瘴気グルーヴ
先日、僕以外のバンドメンバーの出身大学に行く機会があった。楽器も持っていたので、彼らが在籍していたサークルの部室で勝手に練習をした。
僕は大学でサークルに入っていなかったため、慣れない、溢れ出る部室感に1人でワクワクしていた。
バンドの方針としては、この場所でなんとなく疾走感のある曲を演奏することで青春を味見し、そのまま居酒屋に流れ着く算段だった。
だが、結局僕の凝り性な面が出て、がっつり練習や曲作りをしてしまいヘトヘトに疲れた。メンバーに少し申し訳なく思う。だって、これはいつもやっていることではないか。
理想の夏や、もう戻れない青春のような何か。そういったものに羨望を抱く時、僕は何にも集中していない。
感情的なできごとに乏しいときに思い描く青さ。ほとんど麻薬のような青。
そんな空虚さに身を委ねている暇はない。
あの部屋で、自分のギターの指板を凝視できたことは、ひとつの小さな自信となった。
帰宅ラッシュ時、駅の階段を登るひとりの青年。
自分の意思で足を動かしているはずなのに、エスカレーターに運ばれているように、自動的に進んでいく。
登りながら、ふと、全ての思考や空想が消える。あの虚しさにだけは抗えない。理由も感情もないあの虚しさは死に近い。
青年は考える。死もまた、ひとつの麻薬なのだろうか。
「スキ」を押して頂いた方は僕が考えた適当おみくじを引けます。凶はでません。