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日記(5月28日〜6月3日)

5月28日(日)

十一時過ぎに府中本町に着いて湯船さんと合流。いたそさんも来る予定だったが、昨日、というか今日の朝まで飲んでいたらしくキャンセルとのことだった。
駅から東京競馬場に続く通路を二人で歩く。ここの景色も見慣れたもので、東京競馬場に来るのはもう五回目だか六回目だかそれくらいだと思うけど、そういえば毎回湯船さんと一緒だ。
入場口に着きQRコードを見せる。とりあえずビールを買って飲みながら、メインレースまでちまちまと馬券を買ったり買わなかったりしてゆっくり過ごす。

メインレースの予想と馬券購入も早めに済ませ、適当な場所に座って休憩。競馬場では意外と歩くのと予想で頭を使うのとお酒が入るのと太陽に晒されているのとで、数時間でも結構疲れることは経験上わかっていたが、この日はいつも以上に疲弊していた。湯船さんも同じようで明らかに口数が減っていた。
しばらくして湯船さんが「こんなこと言うのもあれだけど、なんか帰りたくなってきちゃった」と言って、「わかる。でもせっかくだから観ていきたい気持ちはあるよね」と返す。なにしろ今日のメインレースは日本ダービーである。
「とりあえずもう一杯飲もうか」となって立ち上がり「疲れやすくなってんね〜〜」と話しながら歩き出す。
パドックの近くで飲みながら、思いがけずなんだか深い話になって、帰ってその会話を思い返して、記憶の穴を埋めるために「あの時こう言ってたよね?」と確認のLINEをしたくらいには大事なことだった。

ダービー出走馬がパドックを出ていくのを見届け、我々もコースの方へ向かう。
第一コーナー付近に陣取ることができた。ダービーはゴール板の前を二回通過する。スタート直後の直線は、ターフを一周してきて今度は最後の直線になるからだ。つまりこの第一コーナーは、スタート直後の馬群とゴール直後の流し始めた馬の様子を観ることができる。
ファンファーレに合わせ七万人が手拍子。何回観てもこの光景は異様である。良い意味で。
全馬レーンに収まりスタート。自分たちの場所からはすぐにはわからなかったのだが、どうやらスタート直後に一頭落馬しているようだ(後で映像を確認したらドュラエレーデの坂井騎手だった)。
空馬を含めた十八頭が第一コーナーに差し掛かる。七十二本の脚がスピードに乗り地を蹴る音はとんでもない迫力。動画撮っといて良かった。

その後勝負は大接戦で決し、ドュラエレーデもどうやら無事のようだし何よりと思っていた時だった。
スキルヴィングの様子がおかしい。まともに歩けていない。骨折…?
そしてルメールが下馬した次の瞬間、暴れ出して内ラチに激突して横たわってしまった。
慌てて駆け寄り頭や首元を撫でるルメール。駆けつける馬運車。外される内ラチ。我々からシャットアウトされるように垂らされる幕。
サイレンススズカのことを思い出す。まさか。まさかな。

その後、スキルヴィングが急性心不全で亡くなったというニュースを目にした。
「全人馬無事」が当たり前のことではないのはわかっているつもりだった。これまでテレビでレースを観ている時も落馬などは目にしたことがある。
ただそんなことが、現地で、文字通りの目の前で起きてしまうと、絶句する他なかった。


5月29日(月)

『ブラッシュアップライフ』を六話から最終話まで一気に観た。
ここから滅茶苦茶ネタバレになるので、これから観ようとしている人たちは読まないことをおすすめします。というか、観てほしいから読まなくていいです。それくらいおもろいということだけは言っておきます。
ちなみにこの感想は、この後週末にかけてもう一周観た上で書いてます。

バカリズムさんらしい言葉を駆使しまくる会話の面白さ、機微を追求していくしつこさと、役者さんたちによる日常感を醸し出す仕草、間、癖、言葉遣いが全編通して最高なのだが、同時に「三十歳前後での人生の選択」が要所に出てくることが個人的に刺さってしまった。
三周目でテレビ局員になった安藤さんに連絡を取る染谷さんと、そのことを後で安藤さんの家で夏帆さんと木南さんの三人で話してる感じとか。市川さんが結婚生活に悩んでる感じとか。

八話で水川さんの一周目が明かされるあたりから、もう最後までずーっとうっすら泣いてる状態で観ていた。
以下、特に最高だったシーンを箇条書きでいきます。
・二周目の成人式後のカラオケ、未来を知っているからこそ染谷さんの歌を聴き続ける安藤さん
・勉強を頑張っていた四周目の小学生時代、二人のシール交換に混ぜてもらうところと五時のチャイム
・四周目の志田さんの結婚式、今までで一番長く生きたから経験できた良いことの一つ
・五周目の小学校の入学式、手をひらひらさせるサイン
・五周目のモンターニャ、思い切って声をかけたおかげで夏帆さんと木南さんとまた四人で話せたこと
・台北の空港で再会して「あーちん」と呼ばれたときの安藤さんと水川さんの表情
・中学のメンバーで朝までカラオケをした後、四人での帰り道に流れる『Hello, again』、からのトンネルに向かう四人のバックショットに重なる最終回のタイトル

それとこのドラマは衣装がどれも素敵で、中でも特に「うわ〜これ好き〜」となったやつを挙げときます。
・モンターニャで夏帆さんが着てるアイボリーのパーカーとオーバーオール(四話)
・二人が突然家に来た時に夏帆さんが寝間着として借りてた鳥がプリントされたスウェット(五話)
・ガストで安藤さんが着てるラルフローレンの赤いドリズラー(九話)

そういえば安藤さん、というか麻美は幼少期から動物がプリントされた服をよく着ていて、「生き物」が一つ重要なポイントになっているドラマだからかと気づいたのは、頭からもう一回観始めた時だった。

観ていると大切な人たちとの記憶が蘇って、そこには希望もあれば苦しさもあるから、というか苦しさの方が多いからクソしんどくなるんだけど、でも今を生きることに目を向けさせてくれたような気がします。


5月30日(火)

あんまり覚えていない。
ダービーの日に湯船さんからnaconのコントローラーを譲り受けたのでそれでApexをやったはず。プロコンのことはちゃんと書きたいが今はその気力がないのでまたいつか。


5月31日(水)

振り込まなければいけない諸々を振り込み、喫茶店に入り少し日記を書き、さてこれからどうしたもんかと、頭に浮かんだ独り言をとりあえずそのままメモ帳に書き出してみたりする。


6月1日(木)

病院で診察を受ける。先生が「自分のペース」と言ったのが印象的で、そのことについて考える。
薬局に行って処方箋を出す。『ブラッシュアップライフ』の影響で、中の様子をチラチラと観察してしまった。
待つ間、女性のお客さんが入ってきて、その人はこの薬局が初めてのようで問診票を記入するよう言われてソファーに座った。記入が終わり受付に提出して「時間かかりますか?」と聞いた。受付の人が「少々お待ちください」と返す。「うわ、出た」と思った。『ブラッシュアップライフ』で観た。
でも今来たばっかで「時間かかりますか?」はさすがに滅茶苦茶すぎないかと思っていると、その女性は「いや、病院に傘忘れちゃったんで取ってきてもいいですか?」と言った。受付の人が「はい、ではお待ちしております」と言い、女性は店を出て行った。
にしても、その要件を伝えるのに第一声が「時間かかりますか?」はどうなんだろう。最初から傘を忘れてしまったこと言えば変にピリッとした空気にならずに済んだ気がする、俺だったらそうする。それか忘れたことを思い出して焦っていて咄嗟にそういう言い方になってしまったのかもしれない。


6月2日(金)

大雨。洗濯物が乾かなくてイライラする。


6月3日(土)

久しぶりにApexの配信をしたら、頭痛がしてきてしまったので一時間ほどで切り上げる。
今週の日記を整えていると「日記でどこまで明かすかのライン」について迷い始めた。
『ブラッシュアップライフ』で感じたことだって、それ用のメモに残っていてここに書いていないことがたくさんあるし、ダービーの日に湯船さんと交わした大事な会話の内容も具体的なことは書いていない。
「恥ずかしさ」が少なからずあることは感じていたが、どうやらそれ以上に「自分の中にしまっておいて、ふとした時に取り出して勇気をもらえる言葉たち」を大切にしたい気持ちがあるようだった。これは良いことに気づけた。
何があったかを思い出してそれを文字にしていく作業、切り取る場面の取捨選択、言葉選び、文体、書きながら「どう書こうかな」と悩む時間。
まだ二週間だけど、おもろいです、日記。


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