物語をつくる(1)テーマと設定
物語をつくる(1)テーマと設定
■ 物語の必要性
「ショートムービーをつくる」には、まず何からはじめればいいのでしょうか。素材を集めたり、撮影をしたり、アニメーションのキャラクターを作ったり、いろいろ浮かんでくるかと思いますが、まずは「ストーリー」としての、「物語」をつくることが必要ではないかと思います。
もちろん、物語性のないような映像もあるのですが、時間軸として展開していく映像の場合、その展開それ自体が、ひとつの「ストーリー=物語」になりえます。15秒CMや音楽PVも、近年、なんらかの物語が内包されるようなつくり方が主流になってきているよう感じます。
「物語」は日常生活にも溢れています。我々は、自分の身の回りで起こったさまざまな出来事を、ある種の「物語」のように友人や家族に話します。そういう意味では、誰しもが「物語」の語り部の才能を持っています。
しかし、実話ならまだしも、いざ物語性のある「ショートムービーをつくる」ということになると、そのシナリオをどう書いていったらいいのか、またどのように物語を構成していけばいいのか、たちまち悩んでしまいます。
シナリオスクールや映画学校に行けば、教えてもらえるのかもしれませんが、一体、物語はどうやって、どういう手順で作っていけばいいのでしょうか。
■ 5W1Hの原則をあてはめてみる
ジェームス・W・ヤングの「アイデアのつくり方」という本
があるように、どこかに「物語のつくり方」というような本があるのかもしれませんが、物語をひとつの「情報」としてとらえ、情報伝達の基本としての「5W1H」の原則にあてはめて考えてみることにします。
「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように」こうした設定をひとつづつ決めていくことにより物語の概要が決まってきます。
「いつ、どこで」というのは、時代設定や舞台となる場所の設定です。過去、現在、未来のいつの話にするのか、どんな国、どんな場所を舞台に物語を展開していくのか、そういった設定を決めていきます。
「だれが」というのは、物語の主人公や登場人物などの設定です。登場人物の年齢、性別、職業、生活環境、性格などを決めていくわけですが、これは主人公や登場人物の「キャラクター造形」という重要な作業にもつながっていきます。
そして「なにを、なぜ、どのように」というのが、物語の核心というか、物語を展開していく上で重要な部分になってきます。
例えば、物語の中であるひとつの出来事が起こるとします、事件や事故などいろいろな出来事が考えられますが、「何」の出来事が「なぜ」「どのように」起こるのか、ということが物語の展開や内容を決めていきます。
また「なぜ」というのは、その出来事が起こる背景にあるものであり、物語によっては、その「なぜ」という部分が物語のテーマになってる場合もあります。「なぜ」その事件は起こったのかとか、「なぜ」主人公はその行動を選択したのかとか。
■ 優先順位の問題
物語を「5W1H」の原則にあてはめていて気づいたことは、「なにを、なぜ、どのように」ということのほうが、物語の核心部分であり、「伝えたいこと」にあたる、とすれば「いつ、どこで、だれが」はそれを伝えるための「手段」としての設定にもなりえるわけです。
例えば、仮に伝えたいことが愛とか友情とか普遍的なテーマの場合、どんな時代やどんな場所にも存在しているわけで、「いつ、どこで、だれが」というのは、差し替え可能な設定とも言えます。
つまり、設定を決めていく優先順位としては「なにを、なぜ、どのように」という部分が先で、そのあとそれを最適に表現するための「いつ、どこで、だれが」を決めていったほうが物語をつくる場合の自由度がもてることがわかります。
物語つくりは「テーマ」が先でほかの「設定」はそのあとのほうがいい、ということになります。
■ 伝えたいことがテーマ
物語のテーマというのは、作者が「伝えたいこと」ともいえます。「伝えたいこと」を、物語という時間の流れの中に埋め込み、表現していくことが、物語をつくる目的であり、物語の構成や表現手法は、そのための手段となります。
「伝えたいこと」がテーマだとすると、テーマは物語をつくる人の数だけ存在することになります。自分は「何」を伝えたいのか、という想いが物語をつくる原点とも言えます。
ある映画監督は、こんなことを言っています。
また、神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、こんなことを言ってます。
この「目に見えないもの」とは、一体何なんでしょうか。そのあたりのことは、また次回考えていきたいと思います
(初稿:2003/07/20)