入院人間観察記 #38 妻に料理を作ってあげる事ができる
妻に料理を作ってあげる事ができる
新人のスマートフォンの電池がもつのか気になっていた頃、となりの岡田さんの手の炎症がだいぶ良くなったようで先生に包帯をほどいて見てもらっている。
「岡田さん、だいぶ良くなりましたね。もう大丈夫そうです。」
「いやー、本当に良かった。これで帰って妻に料理を作ってあげる事ができる。」
岡田さんは奥さんに料理を作ってあげる事が何よりも楽しみなのか、毎回料理を作れる事を看護師さんや先生に伝えている。
「では岡田さん、今日退院という事でお願いします。」
先生に最後に見てもらい問題ないので岡田さんの退院が決定した。小金沢さんの次は岡田さんだ。二人とも病室の中では元気の良い方たちですぐに退院する感じは最初からあった。
岡田さんは先生が病室から出て行った後すぐに周りの整理をはじめた。そこまで荷物は多くないみたいだ。病院のパジャマから私服に着替えて一つのリュックに物を詰め込む。途中で看護師さんが来て
「岡田さん、退院良かったですね。準備できたらいつでも大丈夫なので最後に声をかけてください。」
「本当にお世話になりました。やっと帰って妻に料理を作ってあげる事ができます。」
岡田さん、また言っている。準備ができたのか最後に帽子をかぶってリュックを背負い岡田さんが病室から出ていった。また一人退院となりベッドが一つ空いた。
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