Sweet Heart Teatime
「ハァ……」
「どうしましたぁサコンジさん。溜め息なんかついて。ひょっとして悩み事ですか? 私で良かったらぁ、相談に乗りますよッ」
「顔が近いぞノムラ。いいか私が悩んでいるのは、お前たちがいつも――」
「私悪くないです。ヤマダさんが全部悪い、全てはヤマダさんの責任です」
「……」
「ハァ……おい、ノムラお前な」
「上司とは得てしてそういう存在。部下の失態を一手に被るのが責任者たる上司の務め! つまり私は無罪、イノセント! 私悪くないモーン!」
「……」
「いいかノムラ、その理論で行けばヤマダの失態は、上司の私が被る羽目になるんだよ! それとヤーマダーッ! 黙ってないで、突っ込めーッ!」
「ずびび……フゥ。お茶、美味しいですよ。今日は上手く淹れられました」
「あぁ私、砂糖マシマシでお願いしますね。月餅食べちゃおーっと」
「白茶には砂糖を足すもんじゃありませんよ、ノムラくん」
「うるさいなーもうっ、私はお茶ならなんだって砂糖を足す女なんです!」
「そんな、なんにでも牛乳を注ぐ女みたいなことを」
「オイオイオイオイ、砂糖入れ過ぎだぞノムラ……お前糖尿病になるぞ」
「なりません! 月餅も一個……フムーン、おいちー♡」
「ハァ……その自信はどこから湧いてくるんだ」
「ノムラくん。糖尿病が原因の合併症では、失明や足の壊疽が有名ですよ。撃たれて死ぬより苦しいことにならないよう、糖分は控えめにね」
「ムーッ……私は人生、太く短く生きますよーだ。食べたい物を我慢せず」
「こんな話を知っているか……糖尿病とは、人類が寒冷な太古の欧州大陸に適応するために、敢えて受け入れた体質であると……普通の水は摂氏0度で凍結するが、砂糖を溶かした水は氷点下まで凍結に堪え得るのだとか」
「ゲッ、ゴリラ!」
「あ、課長。お疲れ様です」
「その知的な弁舌で、ご婦人を何人誑かしておいでですか。お茶をどうぞ」
「フン……俺は茶を飲まん。知っているだろう」
「いや、格好つけてるけど、それミカンだし! どっから出したんだ」
「いいかノムラ……これはミカンではなく、ブラッドオレンジだ……」
「うわーそのデカい図体でミカン食べる姿、ゴリラそのものじゃん」
「ハァ……ノムラ、声に出てるぞ」
「課長、美味しいですかぁそのミカン」
「ミカンではなくてブラッドオレンジだ……ノムラ。お前も食べるか」
「ポケットからもう一個……えっいーんですかぁ課長頂きまーす! うーん甘くておいしー!」
――――――――――
【これは何ですか?】
ドキッ! 会話文だけの1,000文字チャレンジ! があると聞いて。
そろそろ『暗中/YAMADA the Killer』で何かやろうと思っていたところで丁度良い企画(?)でした。『殺し屋パルプ』の不破くんと撃ち合わせても面白いかなとも思ったけど、今回は撃ち合いは封印。平和な一時です。
書くごとに作風とキャラがブレブレ、常にマイナーチェンジを繰り返しつつ低速潜行の『暗中/YAMADA the Killer』。slaughtercultの原点です。
流行病の厳しい時節柄、皆様ご自愛くださいませ。それではお目汚し失礼。
From: slaughtercult
THANK YOU FOR YOUR READING!
SEE YOU NEXT TIME!