば、より魅力的でおもしろい物語になるか、ということに対する明確な回答はありませんが、「三幕構成」の各アクトの役割を基本にして、自分なりのストーリー構成法を模索していくのも、またひとつの創造的楽しみかと思います。(初稿:2003/10/20)
■ 参考書籍
「神話の法則」クリストファー・ボグラー
「ハリウッド・リライティング・バイブル」リンダ・シガー