【アークナイツキャラクター考察】〜ケルシーを読み解く〜
【注意】この考察はあくまで非公式でネタバレや私見を多く含んでいます。また、著者自身もこういったことをするのに慣れていないので、至らない点があっても優しい目で見ていただけると助かります。
ロドスの創設メンバーであり、年齢,来歴,その多くが謎に包まれ、多くを語らないミステリアスな女性。
全てを知っているかの様な仕草を見せる彼女はまさしくアークナイツそのものの根幹にある秘密の鍵を握る主要人物でしょう。
さらに、ケルシーは多方面に深い知見を有する優れた洞察力を持った医師でもあり、無名の時からロドスのリーダーであるアーミヤを、ひいてはロドスという組織を支え続けている一本の巨大な支柱のような存在でもあります。
今回はそんなケルシーを様々な方面から考察していこうと思います。
しかし、皆さんご存じの通りケルシーは謎が多い人物であり、ぶっちゃけてしまいますと正直よく分かっていない人物です。しかし、よくわからないからこそ考察のし甲斐があり、各個人によってケルシーはどういう人物なのか解釈が変わる人物でもあるでしょう。
この記事がそういった皆さんの考察の一助となれば、と思います。
名前の由来
ケルシーは大陸版では「凯尔希」、グローバル版では「Kal'tsit」と表記されています。
「Kal'tsit」という名前は方解石を意味する「calcite」をロシア語で発音したものから由来していると考えられます。
方解石は炭酸カルシウムで組成される鉱物の一種で、石灰岩の主成分の一つです。
純粋な方解石は透明か白色で、羅針盤が存在しない時代では、この鉱石の引き起こす複屈折(方解石を通して向こう側を見ると二重に見える工学的特徴)を利用して曇天、雨天時でも太陽の位置を調べるという羅針盤の代わりとなる役割を果たしていました。
ケルシーは基本的にドクターやアーミヤに選択を委ね、たとえ彼らのとった選択がケルシーの判断する最善でなかったとしても、彼らの選んだ選択に沿った指針を示すような描写が多くみられます。そういった意味合いでは、彼女はロドスという組織の羅針盤とも言える存在かもしれません。
また、「方解石」は文字の意味を分けていくと「方」は「四角」、「解」は「解き明かす」という意味合いを有しています。
アークナイツは大陸版では「明日方舟」という名称で表記されており、「方舟」は「四角い船」という意味を示しています。この様に解釈していくと、まさしくケルシーはアークナイツという作品を紐解く鍵となる人物と言えるのではないでしょうか?
ケルシーのモチーフ
ケルシーの原型となっているであろう下記リンクのキャラクター「Kal'tsit(カルシ)」には「LA GREAT LYNX」という表記がされています。
「Lynx」は「オオヤマネコ」という種族を意味しています。
オオヤマネコは短い尾に耳の先にふさふさとした特徴的な黒毛に雪上を歩くための厚い肉球のついた脚、顔に長い髭が生えています。
ケルシーの耳の先も若干黒くなっておりオオヤマネコの面影が感じられます。
ギリシャ神話、北欧神話、北米神話ではオオヤマネコは捉え所のない神秘的な生物として描かれ、重要な役割を度々担っています。アメリカのインディアンの文化でもオオヤマネコは「神秘の番人」と考えられていました。
また、オオヤマネコは真実を見抜き、物を透視するという超自然的な能力を持つとも信じられていました。
ケルシーもまるで起こりうる未来を予知するかの様に起こりうる出来事を推測しているシーンが幾度か見られます。
彼女が見ているもの、守り続けている秘密とは一体何なのでしょうか?
また、上に記載されているケルシーの元ネタとなったと思われるキャラクターの名前「Kal'tsit(カルシ)」の下に書かれていた「Great Lynx」という名は、五大湖周辺の北米先住民族の神話に登場する水生生物の呼び名と一致します。
「Great Lynx」は巨大な猫の頭と脚がありますが、体は鱗で覆われており、背中から尾にかけて短剣の様な棘が生えているとされています。
さらに、「Great Lynx」は一部の一族では最も強力な地下世界の存在であると考えられ、また別の一族では古くより全ての水生生物の主人だと考えられていました。
ケルシーのパートナーともいえるMon3trは剣の様な棘がある鉱石の様な鱗に覆われた生物であり、基本的にケルシーの脊髄、つまり背中から尾に当たる位置に潜んでいるとストーリーに記載されています。
さらに、さまざまな描写からMon3trの思考力はケルシーというフェリーンに依存しているとみられます。そう考えると、Mon3trは猫の頭を持つ化け物と言った解釈も取れるのではないでしょうか?
海に関する深い知識や関心、Mon3trという化け物、あまりにも長い寿命、そのすべてが「Great Lynx」という神話の存在に紐付いているのならば、ケルシはエーシェンツではなく、神話に関する存在なのかもしれません。
ケルシーのプロファイルを読み解く
ケルシーのプロファイルにはケルシー自身のことはほとんど書き記されていません。これはケルシーの自身への無頓着さに依るものでしょう。
しかし、代わりに多くのアークナイツの世界に関することが書き記されています。
その複雑な内容の一部(プロファイル第一資料,第二資料)を読み解いていこうと思います。
プロファイル第一資料を読み解く
ケルシーの第一資料ではアークナイツのクルビアの成り立ちに関する史実を語っている誰かの言葉が書き記されています。
クルビアは英語ではColumbiaと表記されています。このColumbiaはアメリカ合衆国の州都の一つであり、アメリカをモチーフとしている国家という事が想起されます。
また、ヴィクトリアはロンディニウムやグラスゴーという都市を有していることより、イギリスをモチーフとしていると考えられます。
これらの情報を踏まえると、この出来事のモチーフとなった出来事はアメリカ独立戦争なのではないでしょうか?
以下はこの独立戦争の元ネタとなったであろうアメリカ独立戦争の内容をあてはめながら、第一資料に記されている内容を独立運動が起きた経緯の推測とともに簡単にまとめたものです。
ガリアとヴィクトリアが戦争状態にあるこのタイミングでクルビアが独立運動を活発化させたので、おそらくヴィクトリアがガリアとの戦争によって生まれた負債を回収するために、クルビアへの課税の強化があったのではないかと考えられます。
そこに、ヴィクトリア辺境領公爵の始めた事業によって安価な物資がクルビア国内に流入しはじめ、それよってクルビア国内の商人は苦境に立たされ、ヴィクトリアに対する反感は独立運動という形となりました。
ガリアはヴィクトリアと戦争状態にあり、ヴィクトリアを弱体化させるためにクルビア独立運動を支援。
ヴィクトリア辺境領公爵は自身の手がけた事業を重んじ、クルビアとヴィクトリア辺境領公爵との戦争が勃発。しかし、公爵はヴィクトリアからの支援を取り付けることができず敗北し、クルビアは独立。
クルビアの独立運動の発端を作り、なおかつクルビアとの戦争に敗北したヴィクトリア辺境領公爵は内外からの批判によって実質的な発言権を喪失するという形でクルビア独立運動は終わりを告げました。
ここで一つ疑問点が生まれます。
この独立戦争はヴィクトリアとクルビアの間での戦いではなく、ヴィクトリア辺境領公爵とクルビアとの戦いとなっています。
植民地の独立、加えてアメリカモチーフというところからクルビアは民主主義社会を標榜している国でしょう。そんな独立運動を専制君主制であるヴィクトリアがそう簡単に見逃すでしょうか?
現状、クルビアの独立を放置した理由として考えられるものは大まかに分けて2つのパターンが考えられます。
一つはガリアからの圧力によってクルビアの独立に目をかけるだけの余力がなかった。もしくは、以降のガリアとの戦争のために力を温存していたかった。
もう一つはクルビアの独立を放置すること、あるいは辺境領公爵の発言権が弱くなることは、ヴィクトリアの方針を決定する者たちにとってクルビアを失うよりも利益があるものだった。
ケルシーのプロファイルにはこう書かれています。
これは言葉を発している当人も、なぜこの判断が下されたか理解していないということです。
つまり、この資料を基に考察している私が知るはずもないということですね。
しかし、私の妄想を付け加えてよいのであれば、長く続くガリアとの戦争で溜まったヴィクトリア国内の不満をそらす矛先として辺境領公爵を贄としたのではないでしょうか?
(後のストーリーで考察できる描写が見られた場合、追記していきます。)
第一資料の余談
ところで、この第一資料に記された言葉を発している人物はカズデルに所属しており、なおかつ昔は国一つを滅ぼすことができたかもしれない人物ということが読み取れます。
この言葉を発していた人物はいったい誰なのでしょうか?
ここで、2つの説を上げさせていただきます。
一つはケルシ-本人、もう一つはテレシスではないかと言う説です。
まずは、ケルシ-本人説です。
作中において、高い戦闘能力を持っているとされるWですらケルシーのことを「人じゃなかったとしても不思議はない。」と評するほどにケルシーの戦闘能力は高いことが推察されます。
さらに、イベント「遺塵の道を」でもストーリー最強キャラクターの候補である皇帝の利刃、その中でも長い経験を経た皇帝の利刃を相手に互角の勝負を演じていました。
それらが余力を残しており、全力を見せていない可能性もケルシーという謎の存在ならば、十分にあり得ます。そして、そうだった場合、全力のケルシーは一国を滅ぼせたのかもしれません。
しかし、ケルシーは皇帝の利刃との戦闘で大きなケガを負っています。余力を残している場合は、今後の活動に支障が出ないように大きなケガなどは避けるはずではないでしょうか?
さらに、いくら皇帝の利刃に匹敵するほどの戦闘能力があったとしても、一国家を滅ぼすことは可能でしょうか?
もし、上記の考察であるようにケルシーが神話の存在、いわゆる神民であるとするならば、それも可能なのかもしれません。あと、あの長い説明口調が現在ケルシーしか当てはまらないというのが…
次にテレシス説です。
このテラの大地には数多の強者がいるため、個人の力で国一つを滅ぼすことは不可能でしょう。
よって、この説では、第一資料に記されている言葉を発した人物は、昔は国一つを滅ぼしうる軍事力を動かすことができた人物と解釈しています。
カズデルにおいてそれだけの軍事力を動かすことができるのは、ロドスの発掘作業の陣頭指揮をとっていたケルシーでは、まずあり得ません。
そうなるとテレジア、もしくはその兄であり将軍であったテレシスであると考えられます。
資料に書かれている言葉を話している人物の口ぶりからすると、テレジアの線は薄くなるでしょう。そうなるとテレシスとなります。さらに、テレジアのことを鑑みるにテレシスの個人としての戦闘能力もとても高いと見ても良いでしょう。
未だ答えは出ていませんが、いったい誰なのでしょうね?
プロファイル第二資料を読み解く
ケルシーの第2資料ではイベリアで起きた大災害について描写されており、その状況について「イベリアは静寂に陥った。」と表現されています。
また、この表現に似たような名がつけられているイベリアの災厄を描いた絵がケオベの茸狩迷宮や統合戦略#2に秘宝として登場します。
さらに、「大いなる静謐」の説明文に書いている内容はケルシーの語る内容と一部が合致しており、そこからケルシーのプロファイル第二資料に描写されているイベリアで起きた大災害は「大いなる静謐」であると考えられます。
イベントなどでも出てきますが未だその全容の把握できない「大いなる静謐」、その内容をケルシーのプロファイルから読み取り、現実で考えられる事象を基として考察していきたいと思います。
まず、この「大いなる静謐」によって少なくともイベリア国内からケルシーにつながる通信のすべてが途絶したという事が起きた。つまり、イベリア国内ほぼ全域を覆うほどの電波障害が発生したことが読み取れます。
さらに、これと同様の事象の痕跡が以前にイベリア近辺の島で確認されており、海ではより以前よりこの大いなる静謐の様な事象の影響を受けていたのではないかということも読み取れます。
また、その島では未確認の生物が確認されており、海というワードと結びつけると、おそらくその生物が現在「海の怪物」と呼ばれている生き物ではないかという事が推察されます。
ケオベの茸狩迷界の際の画像の方がより分かりやすいですが、この絵では紫や藍、緑の配色で描かれており、この配色から大いなる静謐ではオーロラが発生していたのではないかと推察されています。
あくまで現実で起きりうる事象として当てはめた場合、これらの情報から考えられる「大いなる静謐」の原因は強力な太陽フレアなのではないかと考えられます。
・太陽フレアは磁気嵐を伴う場合があり、磁気嵐は通信障害や送電システムなどの故障を引き起こします。
・太陽フレアは同時に太陽風も噴出しており、地磁気と接触、その際に地磁気が歪み発生した電気が大気と反応しオーロラが発生します。
・オゾン層の破壊が進み、紫外線が増加した場合、一般的な藻類の生態系のバランスを崩し、海全体の生物の量の減少につながります。
また、私の想像とはなりますがオゾン層の破壊による紫外線の増加は遺伝子変異を引き起こし、ガンなどを発生させたりするなど生物へと多大な悪影響をもたらしますが、環境に適応した進化を促す可能性もあります。
もしかしたら、その過酷な環境に適応し、進化した生物が海の怪物なのかもしれません。
より詳しくはElさん著の記事
【アークナイツ世界観考察】星芒、極地、秘境と大いなる静謐ーー大洪水の謎を解き明かそう(大陸考察の和訳)
をご覧ください。
イベントより読み解く
ケルシーの行動原理
ケルシーは様々なイベントにおいて、自らの身が傷つくのも関わらず様々な厄介ごとに自ら身を置いています。
・「遺塵の道を」において原理を理解すれば大規模破壊兵器に転用できる源石エネルギーの研究成果の外部流出を防ぐための戦闘。
・「遺塵の道を」において、ヴィクトリアとウルサスの全面戦争を未然に防ぐための皇帝の利刃との戦闘。
・「遺塵の道を」において、ウルサス国内の内紛が大きくなることを抑止するための大公の暗殺の手助け。
・「潮汐の下」において、サルヴィエント事件の事後処理を円滑に進めるために証人として進み出たこと。
"なぜ?"ケルシーはこういった行動をしているのか?
ケルシーの言動やセリフをさかのぼると、そこに答えが垣間見えます。
上記の画像では、ケルシーは海について知るイベリアや、悪魔へ対する防壁の一つである皇帝の利刃の存続を望んでいるような言葉を話しています。
イベリアや皇帝の利刃はともに外敵(ここでは未開拓領域に存在する海の怪物や悪魔と呼ばれるものを意味します。)という脅威を理解しており、同時に外敵に対して何らかの対抗策を講じている貴重な戦力でもあります。
これらの描写より、ケルシーは外敵に対して強い意識を向けており、それに対抗する戦力が減ることを恐れているようにとらえられます。
よって、ケルシーは同じ大きな争いの火種となる出来事を事前に止める、もしくはそれらの出来事の事後処理を円滑に進めることで、外敵と本格的に相対する前にテラの各国が疲弊することを抑えているのではないかと考えられます。
ケルシーの戦い方
ケルシーの戦闘に関しては上記の画像より大まかな状況が分かります。
ケルシーはアーツ技術こそ有していませんが、優れた戦闘技能、高い反応速度、高度な判断能力、それらの優秀な戦士に必要な素質を全て備えています。
しかし、肉体強度が足りず、それらの素質を生かすことができないため、完全にMon3trという化け物に戦闘能力を依存しているといえるでしょう。
さらに、ケルシーは空から俯瞰しているかの様に戦況を把握し、相手の心を見透かす様に敵対者の精神を把握して自らの望む方向に戦況を誘導していく様な描写も見られました。
皆さんもこれと似た事をしている人物に心当たりがあるかもしれませんね。
ケルシーのまとめ
ロドスの中で、誰よりも先を見通すミステリアスな女性。そんなケルシーは古くからテラの大地の秘密を知る者で、その秘密を知るからこそ、自らの傷を厭うことなく各地へと渡り、人知れず戦争につながりうる火種を未然に抑止しています。
それこそ、ケルシーはMon3trという皇帝の利刃すら圧倒するほどの力を有しています。しかし、ケルシー自身の身体能力はそれほど高いわけでもなく、優れた戦士と言うにはほど遠い存在です。
その根底にはより良いテラの大地を願う心があるのかもしれません。
そういえば、より良いテラの大地を願い、この大地に立ち向かう人物にもう一人心当たりがあるかもしれません。
もちろん、皆さんご存知のドクターです。ケルシーとドクターはこういったいうにどことなく共通点がありますが、どこか違います。
ケルシーは自らそれを成そうとします。そこには他の人を巻き込みたくないといったような潜在的な思いがあるのかもしれません。
しかし、ドクターは自らの力がないことを知っているがゆえに、その場その場で最適の人員を配置し、対処します。
このテラの大地を覆すには一人の力はあまりにもちっぽけです。それでも、その願いを他の人を巻き込まず成そうとするのはケルシーが理想家であることの表れなのではないでしょうか?
きっとケルシーはこの大地やロドスの理想のためなら、自身の命すら厭うことはないでしょう。
そんなケルシーがロドスの理想、ひいては幸福に満ち溢れたテラの大地を目にすることができる。いつか、そんな日が来ることを願って。
参考文献
・シキネ様著
【アークナイツ考察】ケルシーとバベルのモチーフ、戦地の逸話"和光同塵"から見えること。
・3度目のサザンドラ様著
【アークナイツ】ストーリー考察/感想-潮汐の下編
El様著
【アークナイツ世界観考察】星芒、極地、秘境と大いなる静謐ーー大洪水の謎を解き明かそう(大陸考察の和訳)
Wikipedia