パンケーキ発作 ~諦めてマックへ~
唐突に、パンケーキが食べたくなった。
Google検索して近くの評判のいいパンケーキ屋へ向かうも、店の前には列が出来ていた。大抵がオシャレな服を着たオシャレな女の子たち。今の私みたいな野暮ったい服を着た人間などきっとダサいの一言で遠巻きにするのだろう。私はパンケーキ屋の前をポーカーフェイスで通り過ぎていく。
さあ何処へ行こうか。WALKMANの電源を切り考える。十字路を経てパンケーキ屋のほぼ対角線上に喫茶店を見かけた。ちらりと店前にあるメニューの書かれたボードに目を通す。ランチメニュー、オススメメニュー、営業時間。本日のランチメニューは野菜たっぷりのハンバーグ。価格は1200円。諦めた。
そうしてパンケーキ屋を頭の隅に置きつつ栄方面へと向かう。見つけられずともマクドナルドで済ませようと思ったからだ。時折、怪訝そうな表情をしてこちらを見つめるカップルや男たちを何も気にしないというふうなていを繕って歩く。
しばらく歩いていくと、見慣れた道に躍り出た。私は迷わずエスカレーターに乗り二階にあるマクドナルドへと向かった。スマホアプリにてクーポンをリサーチする。あまりピンとくるメニューが無かったのでてりやきマックバーガーセットLサイズを選択し、レジ前へ向かった。
エプロンの左胸に若葉マークのついた店員さんは私を見ると少し緊張していたような怖気付いているような雰囲気を醸し出す。真顔だと怖いのだと自覚している。ごめんよ、結構な距離を歩いてきたから笑顔作る余裕が無いんだ。出来るだけ怖くない雰囲気を出すよう間延びした返答をするようにした。
お値段はクーポンを使って620円。店頭価格より数十円ほど安い。まあ、原価と比べるとまだまだお高いのだろうが。会計を済ませ商品を受け取った。
窓側の席がひとつ空いていたので躊躇い無くそこにトレーを置いて座った。真正面にはドン・キホーテとビックエコーが並列して建てられ、大通りには車が行き交う。横を走る車が止まると今度は反対側の車と人が動き出す。2階から見下ろすと人も車もミニチュアサイズだ。手にしているLサイズの紙コップと大型トラックがほぼ同じ大きさだ。地上に出ると比べようがないほど違いがあるのに、場所が違うと同じになるなんて不思議ではある。遠近法をはじめに見つけた人は素晴らしいと思う。
ぼんやりとアスファルト上を見下ろしながらコーヒーに口をつけるとキチンと閉められていなかったのかコーヒーが紙コップを蔦って下へ落ちた。幸いにも備え付きのナプキンで拭き取れる程度の漏れではあった。再びコーヒーに口をつけると同じ箇所から蔦って落ちる。分かった。これはフタか紙コップが不良品だったのだ。諦めて蓋を取って飲むことにした。
パンケーキが食べたい。マクドナルドでお腹が膨れればその欲も収まると思ったが寧ろ甘くてふんわりしたものを食べたい欲がより一層強くなっただけだった。それもプチパンケーキでは駄目なのだ。もっと大きな、ふんわりした、クリームがたっぷりかかった、それでいてイチゴやミントの乗っかったパンケーキが、食べたいのである。