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【アンチャーテッド4】には カンボジアの古代遺跡が登場する予定だった!?

2023年に発掘された新情報を元に脚本家変更前のアンチャーテッド4の実態を紐解いて行きます。


PS4専用ゲーム、アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝 (以下アンチャ4)は2016年5月10日に発売されました。

そんなアンチャ4の開発は、2014年の前半にシリーズの生みの親であるエイミー・ヘニング氏のチームからブルース・ストラリー氏とニール・ドラッグマン氏のチームに移行しました。

その際にヘニッグ氏が考案したストーリーの一部が変更され、主人公に復讐を誓う敵対的なポジションで登場する予定だったサム・ドレイクが主人公サイドのキャラクターに変更されました。

また、ネイト役のノーラン・ノース氏によるとアンチャ3に登場したチャーリー・カッターが登場する予定だったようです。この話はカッター役のグレアム・マクダビッシュ氏がアンチャ4の開発に参加していることを2013年1月に自身のSNSで示唆していたことからも裏付けが取れています。(リンク : [1]  [2]  [3])

元々のストーリーではネイトとサムは生き別れた兄弟で大人になってからトレジャーハンターの世界で運命的な再会を果たします。(しかし、この時点では2人は兄弟であることに気付いてません)

その後、何らかの出来事があり、2人は刑務所に投獄されます。しかし、その監獄からはネイトのみが脱出しサムは15年もの歳月を独り刑務所で過ごすことになります。
出所したサムは自分を置き去りにした仕事仲間のネイトへの復讐を誓いますが、ストーリーが進むにつれて、実はネイトとサムは生き別れた兄弟であることが判明します。

この辺の設定は2013年11月に公開されたアンチャ4の初報トレーラーの中でも少しだけ仄めかされていました。↓

また、ネイトとサムの少年時代の回想や南アフリカの民間軍事会社を率いる女ボス ナディーン・ロスなどは移行後に新しく追加された内容やキャラクターです。一方で基本的な設定やステージなどは引き継がれたようです。

元々のストーリーの実態については、未だ不明な点が多いのですが、近年になって新しく判明した事実もいくつかあります。

2022年11月、解析者のThekempy氏がUncharted 4: Development Videos Compilation 2 と題する動画を投稿しました。この動画の中にはヘニング版アンチャ4の未見のプレイ動画が含まれていました。その動画から該当部分を切り抜いたものが以下になります。↓

このプレイ動画は9秒間ほどの短いもので音声もありません。元々想定されていたネイトの服装や舞台(熱帯雨林)が分かる程度です。しかし、この中で描かれている「ジャングルに埋もれた謎の彫像」には大きな秘密が隠されています。(後述)

2023年、新音声が発掘される

2023年8月、同じくThekempy氏によって上記のプレイ動画とはまったく別のヘニッグ版アンチャ4のカットシーンに使われていた「音声」が発掘されました。↓

氏いわく、2015年に配信されたアンチャ4のマルチプレイヤーベータ版を2018年に手に入れたということです。そこにヘニッグ版アンチャ4の未公開音声が眠っていたとのことですが、残念ながらカットシーンの映像そのものは残っていなかったようです

本来であればヘニッグ版アンチャ4の情報などは配信前に削除されるはずですが、その音声ファイルが環境音などを表すファイル名で保存されていたので、運良く消去を免れたようです。

その情報を紐解くと幻のアンチャ4の実態が明らかになるかもしれません。

ヘニッグ版アンチャ4のプレイ画面。ネイトの目線の先に特徴的なデザインの大きな彫像がある。

その音声は、ネイトとサリーがどこかの遺跡で再会する場面から始まります。(以下の引用は上記の動画から著者が書き起こしたものです。英語話者ではないので不正確な点や欠損があるかもしれません)

(音声スタート)

(ネイトが動き回る音)

(何かの物音)

(拳銃をホルスターから引き抜く音)

Nate「shit」
Sully「Easy」
Nate「Sully,Where the hell have you been?, I'm gonna Use some help back there.」
Sully「Yeah i want to tell you the truth i got a little turned around in these
ruins」
Nate「you? lost?? There's a shock」
Sully「smart ass」
Sully「so What the hell is all
this stuff anyway」
Nate「sure」
Nate「It's javanese but that Would make it over a thousand years old 」
Sully「five thousand miles away from home!」
Nate「right」

(何かの物音)

どちらか判別不能「holy shit」


(拳銃をホルスターから引き抜いた音と二人の足音で音声は終了する)

この音声の情報をまとめると、ネイトとサリーは、1000年以上前のジャワ人の古代遺跡をジャワ島から5000マイル(約8000km)も離れた場所で発見したようです。しかし、カットシーンや声優による声当てまで作成されたにもかかわらず、このようなやり取りや場面、ジャワ人の古代遺跡などはアンチャ4本編には一切登場しません。

発掘された音声情報はこれだけですが、この古代遺跡に繋がるまでのやりとりだと思われる情報もThekempy氏によって発掘されています。これは前述の音声とは異なり、プレイスホルダー・ダイアログと呼ばれるもので、声優が声をあてる前にキャラの頭上に入力・表示されるための文字情報です。

その中ではネイトが敵を回潜って寺院に入ると言っていたり、その途中で鎖に繋がれた海賊の遺体を目にしたりします。

また、アンチャ4のマルチプレイにおける「海賊島」のマップ内に登場する遺跡はアンチャ4本編に登場する遺跡とは別物で、むしろヘニッグ版アンチャ4のジャワ人の古代遺跡を流用したものと考えたほうが腑に落ちます。

以上は主にThekempy氏の動画の要約です。下には自身の考えを書いてみたいと思います。

そもそもインドネシアのジャワ人と製品版アンチャ4の舞台であるマダガスカルを結びつける発想は突飛ではないか?ということです。しかし現実世界でもマダガスカルの先住民は東南アジアから渡ってきた人々に起源があるということが分かっています。

公式資料集が新情報を裏付ける

また、アンチャ4の公式資料集「The Art of Uncharted 4: A Thief's End」がこれまでの新情報を裏付けます。

「The Art of Uncharted 4: A Thief's End」 156ページより。

この資料集の一番下に描かれているのは製品版に収録されているネイトとレイフの最後の一騎打ちです。

一方、一番上には特徴的な彫像があるアジア風の遺跡の中でナイフを持った男と対峙するネイトが描かれています。しかしこのような場面はアンチャ4製品版には登場しません。勿論、これはコンセプトアートですが、ヘニッグ版アンチャ4の何らかの場面が元になっていると考えるとしっくりきます。

また、この資料集にはアンチャ4本編には登場しないカンボジアの古代遺跡を描いたページもあります。

「The Art of Uncharted 4: A Thief's End」 99ページより。

同ページのキャプションには「Though these cambodian-and balinese-inspired temple and ruins didn't make it into the final game, these images served as early exploration of what uncharted4 could be.」とあります。

「初期調査」の具体的な内容やその時期などについては不明です。ヘニング版アンチャ4やその開発自体を初期調査と定義している可能性もあれば、ヘニング版アンチャ4の開発初期に行われたアイデア出し?的なものを指しているのかもしれません。
少なくともサリーとネイトが古代ジャワの遺跡を発見するカットシーンが実際に作られていたことはThekempy氏の調査によって確定しています。

いずれにせよ、ヘニッグ版アンチャ4はジャワのみならず東南アジア各地の様々な古代文明の遺跡や要素を登場させる予定だった可能性があります。

「謎の彫像」の正体

さて、ここまでに紹介してきた画像のいくつかには共通するモチーフが描かれています。このモチーフはヘニッグ版アンチャ4のバラバラの情報をひとつにまとめ上げるものです。
以下はアンチャ4のプレイスホルダーメインメニューです。

アンチャ4のプレイスホルダーメインメニュー(ここにもジャワ風の彫像が描かれている)

この画像や上記のいくつかの画像や動画に登場する特徴的なデザインの彫像は「カーラ」という怪物をかたどったものです。カーラ像の特徴は「鋭いキバ」や「飛び出した目玉」などです。そして、このカーラ像は現実世界ではインドネシア各地の遺跡にその姿が見られます。

この事実によって、2022年11月に公開された9秒間のプレイ動画、2023年8月に発掘された音声、公式資料集に収録されている「謎の遺跡でナイフを持った男と対峙するネイト」のコンセプトアート、アンチャ4のプレイスホルダーメインメニューがカーラの彫像という軸でひとつに繋がります。

インドネシアのバリ島の遺跡にあるカーラ像(Wikimedia Commons)

結論

これまでの情報を総合すると元々のアンチャ4には(最低でも )インドネシアの古代遺跡が登場する予定だったことはほぼ確実です。そして、ストーリー自体も製品版とは大きく異なったものだったと思います。

少なくともサリーとネイトが古代ジャワ人の遺跡を発見するカットシーンは製作されています。しかし、最終的に何らかの理由で東南アジア的な要素は全てカットされました。

ヘニッグ版のアンチャ4は、マダガスカル周辺で活躍していた海賊たちと東南アジアの古代文明が絡み合った壮大なストーリーが展開される予定だったかもしれません。


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