「走馬灯のセトリは考えておいて」柴田 勝家 読了
誰かのレビューで紹介されてたり(誰だったのか思い出せない…)、世にも奇妙な物語で映像化されたってことを小耳にはさんだりしていたので気になっていた作品。
セールになっていたので買って読みました。
以下は感想走り書きです。
オンライン福男
序盤が(今から見ると)過去から始まる上にあまりにもVRChaterからするとなじみが深すぎる話だからSFじゃなくてドキュメンタリー読まされてるのか?って気持ちになって面白かった。実際ありえそうだな~というラインをずっとキープしてたね。
どんどんスケールがデカくなっていくオンライン福男、ユーモラスな勝敗、最後のオチと、軽快に読めてよかった。
クランツマンの秘仏
打って変わって硬派な文体になってびっくりしちゃった。
海外の研究家が秘仏を巡って調査や思考実験をしたことをまとめた論文のような感じ。
信仰によって質量が増える、またはその逆が起きるんじゃないか、ということに人生を捧げた男の話。
最後は謎を残して終わるが、結構楽しく読めた。
オンライン福男もそうだけど、本当に有り得そうなラインなのがいいねえ。
絶滅の作法
人類が滅んだ地球に、人間の遺伝子から再現した肉体に異星人が遠隔で乗り移って(いわゆるアバター的な)住み、失われた人間の営みをするという話。
加工食とかもあるが、肉体の記憶がうずいて人間としての営みをやってみたくなり、自炊をしたり、本物の寿司を作るために稲作する。
俺達は人間じゃないのにどうして人間で有りたがろうとするんだろうな、なんでこんなノスタルジーを感じるんだろうな、というなんだかどこか懐かしい気持ちになるほんわかした話かも。
面白かった。
火星環境下における宗教性原虫の適応と分布
宗教(および共産主義などの思想)が起きる原因が寄生虫だとして、という仮定の世界で、どのようにして宗教が地球外に適応していくかという話
虫なのにことばを媒介して感染するとか、そういうこじつけみたいな視点が面白かったね……
姫日記
信長の野望で鍛えた女が過去で美少女毛利元就につかえて無双する話か?とおもったけどいちいちゲームシステム(?)がクソでうまくいかねえ〜って話、かと思ったらマジでクソゲープレイレビューだったという話。
ゲームの理不尽さって小説に落とし込めるんだねえ。
バグを使いこなしてクリアして、友人に「面白かった」「戦国時代、大好きだからな」
かっけ〜
そして最後のオチね。良すぎ。
走馬灯のセトリは考えておいて
表題作。
50年後くらいの未来、死者をAIやらなんやらの技術で生身の人間のように話せるライフキャストを残し、それと生活するのも当たり前の時代。ライフキャスト作成業者である主人公がとある依頼をうけるところから始まる。それは昔バーチャルアイドル「黄昏キエラ」として活動してたころを再現してラストライブをやりたい、というもので…という話。
いや、めちゃくちゃおもしろい………!
淡々としたSF然とした語り口とVTuber文化のアンマッチさ……
いや〜おもしろい。
こっからはがっつりネタバレ
中の人と疑われてた人は別人で、実はその人の同級生で、マネージャーで……
でもその娘はいろいろ悩んで自殺してしまい、自分がその子の性格とかを真似てVになって……
SF百合じゃん〜〜〜〜〜〜〜
最後の中の人騒動をAIがほのめかすところ、ライフキャストのファンが率先してサイリウムを振って空気を変えるとこ、明るくライブを締めくくるところ、そしてキエラに込めた願い……
ボロボロ泣いてしまった………
ちょうど、この時代に読むからこそのエモさだなぁ……
総括
柴田勝家さん読むのは初めてだったけどめちゃくちゃおもしろかったな~~~。他の作品も読んでみたいなぁ。
そのほか感想は以下に…