【ジビエレザー】読みました!「山と獣と肉と皮(繁延あづさ)」【読書】
京都一乗寺にある「恵文社」というお店が好きです。
本屋さんであり、生活用品店でもあり、ギャラリーでもある、広いお店。
お店に向かって左には、紙雑貨とアートギャラリースペース。
真ん中には書店スペース。
右には、台所用品が中心の生活雑貨スペース。
隠し通路みたいな中庭で、各スペースがつながってます。
棚と棚の間を歩いていくと、違う世界に渡って行けそうな雰囲気。
パラレルワールドからやってきた人が、時空を超えた戦いとかの小休止で身を潜めていそうな場所なんですよね・・・。
学生の頃から細々と通っている、大好きなお店です。
今回読んだのは、そんな「恵文社」で見つけた大当たりの一冊です。
前知識は全くなく、棚でバッタリ出会いました。
肉とアバラが剥き出しの表紙、エヴァっぽい帯
じろじろ見ちゃ悪い気がするけど、目で追わずにいられない。
獣のものとはいえ、リアルな"死体"の中身の写真です。
著者は、カメラマン。
ライフワークとして、山の獣との関わりを撮影されています。
本の中にも、臓器や、鹿の胎児などの写真は登場します。
これらは、現物をそのまま撮影されたもの。
しかし、"怖いもの見たさ"を満たす目的で作られたコンテンツではありません。「ほら、グロいでしょ?」とか「気持ち悪いでしょ?」とか。そういう意図のない写真です。
個人的な内容。むしろ"個体"的な内容?
生き物に共感して"泣く"目的のコンテンツともちがいます。
「健気なケモノと非情なハンター」「自然を壊した、罪深い人間」
そういう、「人間対何か」の大きな構図もありません。
あるとしたら、個体と個体の関わりだけ。
本に書かれているのは、
「カメラマンがハンターの仕事に同行しながら考えたこと」。カメラマンの著者は、移住先のご近所からおすそ分けされた「ケモノの肉」をきっかけに、山へ入るようになります。肉をさらに美味しく料理するために、詳しい情報が欲しい。誰でも持ちそうなシンプルな興味から、カメラマンは山に踏み込みます。
ハンターの背中を追いかけて山を歩いている間に、「"おいしい"という気持ちってなんだろう?」「ケガレってなんだろう?」と次々に疑問がわきます。疑問を抱えつつ山を歩き回り、獲れた肉を料理して食べながら、自分なりの答えを見つけていきます。
好きなポイントは、
著者が超超フッ軽で、西へ東へ動き回ること。
著者の肩に乗って、いろんなところのいろんな人に素のトークを聞きに行っている感覚になりました。
あと、説教くさくないところ。
「〇〇すべき」というメッセージではない。
先ほども書いたように、「健気なケモノと非情なハンター」とか「自然を壊した、罪深い人間」とか。説教くさいまとめ方をしていないところが好きです。
ただただ、個人の興味が深まっていく様子が臨場感たっぷりに描かれます。
あとあと、何より、思考の過程にパワーワードが満載なところ!
面白い表現に線引きすぎて、手の側面が黒くなりました。こんなことは小学3年生以来です。
自分の手の届く範囲のことを、素朴に真面目に考えた。
頭の中では答えが出ないから、足を動かしまくった。
その過程で考えたことを、パワーワードてんこ盛りでまとめた。
こんな感じの、とても面白い本でした。
私自身、ジビエレザーブランドを作ることを思い立ってはじめて、
「有害鳥獣駆除」や「サステナビリティ」をもっと知りたくなったんです。
それでも、学んだことを発信しようとするとどうしても説教くさい文章になってしまう。自分さえも読む気の起きない、つまんねー文章になって困ってたんです・・・。
この本を読んで、「話し手が素人と同じ感覚を持っている」「聞き手が話し手に共感できる」ことが大事だと気づかされました。
特に好きな表現!
最後に私がこの本の中で特別濃ゆい線を引いた文章を1か所だけ紹介します!ホントはもっともっともっともっと素敵な表現が詰まっているので本を読んでください・・・。
果実に手を伸ばしもぎ取って口に含んだとき感じる"おいしい"とはまるでちがうものだ。・・・(中略)・・・"殺したくない"という感情と"おいしい"という感情は、どうやっても一直線には繋がりそうもない。それでも、両方の感情は一続きの糸でつながっているはずだという確信もある。どんなに捩れようが、縒れようが、その糸は切れずに"おいしい"にたどり着く。(『山と獣と肉と皮』p.57)
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