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under 異界サンタマリア
市立高校2年の女子高生・常世田 真梨亜が『消えた』のは2か月前の話だ。
家族から借り受けた、少女の顔の映った写真は5年前に撮られた物だとか。
長い黒髪。両目を半ば隠す前髪。陰気な仏頂面は美しくも人形めいている。
このガキにゃ悪いが、まぁ……いかにも友達の居なそうな面って感じだな。
写真を見てると、性別や髪の長さは別にして……俺の子供時代を思い出す。
ああ、分かってる。この感情は同族嫌悪だ。だからこそ、引き受けた。
『聞いてください、皆さん。世界は破滅の危機に瀕しています……』
スマホ動画を注視するは、ウサギ顔のマスクを被った性別不明の不審人物。
「VB、それ見るの何度目だ。飽きないか」「ヘッヘヘ……飽きないねぇ」
俺は運転席でハンドルを握り、バックミラーに映る相棒"VB"を一瞥した。
「世紀末思想の伝道者『憂国サンタマリア』の顕現より1か月……か」
長い白髪に眼帯、際どいゴスロリ衣装の少女は、常世田に酷似していた。
裏通りの有料駐車場に車を停めると、ペリク味のアメスピをもみ消した。
「行くか」「ちょ、待ってよたくちゃん」「ちゃん付けで呼ぶなって」
たくちゃんとは俺の名前だ。犬丸 琢美。職業は、『異界』絡みの調査員。
俺が運転席を降りると、VBも古い革鞄を両手に抱えて慌ただしく降車する。
俺たちは並び立ち、コンクリート塀で囲われた白いビルを目指して歩く。
「うわー、でっかぁーい」VBが顔に片手で庇を作り、ビルを見上げた。
「臭うね。臭うよ。異界の臭い」男だか女だかわからない声でVBが言った。
新興宗教の本拠地ビル。厳重な警備を考えると、正面突破は難しいだろう。
俺は白チョークを取り出すと、コンクリート塀に大きな真円を描いた。
「コラ! お前たち、そこで何してる!」警邏中の警官たちが駆け寄る。
「すいません、すぐ終わりますんで」俺は告げ、刺青の左手で塀に触れた。
――ヴ。刺青が輝き、円の中に空間が『開く』。これが俺の力だ。
【続く/800文字】
《おことわり》
この物語は、ライトノベル『under 異界ノスタルジア』の二次創作です。
原作キャラも登場していなければ、異界の描写すらろくにできてませんが。
800字……400字の倍の分量だけど、それでも冒頭部分には全然足りん!
ていうか、このお話はどうでもいいから、原作を読んでちょうだい!
読んだことある人は握手。続編、ずっと待ってるんですがまだですかね?
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