そもそも骨髄移植って?/GVHDとGVL/晩期障害
骨髄移植に向けて、僕はますます知識を集めていた。
インターネットだけでは飽き足らず、医療系の専門誌まで買った。
そして、一つの疑問が湧いて来たんだ。
そもそも骨髄移植とは、
ドナー(提供者)から採取した造血幹細胞(全ての血液の元となる細胞)を、レシピエント(患者)に移植(と言っても外科的にではなく輸血と同じ方法)して、患者の失われた造血機能を回復させる医療。
つまり、
がん細胞に侵されてしまった骨髄の中を、強い抗がん剤や放射線を用いて焼け野原状態とし、そこに新たな血液の元を植え込むと言う治療方法なんだ。
ただ、それには他の臓器移植と大きく異なる事がある。
通常の臓器移植の場合
せっかく提供されたドナー(臓器の提供者)の臓器をレシピエント(提供を受ける側=患者)の白血球(免疫担当)が攻撃してしまう、拒絶反応が起きる。
それが、血液を移植する骨髄移植の場合は、全く逆の事態となる。
つまり
ドナー由来の白血球(免疫担当)がレシピエントの体を異物とみなし、攻撃してしまうのだ。
これを移植片対宿主病(GVHD)と呼ぶのだけれど、
全身の臓器や細胞を攻撃するので、場合によっては命に関わることもある、
(前回説明した、移植にHLAの一致が不可欠とするのはこの為だ。)
しかし、同時にこのGVHDは、
レシピエントの白血病細胞(癌細胞)に対しても発動するのだ!
これを、移植片対白血病(GVL)効果と呼ぶのだけれど、
この事は、骨髄移植が行われて来た早期から推測されていたんだ。
そして、
実際に骨髄移植のシーンで、高齢者や内臓疾患のある、強力な移植前処置ができなかった患者さんへの移植でも、治療成績に差が無い事が、次第に分かって来ていたんだ。
だとしたら、、、
移植前の
強力な抗がん剤治療とか、
放射線の全身照射って、
要るの…?
それが僕の素朴な疑問だった。
〜晩期障害〜
なぜ当時の僕が、移植前処置にこだわったのかと言えば、それは強力な抗がん剤や放射線がもたらす、晩期障害が気になったからだ。
晩期障害とは、
移植後に現れる合併症に対し、5年後、10年後、に現れ、場合によっては一生背負う障害、健康上の問題のことを言う。
必ずしも、移植前処置だけではなく、GVHDによってもたらされる病いもあり、
主には、成長障害、臓器障害、不妊、二次がんなどが挙げられる。