見出し画像

物語をつくる(3)主人公のキャラクター

連載記事なので「マガジン」にしました。

物語をつくる(1)テーマと設定
物語をつくる(2)テーマの背後にあるもの

と、物語をつくるにあたって重要だと思われることを、いろいろ考えてきましたが、今回は物語に登場する人物の「キャラクター」について考えてみます。 35秒動画で見る→


■ 登場人物の役割

物語のテーマやその背景にある「伝えたいこと」が決まってくると、それらを物語の中で「表現する」登場人物が必要になってきます。

登場人物には、それぞれ「役割」があり、主人公を中心にして、さまざまな関係性を築いていきながら、物語を展開していきます。

クリストファー・ボグラーの「神話の法則」によると、神話の登場人物は、大きく7つのキャラクターに分類され、それぞれが主人公との関係性において物語の中での役割をはたしている、と分析されています。その7つはユングの提唱した「アーキタイプ=元型」という言葉で説明され、

1.ヒーロー(英雄)=(主人公)
2.メンター(賢者)
3.シュレスホールド・ガーディアン(門番)
4.ヘラルド(使者)
5.シェイプシフター(変化する者)
6.シャドウ(影/悪者)=(敵対者)
7.トリックスター(いたずら者)

という呼び名で分けられています。

それぞれの役割について細かく説明すると、一冊の本ができるほどですが、「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」などの登場人物を思い起こせば、なんとなくそれにあてはまるキャラクターが想像つくかと思います。

現代劇においても、これらの7つのキャラクターは、変化、改良させながらも登場人物の役割を設定する上で、応用され使われつづけています。

例えば、
「羊たちの沈黙」におけるレクター博士は
「シャドウ(影/悪者)」

の象徴でありながらも、主人公のクラリスにとっては、助言を与えられる
「メンター(賢者)」としての役割も持つ複合的キャラクターと言えます。


■ キャラクター造形の要素

リンダ・シガーの「ハリウッド・リライティング・バイブル」によると、魅力的なキャラクターを造形していく場合、
「思考」「感情」「行動」
という3つの要素が重要になってきます。

キャラクターを外面的要素で考えていく場合、年齢、性別、職業、趣味、家族構成などで表現することもできますが、「思考」「感情」という内面的要素の反映が「行動」という形で表現されることによって、はじめて登場人物が、人間としての真実味を帯びてくるようになります。

登場人物の思考や哲学は態度にあらわれ、感情的気質は意志決定や行動の基盤となり、感情的反応として、キャラクターを生み出していきます。

観客が登場人物に共感するのは、登場人物の感情を通してであり、キャラクターには、観客が理解できるような感情表現が必要となります。

■ 主人公のキャラクター

物語の中の登場人物の関係性を作っていく上で中心となるのは、やはり物語の主人公のキャラクターかと思います。

前回ご紹介した「英雄伝説の基本構造」によると、多くの物語は主人公が数々の試練を乗り越えて成長していく過程を描いたものであり、主人公の冒険の旅と観客の人生の旅が重なることによって共感や感動が生まる、という側面があることを書きました。

物語というのは、時間的経過によって起こるある種の「変化」を描く芸術でもあり、その変化は、主人公の「学び」や「成長」によって象徴的に表現されていきます。主人公のキャラクターを造形していく場合も、その「変化」を前提に考えていく必要があるようです。

■ 成長する主人公

主人公の変化を考えていく場合も、やはり「思考」と「感情」の変化が重要になってきます。何らかの出来事をきっかけにした主人公の内面的変化が「行動」という外面的変化に反映されるためには、「思考」や「感情」に何らかの変化が起こっていく必要があります。

キャラクターを作る場合にも、変化によって成長する前と、成長した後の対比やコントラストが明確になっているほうが、物語の展開もメリハリがつきます。

ただ、その変化や成長に真実味があるかどうかは、その変化の過程における主人公の微妙な内面的変化がよりリアルに描かれているかどうかにもかかってきます。

人間、そんなに急にはなかなか変化できないものなのですが、その変化に説得力があるかどうかは、物語の展開や出来事の内容が関係してきます。もちろん、すべての物語にリアルさを追求する必要もなく、荒唐無稽に唐突に変貌する主人公がいても、それはそれでおもしろいかと思います。

■ キャラクターの多面性と行動の変化

物語の主人公は、「多面性」を持っていたほうが真実味があり、より人間的な魅力あふれるキャラクターとして観客の共感や一体感を得やすくなります。

「多面性」は、人間に内包するさまざまな側面であり、欠点や悩みを抱えて苦悩したり、善と悪のはざまで悩み、葛藤したりするほど、より我々に近い存在として親近感がわいてくるものです。

そして、そんなごく普通の人物が何かの出来事や事件をきっかけに変化していく姿は、我々が心のどこかに秘めている「憧れ」のようなものでもあり、その変化の過程を物語を通して、疑似体験しているのかもしれません。

主人公のキャラクターには、そうした「多面性」と「行動の変化」がとても重要であり、観客が主人公に共感したり、感情移入したりできるかどうかがその物語を魅力的にするかどうかに、大きく関係してくると思われます。
(初稿:2003/09/20)

----- SELF AD ----- ImaginaryStock Promotiom Movie -----

■ 参考書籍

 夢を語る技術〈5〉神話の法則―ライターズ・ジャーニー
「神話の法則」クリストファー・ボグラー
「ハリウッド・リライティング・バイブル」リンダ・シガー

▼バックナンバー

#物語をつくる #ショートムービー研究所


いいなと思ったら応援しよう!

GAUCHO(ガウチョ)
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての制作費用として使わせていただきます!