Peace Keeping Orchestra(memo)
「また憎しみから逃げるつもりか!宮本!」
将軍と呼ばれる女、伊藤歩は詰め寄る。
「違う。憎しみは何も生まない」
宮本と呼ばれた男はそう答える。
「教科書通りだな宮本。優秀なことだ。だが人が人である限り憎しみは生まれる。憎しみが生まれることはしょうがないことだ。ならばそれとどう向き合うかで答えはいくらでも変わる。違うか?」
「伊藤。確かに君の言う通りかもしれない。だが、子供たちの未来、希望を信じて死んでいった人間たちに同じことが言えるのか?」
「確かにな。だがその希望とやらに親が殺された子供たちはどうなる?」
「かっこつけるさ、歯を食いしばって。そうやって想いは紡がれてゆく」
「お前は何もわかっていない。お前のために死ぬ人たちがいるということを!何もわかっていない!」
「わかっているつもりだ。だから逃げたんだ。今の俺は個人的な理由でしか動かない」
「そこに倒れている男はどうなる?私に殺されたその男の無念はどうなる!お前のせいでもあるんだぞ!」
「そう…だから苛ついているのさ自分自身に。覚悟はできているな」
「覚悟ならもうとっくの昔に済ませた。お前に殺されるなら」
「そうか…だがもう俺に逃げる場所などない」
「ようやく理解したか、最初からそれでいいのに何を血迷った。来い。相手になってやる。それでお前の気持ちが楽になるというのなら」
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