とやまのプロジェクト|城端、土徳文化の地で紡ぐ
富山のデザイン事務所 スカビ こと sky visual works inc. が手掛けたプロジェクトの紹介ページ
南砺市城端(なんとしじょうはな)で明治創業の機屋さんが立ち上げたブランド「Johanas(ヨハナス)」のアートディレクションに2017年12月から関わっています。最初はパッケージのご相談から始まりました。
[Outline / 仕事の概要]
南砺に広がる縁
Johanas(ヨハナス )は明治10年創業の絹織物業、松井機業が立ち上げたシルクのライフスタイルブランドです。
富山県の南砺市五箇山地域は、その昔、耕作についで養蚕が主産業で、隣の城端では江戸時代には住人の半数以上が、絹織物業に関わっていたそうです。そして現在、玉糸を使った「しけ絹」を製織しているのは、松井機業のみとなり、城端絹の製織も一軒を残すのみとなってしまいました。
当時、Taromaプロジェクトが動き始め、抽出体験会で六代目を継承する松井紀子さんからお声をかけていただき、ショールームと工場を見学させていただくことになりました。
最初は城端(じょうはな)とは読めず、もちろん歴史についてもほとんど何も知らない状態でした。工場には初めて見る機織機や、糸を括る機械など、寂れたとは違う、時代が止まったような不思議な空間で、時を経て現役でリズムを刻む心地よい工場でした。
松井さんの人脈とバイタリティでヨハナスは、既にロゴや冊子、パッケージなどブランドとしての設えは整っていました。今まで活動してきたコミュニケーション手法や、デザインの話しを聞くことから、初回のミーティングが始まりました。
[デザインについて]
仕事によってスタッフを変えない
既に展開していたロゴが松井機業の○に井マークをベースにしていることで、取り扱い商品が生地(松井機業)か、雑貨(ヨハナス)なのか伝わり方が曖昧になり、ブランドが独立して見えないことを問題視し、事業内容の棲み分けをしっかり整えるリブランドの方針を固めました。
何よりも、販促物によって関わるデザイナー、スタッフが変わり、それぞれの想いでアウトプットされていたことは、一つ一つのクオリティは高い一方、ブランドを外に伝えるチカラが分散化する大きな問題と感じました。
ロゴ・マーク
インタビューを重ねる中、シルク市場は海外でも展開できることを共通認識として持ちました。英語にカナをフリガナのような扱いにすることで、日本発グローバルな認知に繋げたいと考えています。
文字のノイズは、しけ絹を通して落ちる陽の光を表現しています。
また、マークは繭のカタチをベースに、地元に昔ばなしとしても残っている水芭蕉をモチーフに入れています。
ヨハナス らしさ
松井さんの自然や生物に対する想いは強く、少なからず、環境に対する意識を仕事にも反映させたいと思い活動してきた中で、自分たちが今、できる限りのことを試行錯誤して、商品の入れ替えのタイミングで脱プラパッケージへの切り替えを進めています。
寄り添う
松井さん夫妻と一緒に、松井機業と城端の歴史を勉強し、その昔印鑑の制作をしていた印鑑屋さんを金沢まで訪ねたり、パッケージのアイデアを広げるために五箇山の和紙工房に行くなど、時間はかかりましたが、地域に触れ合いながらも、伝えるべき先のことを考えて丁寧に落とし込みながら進めています。
これから
ここまで、ブランドの考え方に芯を通す見え方と伝わり方の支援をしながらベースを整えてきました。この先、フェーズ2としてカタチを整える作業と同時進行で、小売や卸しなど仕組みも絡め、出口を見据えた商品作りに着手し始めました。絹本来のあるべき姿を、時代に合わせたスタイルで提案していきます。ブランドのあり方についても、議論を重ねている中、無農薬の桑を育て、国産オーガニックの養蚕へのチャレンジをしています。歴史ある産業が、時代に合わせて進化していく場面に関わり続けます。
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