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遊郭と花魁

昨日の放送で完結を迎えた、再放送のTBSドラマ 「JIN -仁-」

良かったですね。私は最初の放送を見てなかったので、再放送が初見でしたが、3時間分ずつまとめて観る事ができて返って良かったです。大沢たかおさんは以前から良い役者だと思ってましたが、JINを観て、また私の評価は上がりました。
西郷さんの薩摩弁も良かったです。薩摩の年配の人は今でもああいう感じの話し方をしますね。余談ですが、鹿児島銀行の発行しているカードに、「じゃっどカード」「わっぜカード」と言うのがあります。
じゃっど は そうだ、そうです。と意味で、わっぜ は すごく、とても と言う意味です。ですから、訳すとそうだカード、すごいカードとでもなるのでしょうか?

さて、「JIN -仁-」の中で、ストーリー上重要な役の一人として、吉原遊郭の 野風 と言う中谷美紀さん演じる遊女が登場します。幕末と言う大きな時代の変動期が背景で、学生さんは大いに興味をそそられるところですが、野風や吉原が頻繁に登場する事で、「JIN -仁-」は大人向けのドラマと言えるのかも知れません。しかし、吉原や遊女など、一見華やかに見えるけど、実は社会の暗い影の文化であり、現代の人達は、その文化をどれだけ知ってる人がいるでしょうか?
TV時代劇や映画でもちょくちょく登場する吉原、それとそこに住む遊女について少し考えてみたいと思います。

遊郭とは?

まず遊郭とは何か?
遊廓(ゆうかく)は、公許の遊女屋を集め、周囲を塀や堀などで囲った区画のこと。遊郭とも書きます。

一口に遊郭と言っても、種類と格があったと言われています。
関東以外(関西や中部地方)にもあったようですが、今回は関東に限定して書きます。
誰もが一度は聞いた事があると思います吉原(よしわら)。吉原は公許・・・ともあるように、江戸では唯一の幕府公認の遊郭です。別名、郭(くるわ)とも呼ばれていました。
公認があれば、非公認もありまして、それらは郭とは呼ばず、岡場所と言います。時代劇でも名称だけは頻繁に登場します。非公認ですから、時々幕府の取り締まりがあったと言われています。

先ほど唯一吉原だけが公認、と書きましたが、そう言い切れるものでもなく、江戸の出入り口の四宿、日光街道の千住、中山道の板橋、甲州街道の新宿、東海道の品川、この四つの宿場町にのみ許されていた、隠れ郭とでも言いますか、公認とまで行かないまでも、許されていた遊郭がありました。でも、郭とは言わず、飯盛り女とか言う呼び方で、売春以外にも宿の仲居的な役目をする遊女が居たと言われています。でも、吉原に倣(なら)って、こちらも花魁と呼んでいたようです。
吉原は江戸城の真北に位置したところから、北国と呼ばれ、品川だけは四宿の中で唯一南郭と呼ばれるほど、他の三宿に比べて栄華を誇っていました。

さらに、岡場所の下には、現代で言うところのフリーランスの売春婦として、夜鷹 と呼ばれる人達がいます。時代劇で時々登場する、手ぬぐいを姉さん被りし、脇にゴザを抱えて、河原辺りをウロウロしている女性、あの人達です。

一般的には、遊郭の中で働く女性を女郎、遊女と言われますが、普通の女性を卑下した言い方として使用する事もあったそうです。しかし、卑下する事、いわゆる遊郭で性を売り物にするような卑しい女、と言う意味を普通の女性に向けて使う、と言う意味では、やはり、遊郭の中の女性に対して女郎、遊女と使うのが正解かな?と言う気がします。

私の町にもかつて、昭和初期あたりまで遊郭が残っていたそうで、大先輩の家屋調査士の先生から遊郭に出入りしていた話を聞いた事があります。
その遊郭があったせいだと思うのですが、飲み屋などの歓楽街は駅の周辺に栄えるのが普通ですが、私の町の歓楽街は駅からちょっと離れた場所にあります。遊郭の話を聞くまでは、どうしてこんな場所が歓楽街になったのか?と不思議に思っていましたが、かつてそこには遊郭があった事を知り納得したものです。

花魁とは何か?

花魁とは何か?下記はすウィキからの引用ですが、いまいち良くわかりません。(笑)相撲の格付と似たようなものでしょうか?いずれにしても、花魁言葉を使用したり、一限さんでは到底相手をしてくれるものではなく、相当の金を店で使い、店のお墨付きを獲得して初めて花魁と遊べる、普通の遊女とは一線を隔した存在だったようです。現代の祇園も一限さんでは入れないみたいですね。

遊女には位があり、それによって揚代が決まっていた(『吉原細見』に格付け
が記載されている。店にも大見世・中見世・小見世の別がある)。時代による変遷もあり、詳細が不明な点もあるが、おおむね次の通りである。
太夫:高級遊女で吉原でもわずかな人数しかいなかった高尾太夫、揚巻太夫など、伝説的な遊女の名が伝えられている。宝暦年間(18世紀中頃)に吉原の太夫は姿を消した。
格子:太夫に準ずる遊女であるが、やはり宝暦頃に姿を消した。
花魁は宝暦以降の呼称であるため、太夫や格子は花魁ではない
散茶:元々は太夫・格子より下位の遊女であったが、後に太夫・格子がいなくなったため高級遊女を指す言葉になった。
座敷持:普段寝起きする部屋の他に、客を迎える座敷を持っている遊女。禿が付いている。
呼出し:散茶・座敷持のうち、張り店を行わず、禿・新造を従えて茶屋で客を迎える遊女。
本来は「呼出し」を花魁と呼んだと考えられる。これらより下位の遊女は花魁とはいわなかった。
なお、店の筆頭である遊女を「お職」と呼ぶことがあるが、本来は小見世で呼んだ言葉で、大見世・中見世では使わなかったという


古典落語に紺屋高尾 と言う話があります。
庶民の憧れの高尾に一目惚れした若い染め物職人が、寝食を忘れて金を貯め、高尾に会いに行く、純愛の話です。話の中で高尾と遊ぶための金は、安くても十両となっています。現代に換算すると、当時1両=約50,000円ですから、50万円となります。一晩50万円とはすごい高額です。
ちなみに、JINに出ていた花魁、野風の身受け料は2500両=1億2500万円の計算になります。
品川心中では花魁、お染の身受け料は40両となっています。お染は若い頃は人気No1の遊女でしたが、歳をとって人気が衰退し、板頭を張っているとは言え、季節の衣替え(遊郭では衣替えの習慣もあったそうです)する金もありません。まして、イイ歳の女郎を見受けしてくれる旦那衆もいません。また、お染のいる場所は幕府公認の吉原ではなく、隠れ四宿の品川で、いくら栄華を誇っていたとは言え、吉原三千人(遊女の数)と言われる規模の吉原とは比較にならず、見受け料にも大きな開きがあったのでしょう。

花魁道中

華やかに着飾った最上格の花魁が、馴染み客の指名に応じて、揚屋や引手茶屋まで迎えに行くこと。
吉原などの遊郭では、遊女の置屋である妓楼のほかにも、お客に見世の案内をしたり、芸者による接待などの待ち合い場を提供する揚屋や引手茶屋など、それぞれに役割を持った施設が並び、多くの使用人が働いていた。

花魁道中は妹分や下男などが脇を固めてゆっくりと練り歩くパレードのような物ですが、自分がNo1であることを世間に知らしめす事、迎えられる旦那の方も自分がスポンサーである事を世間に知らしめす亊、が目的であるので、当然郭の外で行われます。御付きの人間を従えてゆっくりと歩く花魁の姿は、見るものを楽しませ、憧れの存在であるわけですが、そもそも遊女は、借金の片に囚われ、身を売って返済に充てる、そんな悲しい境遇の女性たちであるわけです。時代劇でも、御家断絶、主は切腹し、奥方は苦界に身を落とした、なんてシーンが出てきますが、本来、遊女の世界は、苦界と呼ばれる苦しくて辛く、みじめな世界であるはずです。しかし、吉原をはじめ、遊郭では金持ちの男衆に来て、遊んで、金を落として貰わないと成立しない世界です。そのためにも、暗いイメージで商売するよりも、明るくきらびやかで、男にとって憧れの世界を作る必要があったのではないでしょうか?いわゆる遊郭の経営戦略のひとつではないでしょうか?

現代でも、花魁道中をイベントのひとつとして、開催している地域があります。フェミニスト系の団体は花魁道中をどう見ているのでしょうか?
従軍慰安婦などと同様に女性蔑視として捉えているのでしょうか?
私は実際に江戸時代、それ以前から存在した日本の文化として、花魁道中に多少の違和感はあるものの、女性蔑視とか差別とかの意識は特にありません。
子供の頃、親父との会話の中で、自分の事を「あちき」と言った事があり、頭みごなしに親父に怒られた事があります。なんで怒られるのか?説明してくれれば良いのですが、そんな言葉を使うな!ちゃんとした言葉を使え!と言われるばかりで、頭の中は???でした。
そのうち、ジョージ秋山先生の連載漫画/浮雲だったかなー?記憶が曖昧ですが、その中で主人公が あちき と使っているのを見て、ホラホラ、使ってるじゃん、と思ってものですが、大人になって、あちきは 花魁言葉だった亊を知り、親父が怒った理由が分かったのでした。と言う事は、親父はおいらん言葉を知ってたわけで、花魁を売春婦として軽視、蔑視していたのかも知れません。ひょっとすると、昭和6年生まれの親父は、自分の町に遊郭があった事も知っていた可能性があります。さすがに行ってはいないと思いますが。
あちき、と言ったりわちきと言ったりしますね。

吉原、遊女、花魁、この辺りを調べると、面白いと言うと語弊があるかも知れませんが、歴史を知る上でとても興味深いものがあります。
吉原炎上陽暉楼五番町夕霧楼花宵道中他吉原を舞台とした映画、曽根崎心中や品川心中、天城越え、女衒(ぜげん)、など遊女が登場する映画、落語、講談などたくさんあります。一見華やかに見える花魁でずか、遊女の世界は辛く、悲しく、愛憎に満ちた、ドラマチックな世界なのでしょう。


※豆知識

JINで、遊郭のおばあさんが言った「おしげりなまし」の意味。

直接的には、性交の事を意味してるようです。しっぽり行こうか?などと同じような意味で、今風に上品に言うならば、ごゆっくりお楽しみください。と言う感じでしょうか。

つるみっこ

これも性交を意味する言葉です。TV版子連れ狼で登場しました。
萬屋錦之介版では、 第一部 第03話「鳥に翼 獣に牙」の中で、石橋蓮司さん扮するはぐれ浪人集団に拝一刀がつるみっこを強要される衝撃シーンがあります。
その後の北大路欣也版ではつるみっこではなくて、土下座に変わっています。時代の変化ですね。デイリーモーションにそのつるみっこのシーンが残っていました。よかったらぜひ、見ておくんなましい~。

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