ギターの若きビギナー達へ 化石より
このところロックバンドを主題にしたアニメ作品と、その影響でエレクトリックギターを始める若い世代が取り沙汰されることが多いようだ。
今回はそのような、高校生~大学生あたりのビギナー達に向けたアドヴァイスを書き連ねていくことにする。
現在四十代半ばの私など若い彼らからみれば化石のごとき過去の遺物であり、どれだけ真実味をもって聞いてもらえるか分からないが、楽器店勤務の経験を基になるべく役に立つものにしたいと思う。
①身分不相応なギターを選ぶこと
ビギナーが何の予備知識も、周囲の助言も無くギターを選ぶのは本当に難しいことだ。これは私の楽器屋店員時代の経験からも痛切に思う。
迷ったときは少しでも上の、現在の自分には不釣り合いなぐらいの上位グレードのギターを選んでほしい。
持ち主の上達や成長のスピードは本人にも予測がつかないのが普通であり、少しでもハイスペックなギターを持っておくに越したことはない。
また、ビギナーのうちは「ギターに教えてもらう」ほうが色々と楽である。きちんとメインテナンスしたギターをまともな弾き方でプレイすれば良い音がしてくれる、という安心感は心強いものだ。
②チューナーとメトロノームは必ず持っておくこと
小学校でひらがなやカタカナ、漢字を覚える際の、ノートに書かれたマス目を思い出してほしい。あのマス目無しに整った文字を、何の練習も無しにスラスラ書けただろうか?
楽器演奏におけるテンポおよびリズム、そしてピッチ(音程)はマス目の縦線や横線のようなものだ。
さらにいえば他人との合奏における暗黙の、かつ厳然とした取り決めでもある。どれだけ自分のリズム感や音感に自信があっても、チューナーとメトロノームに合わせての練習を習慣づけてほしい。
現在では両方の複合機ともいえる機材も簡単に手に入ることだし、特にチューナーは複数を所有してもいいだろう。
③ギターは分身と思うこと
これはギターのみならず楽器全般に言えることだが、人間にとって辛い環境は楽器にとっても辛いのである。
炎天下や直射日光、湿度の高い環境、極度の乾燥にさらされればギターは深刻なダメージを受けることがある。しかもそのような環境が原因のダメージは専門的な修理作業でしか直せないことがほとんどである。
よく「ギターは毎日弾け」と言われるが、毎日手にするくらい気にかけておけばギターの状態の変化にすぐに気づくことが出来る、という意味も含んでいる。
そのためにはギターを可能なかぎり身近に置くことが望ましい。
自室の椅子の後ろ、ベッドの横、自分が居ないときのソファの上、思い立ったらすぐにパッと手が届く範囲にギターを保管しておくといい。
PCに向かう私の真後ろにあるギターはハーキュリーズ(HERCULES)のロック式スタンド、GS412B PLUSに掛けられている。私の座る椅子の3倍近く高価なスタンドが私のギターの定位置である。
④今弾いているギターが最上の一台である
軽音楽部やサークルには物知り顔でギターを語る先輩も居ることだろう。フェンダー(FENDER)社のストラトキャスター(Stratocaster)の、評価が高い60年代前半のものは数百万の値が付く、とか、そのレプリカでも数十万で売られている、などというハナシを(頼みもしないのに)持ち出してくるかもしれない。
その両方を商品として扱ったことがある者として言わせてもらえれば、どれだけ高値がつこうが持ち主が居なければギターはただのギターである。弾いてもらえなければ音は出ず、ショウケースに収められた一個の商品にすぎない。
ギタリストに応えて音を出しているギターと、その音にこそ価値があるのだ。いま、その腕の中にあるギターとその音が気に入っているのであればそれでいい。
高額なギターや希少とされるギターに目を向けるのは十分な資金が貯まってからでも遅くないし、無理して背伸びする必要は無い。
皆さんのギターライフが、音楽のある日々が充実したものになることを願っている。